稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究

文献情報

文献番号
201231044A
報告書区分
総括
研究課題名
稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究
課題番号
H23-難治-一般-028
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
岩月 啓氏(国立大学法人岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 天谷 雅行(慶應義塾大学 医学部皮膚科)
  • 橋本 隆(久留米大学 医学部皮膚科)
  • 青山 裕美(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科皮膚科学分野)
  • 照井 正(日本大学 医学部皮膚科学系皮膚科学分野)
  • 許 南浩(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科細胞生物学分野)
  • 小宮根 真弓(自治医科大学 皮膚科)
  • 清水 宏(北海道大学 大学院医学研究科皮膚科学分野)
  • 金田 安史(大阪大学 大学院医学系研究科遺伝子治療学)
  • 小島 勢二(名古屋大学 大学院医学系研究科小児科学)
  • 池田 志斈(順天堂大学 大学院医学研究科皮膚科学・アレルギー学)
  • 山本 明美(旭川医科大学 皮膚科)
  • 黒沢 美智子(順天堂大学 医学部衛生学)
  • 武藤 正彦(山口大学 大学院医学系研究科皮膚科学分野)
  • 玉井 克人(大阪大学 大学院医学系研究科再生誘導医学寄附講座)
  • 白方 裕司(愛媛大学 医学部附属病院先端医療創生センター)
  • 秋山 真志(名古屋大学 大学院医学系研究科皮膚病態学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
54,689,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、天疱瘡、表皮水疱症、膿疱性乾癬と魚鱗癬様紅皮症の4疾患群の病因・病態研究、臨床統計調査、生体試料収集と、臨床試験の実施および解析に取り組む。皮膚科と異分野が共同で研究を遂行し、班員を中心に難病医療の診療拠点として情報発信と啓発を実施する。
研究方法
1)臨床疫学統計と臨床調査個人票改訂、2)遺伝・病因的調査、3)病態解明、4)診断・治療法開発、5)ガイドライン改訂、6)情報公開・啓発、7)診療費用実態調査を実施し、8)生体試料収集の管理・運用を目指して横断的な共同事業組織を検討した。患者試料、動物を用いた研究、臨床統計調査、治療に関する臨床研究については、すべて各施設の倫理委員会承認を得て、指針に従って倫理面への配慮のもと施行した。
結果と考察
1)臨床調査個人票を用いた疫学統計を継続、臨床調査個人票を改訂。全国医療拠点にて前向き調査を行う基盤としての症例登録システムの構築に着手。
2)ゲノムワイド遺伝的相関解析(GWAS):天疱瘡患者DNA試料の管理・運用体制を整備した。膿疱性乾癬の病態に関わるIL36RN遺伝子変異例を見出し、今後の新規治療への手がかりを得た。同時に、膿疱性乾癬の疾患および薬剤感受性候補遺伝子解析に着手した。表皮水疱症と魚鱗癬様紅皮症で遺伝型/表現型を解析し、複数の新規変異を同定した。得られた情報から病態研究が進行中である。当研究班は、国内外のゲノム・血清診断の診療拠点としての役目を果たしている。稀少疾患のより正確で迅速な診断の地域差を解消するように研究活動を継続している。
3)天疱瘡:ファージライブラリを用い自己抗体産生機序を解析した。特異的T細胞クローンを用いて、免疫寛容機構の一端を明らかにした。プロテオーム解析を用いて天疱瘡抗体による表皮細胞内シグナル伝達機構を解析中である。膿疱性乾癬:S100A8/A9と新規受容体に関連した病態関連分子制御機構を解析した。新たな炎症メディエーター(IL-17,IL-33)解析した。表皮水疱症:動物モデルによる遺伝子導入・骨髄幹細胞移植の基礎研究を推進している。魚鱗癬様紅皮症:変異K1ケラチン変異表皮細胞での病態解析。オートファジーに関連した角層バリア機能異常の病態解析。
4)天疱瘡:診断法の改良と開発。診断拠点活動継続。抗CD20抗体の自主臨床試験を実施。膿疱性乾癬:新規臨床検査マーカーの有用性報告。顆粒球吸着療法(GCAP)の多施設共同試験結果とTNFα阻害薬療法の有効性・安全性の検証を行い、適正・安全使用指針を取り纏めている。先天性表皮水疱症:真皮成分に血管を含む新たな自家培養皮膚の開発に成功と臨床応用を推進。骨髄幹細胞療法のプロトコールを検討し副反応の基礎的なデータを収集し治療の安全性について検討を加えた。骨髄間葉系幹細胞治療の倫理委委員会承認を受けコールド・ランを実施中(変更箇所の再度承認待ち)、臨床試験へ向けて進行中である。魚鱗癬様紅皮症:低侵襲性診断法、簡便な遺伝子検体調整法開発。iPS細胞作成し、将来の遺伝子治療や移植治療に繋げる。
5)新規治療を含めたガイドライン改訂と英訳化を進めている。
6)患者の視点を重要視した医療情報共有と啓発活動を展開している。全国各地での患者・家族支援講演会相談会の開催。医療者向け講演会開催。医療者、患者家族向けパンフレットを全国配付、ウェブサイトで情報の公開と配信を行い好評である。
7)拠点化された医療機関を通じて、在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料や特定保険医療材料などの医療費実態調査を進めている。施設による格差を解消するために、情報提供を行っている。
8)神経皮膚症候群に関する調査研究班(大塚班)と医薬基盤研究所と共同で、生体試料収集に関する倫理承認と知財所有権の解決策を提案した。 班員による症例登録と、生体試料の管理・運用体制(遺伝子リファレンスライブラリーを含む)の倫理委員会承認を始めた。
結論
稀少難治性皮膚疾患(4疾患群)について、申請研究課題に沿って研究を実施し、疾患発生モデルや幹細胞・遺伝子治療など、最先端の研究成果が生まれた。表皮水疱症においては、本研究班の学術的成果から、班員による探索的臨床試験が組まれた。その他、天疱瘡における抗CD20抗体療法や、膿疱性乾癬に対する顆粒球除去療法(GCAP)など、着実に治療への道が開かれてきた。しかし、根治的治療についてはなお未解決の問題は多い。病態解明と新規治療開発のシーズを見いだすとともに、その基盤となる生体試料を管理・運用する体制を構築し、予防因子、予後悪化要因、合併症出現予測因子の解明に取り組み、移植・細胞治療を臨床研究として推進するために、研究を継続する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231044Z