脳卒中高リスク群の診断及び治療による循環器疾患制圧に関する研究

文献情報

文献番号
201222055A
報告書区分
総括
研究課題名
脳卒中高リスク群の診断及び治療による循環器疾患制圧に関する研究
課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-011
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
峰松 一夫(独立行政法人国立循環器病研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 飯原 弘二(独立行政法人国立循環器病研究センター 脳神経外科)
  • 上原 敏志(独立行政法人国立循環器病研究センター 脳血管内科)
  • 小久保 喜弘(独立行政法人国立循環器病研究センター 予防健診部)
  • 坂井 信幸(神戸市立医療センター中央市民病院 脳血管外科)
  • 豊田 一則(独立行政法人国立循環器病研究センター 脳血管内科)
  • 長束 一行(独立行政法人国立循環器病研究センター 脳神経内科)
  • 山田 和雄(名古屋市立大学大学院 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では,適切な治療介入が行われなければ高率に脳卒中やその他の循環器疾患を発生しうる無症候性頸動脈狭窄,一過性脳虚血発作(TIA),心房細動(AF)などの脳卒中高リスク疾患群の我が国における診療実態とその問題点を明らかにし,その解決策を提言する.これにより,本疾患群対策の重要性を一般市民へ効果的に啓発し,非専門医レベルで効率的にスクリーニングし,さらに専門医で迅速かつ合理的に診断,治療を実施するためのシステム構築を行う.
研究方法
(研究 1) 都市部一般住民を対象とするサブクリニカルデータに基づく脳卒中予防に関する研究: 頸動脈エコー検査における頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)が死亡の予測因子になりうるかどうかを検討する.都市部コホート研究である吹田研究対象者のうち,脳卒中,虚血性心疾患の既往がなく、かつ頸動脈エコー検査を実施した5,605名を平均11.7年追跡した.
(研究 2) TIA例の脳心血管イベント発症に関する前向き登録研究: 一過性脳虚血発作(TIA)例における短期的および長期的な脳心血管イベントの発症率とその予測因子を明らかにするために,発症7日以内のTIA例を対象とした多施設共同前向き登録研究を実施中であり,2013年12月31日まで症例登録を継続する予定である.
(研究 3) AF患者の虚血性脳血管障害発症と予防治療に関する研究: TIA前向き登録研究のサブ研究として,AFを合併する患者群の特徴を調べた.
(研究 4) 脳卒中高リスク群に対する外科治療に関する研究: 国立循環器病研究センターにおいて外科的治療を行った無症候性内頸動脈狭窄(aICS)のMRIを用い,狭窄病変の形態的特徴やSPECTでの脳血流評価との関連を検討した.
(研究 5) 無症候性頸動脈狭窄の自然経過と予防治療に関する研究: 無症候性頸動脈狭窄の治療に関するわが国の現状を知るため,39施設の共同参加による全例登録前向き観察研究を行った.
(研究 6) 脳血管内治療の役割と安全性に関する研究: 脳血管内治療専門医が関与した脳卒中発症高リスク群に対する脳血管内治療を悉皆的に登録し,これらに対する脳血管内治療の環境や体制,疾患および治療別の治療内容の詳細を登録することにより,治療の安全性に関与する因子を明らかにする.
結果と考察
(研究 1): 65,897人年追跡した間に829名が死亡した.IMT値の進展が全死亡,循環器死亡のリスクであった.頸動脈エコー検査指標の中では,「最大IMT値」が最も,全死亡,循環器病死亡の予測因子になりうることがわかった.
(研究 2): 3ヵ月目の追跡調査が終了した521例について中間解析を行った.TIA後90日以内の脳梗塞発症率は6.9%で,その約半数は2日以内の発症であった.90日以内の脳梗塞発症例は非発症例に比して高齢で,来院時の血圧が高く,TIA症候として言語障害を呈する頻度が高いことが示された.
(研究 3): AF合併患者は128例で全体の17%を占め,非合併患者と比べて高齢で,脂質異常症保有率や喫煙率,TIAの既往が少なく,拡散強調画像での異常所見検出率が高かった.AF合併患者の96%に,再発予防薬として抗凝固薬が用いられていた.7日以内,および90日以内の脳梗塞発症率は,AF合併群と非合併群とで差を認めなかった.
(研究 4): aICSにおける病側白質のsilent ischemic lesionの存在は,脳血管反応性の低下と関連しており,外科的治療の適応を判断する基準となりうる可能性が示された.
(研究 5): 中間解析段階であるが,観察群11%,内科的治療群66%,外科治療群23%に分かれた.危険因子は高血圧(81%),脂質異常(65%),糖尿病(40%),狭心症(23%)などであった.登録後の全脳卒中+死亡の頻度は2.4+α%/年であり,同側TIAも入れると2.8+α%/年となる.
(研究 6): 31,968件の脳血管内治療のうち,40.8%が脳動脈瘤塞栓術,24.5%が頸動脈ステント留置術,7.0%が硬膜動静脈瘻塞栓術であった.治療1カ月後の転帰(modified Rankin Scale score)は,0=61.0%・1=13.6%・2=7.7%・3=5.3%・4=4.7%・5=3.0%・6=3.2%であった.治療に関連する死亡(mortality)1.0%,障害(morbidity)1.19%であった.
結論
無症候性頸動脈狭窄,TIA,AFなどの脳卒中高リスク群の診断及び治療を主題とした6つの研究を企画,遂行した.これらの全体像を体系化して提示することによって,包括的な脳卒中水際予防・治療対策を提案するために,次年度へ向けて研究を着実に進めてゆきたい.

公開日・更新日

公開日
2013-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201222055Z