文献情報
文献番号
201231077A
報告書区分
総括
研究課題名
好酸球性膿疱性毛包炎の病態解明と新病型分類の提言
課題番号
H23-難治-一般-098
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
宮地 良樹(京都大学 医学研究科皮膚科学)
研究分担者(所属機関)
- 戸倉 新樹(浜松医科大学 皮膚科学)
- 野村 尚史(京都大学医学研究科 皮膚科学)
- 谷岡 未樹(京都大学医学研究科 皮膚科学)
- 鬼頭 昭彦(京都大学医学研究科 皮膚科学)
- 藤澤 章弘(京都大学医学研究科 皮膚科学)
- 遠藤 雄一郎(京都大学医学研究科 皮膚科学)
- 谷崎 英昭(京都大学医学研究科 皮膚科学)
- 山本 洋介(京都大学医学研究科 医療疫学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、好酸球性膿疱性毛包炎(EPF)の病態解明、病型分類の再検討、診断・治療アルゴリズムの作成を目的とする。EPFは原因不明の炎症性疾患であり、そう痒を伴う毛包一致性好酸球性膿疱が主に顔面に出現する。非ステロイド系抗炎症薬の内服が著効するが、難治性ざ瘡やアトピー性皮膚炎と誤診され、不適切な治療を受け続ける患者が存在する。EPFにおけるこれらの問題は、認知度が低いこと、病態が不明であること、明解な診断治療指針がないことが原因である。本研究ではこれらの問題を解決するため(1)全国規模疫学調査、(2)病態解明、(3)新病型分類と診断・治療アルゴリズムの作成、の三項目を具体的目標に設定してきた。
研究方法
(1)疫学調査:国内外の文献の網羅的調査、全国皮膚科専門医研修認定施設(97施設)におけるEPF発症頻度調査で得たデータを、ウェブ上で公開する方法を検討した。(2)病態解明:シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害薬であるインドメタシンが有効である事に着目し、COX下流のプロスタグランジン(PG)に焦点をあてた。培養細胞を用いて、PGと好酸球遊走の関係を解析した。 (3) 新病型分類と診断・治療アルゴリズムの作成:従来の病型分類の問題点を検討し、新たな分類を作成した。また診断・治療ステップを流れ図で表現したアルゴリズムを作成した。
結果と考察
<研究結果>(1)疫学調査結果:大学病院医療情報ネットワーク研究センターに公開可能な様式にデータをまとめた。(2)病因・病態の解明:PGJ2が転写因子PPARγに作用し、脂肪細胞の好酸球遊走因子CCL26の産生を誘導することを明らかにした。(3)病型再分類と診断・治療アルゴリズム:(a)新病型分類の作成:EPFはこれまで、古典型、HIV関連、小児型に分類されてきた。しかしこの分類には問題が二つ存在する。第一に小児型の疾患独立性に疑問が呈されていること。第二に分類には当てはまらないEPF様疾患が存在することである。そこでEPFの病態と治療方針が直結させる新病型分類を作成した。(b)診断・治療アルゴリズム:必要な検査、鑑別診断、標準的治療法を流れ図で示し、専門外の医師・研究者にも理解しやすくした。<考察>(1)EPFの実態は、臨床的に非常に重要な情報である。成果の一般公開により、EPF認知度向上が期待される。(2)病態解明研究においては、PPARγ経路の重要性を明らかにした。この成果は新たな創薬ターゲットでもある。(3)また本研究では新病型分類を作成し、さらに診断・治療アルゴリズムを作成した。これらは正確かつ迅速な診断の助けとなり、社会的意義が大きい。
結論
本研究は、日常診療で見落とされがちなEPFの認知度向上、病態解明、診断治療アルゴリズムの作成を目標とした。成果の一部は、国内外医学雑誌に発表した。同成果はインターネット上での公開も準備中である。本成果の波及は医療界だけにとどまらない。たとえばPPARγをターゲットとした新薬開発の動機づけにもなりえ、ひいては経済的な効果も期待される。EPFは難病の多い好酸球疾患の一つのモデルでもあり、本成果はunmet medical needsの解決につながると期待する。新病型分類では非典型的な臨床像を示すタイプを特殊型として包括した。その結果、今後、従来のEPF分類にあてはまらない症例もEPFとして正しく診断されると期待する。診断・治療アルゴリズムは、必要な検査、鑑別診断、標準的治療法を簡明な流れ図で示した。本アルゴリズムはEPFの適切な診断・治療に寄与し、医療費の削減と国民健康の増進へ貢献するものと期待する。
公開日・更新日
公開日
2013-05-22
更新日
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