東日本大震災被災地の小児保健に関する調査研究

文献情報

文献番号
201219023A
報告書区分
総括
研究課題名
東日本大震災被災地の小児保健に関する調査研究
課題番号
H24-次世代-指定(復興)-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
呉 繁夫(東北大学大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 千田 勝一(岩手医科大学 医学部)
  • 細矢 光亮(福島県立医科大学 医学部)
  • 山縣 然太朗(山梨大学大学院 医学工学総合研究部)
  • 栗山 進一(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 奥山 眞紀子(国立成育医療研究センター こころの診療部)
  • 増子 博文(福島県立医科大学 医学部)
  • 本間 博彰(宮城県こども総合センター)
  • 八木 淳子(岩手医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
110,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成 23 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災は、近代日本が経験したことがない激甚災害であった。今後のわが国の災害時小児保健医療を考えるためには、小児科医療機関の被災と復旧の状況と、被災地における子ども達の健康状態を身体とこころの両面から、時間軸を設けて詳細に調査・分析する必要がある。本研究は、被災地のこどもの発育・成長を当該市町村の乳幼児検査票などを基に調査・分析する。また、小児科医療機関の復旧状況を時間軸が加わったアンケート調査により把握する。更に、児童精神医学の専門家チームが被災地の子どもたちのこころの状態を調査する。
研究方法
平成 22 年度、23 年度、24 年度の出生時、乳児健診、1歳6カ月健診、3歳児健診受診者の身長、体重等の身体データ、生年月を調査する。保育園、幼稚園の身体測定のデータの解析協力可能な保育園、幼稚園に通園する園児の平成22 年度、23 年度、24 年度の身体計測データ(調査票もしくは入力データ)を調査する。被災 3 県に存在する小児医療施設に対して、震災前および震災後の各時期での診療機能の復旧程度などについての質問紙調査を行う。こころの状態の調査では、岩手県、宮城県・福島県の協力の得られた保育園において 2011 年 3 月 11 日時点で 3・4・5 歳児クラスに在籍していた子どもとその親(保護者)を対象とした。対照群は、三重県の協力の得られた保育園において、同じく同学齢に在籍していた子どもとその親(保護者)とした。曝露因子は東日本大震災での被災体験とし、面接で子どもと親から聞き取りと質問紙調査を行なった。
結果と考察
 乳幼児健診調査として、自治体の協力を得て、平成24 年度から 26 年度までの 3 年間をかけて、震災前後で実施された被災 3 県の乳幼児健康診査の結果から、出生時、乳児期、1 歳 6 カ月時、および 3 歳(6 カ月)時の身長、体重等の身体発育の指標のデータを収集している。平成 24 年度は、震災前に 3 歳(6 ヵ月)時健診を受けた平成 19年 3~8月生まれのお子さんのデータ(宮城県では計 1,943 人、岩手県では 3,794 人、福島県では 5,865 人)の収集を行った。引き続き震災前後の乳幼児の発育状況に関するデータ(平成 21 年3 月~8 月生まれ、平成 22 年 6 月~平成 23 年 8 月生まれ)を収集し、最終年である平成 26 年度に、震災の有無での横断的な解析、震災前後の縦断的な解析を行う。保育所における調査として、全国 3,624 園より、子どもの身長、体重等の身体発育のデータを得た。内訳は、平成 16 年度生まれの子ども 53,748 人、平成 18 年度生まれの子ども69,004 人であった。被災 3 県の小児科医療機関を対象にアンケート調査を行ったところ、468 件(43.3%)から回答を得た。人的被害と建物被害を県別にみると、岩手県は沿岸部の津波被害、福島県は内陸部の建物倒壊による被害が中心で、宮城県はその両方であった。震災直後は、外来診療・入院診療ともに半数以上で受入制限または受入不可であった。入院診療、救急対応、乳幼児健診は 3 月下旬に復旧、外来診療、予防接種外来、慢性特殊外来は 4 月上旬に復旧した。災害時対策の患者指導の必要性が強調された。こころの調査では、被災群全体では、9カ所の保育所(岩手 3、宮城 2、福島 4)で約 250 人に参加を呼びかけ、102 人の親(岩手 59、宮城 34、福島 19)、125 人の子ども(岩手 77、宮城 43、福島 21)が参加した。対照群では、約 250人に参加を呼びかけ、71 人の親(保護者)、82 人の子どもの調査を実施した。
結論
平成24 年度の調査として、「乳幼児健診調査」および、「保育所における調査」を実施し、概ね予定どおりのスケジュールでデータ収集が完了した。「乳幼児健診調査」においては、引き続き計画通り、平成 25 年および平成 26 年もデータ収集を行い最終年に解析を行う予定である。また、「保育所における調査」は予定どおり平成 24 年度内にデータ収集が完了した。今後、平成25 年度に解析を実施する予定である。「震災時の小児保健医療に関する調査研究」によると、建物被害は地震による建物倒壊よりも津波被害によるものが多かった。診療は、震災直後には半数以上が何らかの制限を受け、復旧は 3 月下旬から 4 月上旬であった。「東日本大震災が子どものメンタルヘルスに与える長期的影響に関する研究」では、激甚災害を経験した親子のメンタルヘルスをフォローするコホート研究のリクルートができ、暴露の聞き取りを行い、初期段階を達成することができた。

公開日・更新日

公開日
2013-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201219023Z