聴覚障害災害時要援護者支援情報システム開発研究

文献情報

文献番号
201224044A
報告書区分
総括
研究課題名
聴覚障害災害時要援護者支援情報システム開発研究
課題番号
H24-感覚-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
矢部 多加夫(国立病院機構東京医療センター臨床研究センター 人工臓器・機器開発研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 角田晃一(国立病院機構東京医療センター臨床研究センター 人工臓器・機器開発研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
9,796,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
災害時に各種の身体的障害、コミュニケーション障害により十分な被災情報、物的支援が得られず、生命、身体及び財産に損害を被る可能性が高い、災害時要援護者(Children、Handicapped、Elderly people、Chronically ill、Tourists、CHECT)の中で、聴覚障害災害時要援護者を対象にした支援情報機器開発研究を行う。
鳥取西部地震、阪神淡路大震災の事例について調査の結果、聴覚障者にとって視覚情報が決定的に重要で、特に必要な情報は被災時の避難情報と避難所での生活情報であった。これらの知見に基づき、携帯端末機器を利用した電光表示装置による聴覚障害災害時要援護者支援情報機器を開発、長期実証実験を実施する。
研究方法
支援情報機器システムは、アンドロイド端末、WiFiメール機能、グーグルクラウド、フラッシュライト付き視覚情報表示ディスプレイから構成される。従来のコンピューター利用は、ユーザーが装置と各種ソフトを自身で保有管理していたのに対し、クラウドコンピューティングでは最低限の接続環境のみを用意しインターネット上で各種ソフトを利用して作業を進める。アンドロイド端末は支援学校教諭、難聴支援団体が保持し非常時、あるいは平常時の通信時に送信する。
実証試験・アンケート評価は、宮城県立聴覚支援学校で実施する。システムはアンドロイド携帯端末10台、中型視覚情報表示ディスプレイ5台から構成される。アンドロイド携帯端末からの情報はクラウドネットワークを介して校内各所、教室などに設置されたフラッシュライト付き視覚情報表示ディスプレイに表示され、聴覚障害を有する生徒に視覚情報として伝える。災害訓練、学園祭模擬表示、体育会、不審者侵入時訓練、火災予防訓練など各種イベント時にアンケート調査を施行した。アンケート内容は、1) LED表機器について、2) 表示文字の色、3) 表示文字の速度、4) 表示文字の出し方の4項目である。
結果と考察
対象は計109名、聴覚障害者75名、対照健聴者34名であった。結果は、1) 女性51名、男性58名、一般来校者54名、小学部11名、中学部19名、高等部・専攻科25名、補聴器利用有り75名、なし75名、LED表示認知96名 (88%)、表示内容理解 (86%)、LED表示器利便性(92%)。2) 色の読みやすい条件:15m赤>10m赤>10m緑>15m緑。3) 読みやすい文字速度は15m緑・高速が、4) 読みやすい文字の出し方は15m緑・スクロール有が高評価であった。全体の結果としては、スクロールは有った方が良く、文字速度は高速の方が読みやすいが、文字色による差はなかった。聴覚障害者群では条件による差はなかったが、全体、聴覚障害者群ともに最も読みやすい条件は15m緑・高速であった。
LED表示認知 (88%)、内容理解 (86%)、利便性評価 (92%)といずれも高値で、支援情報機器新システムに対する評価は高かった。LED表示条件としては今回の検討からは15m緑・高速スクロールの条件が高い視認性を示した。
結論
以上の結果より難聴者・健聴者双方から本支援情報システムの評価は高く、また表示様式の視認性にも一定の傾向が見られた。結果を基に情報通信のハード面の機能強化、ソフト面での視認性改善が必要であると考えられた。本システムは、アンドロイド端末のメール機能を使用してクラウド連携、アドホックネットワークを構築し表示器に表示するもので、大規模な取り付け作業無しで手軽に即時に多くの人々に情報発信できる点が独創的で国際的にも類を見ないものである。アンケート評価、ヒアリング結果をハードとソフト面にフィードバックし、さらにシステム全体の総合評価を行い、機器とシステムの向上・完成を目指す。

公開日・更新日

公開日
2013-06-04
更新日
-

収支報告書

文献番号
201224044Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,716,000円
(2)補助金確定額
12,716,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 963,072円
人件費・謝金 715,200円
旅費 693,840円
その他 7,423,888円
間接経費 2,920,000円
合計 12,716,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
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