文献情報
文献番号
201217001A
報告書区分
総括
研究課題名
膝痛・腰痛・骨折に関する高齢者介護予防のための地域代表性を有する大規模住民コホート追跡研究
課題番号
H20-長寿-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
吉村 典子(東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター 関節疾患総合研究講座)
研究分担者(所属機関)
- 中村 耕三(国立障害者リハビリテーションセンター 自立支援局 )
- 阿久根 徹(東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター 臨床運動器医学講座 )
- 藤原 佐枝子(広島原爆障害対策協議会)
- 清水 容子(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター)
- 吉田 英世(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター)
- 大森 豪(新潟大学超越研究機構)
- 須藤 啓広(三重大学医学部 整形外科学)
- 西脇 祐司(東邦大学医学部 衛生学)
- 吉田 宗人(和歌山県立医科大学医学部 整形外科学 )
- 下方 浩史(国立長寿医療研究センター 予防開発部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
44,316,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
地域代表性を持つ一般住民を対象とした運動器疾患住民コホートを構築し共通の尺度を使って追跡調査を行うことにより、運動器障害とその主要原因疾患に関する日本人の疫学指標と、危険因子を解明すること、さらにこれら運動器疾患が要介護移行や生活機能低下に及ぼす影響を明らかにすることにより、介護予防対策の推進により健康寿命を延伸し、膝痛・腰痛・骨折などの運動器障害による要介護高齢者を低減させることを目的とする。
研究方法
平成20-21年の2年間で地域代表性を持つ全国8地域からなる世界最大規模の統合コホート(12,019人)とその結果の検証コホート(2,500人)を構築した。平成22年度からは統合コホートで、要介護度調査を含む統一尺度を導入した第1回追跡調査を開始した。その結果、統合コホートベースライン調査参加者12,019人のうち、平成24年末で10,084人(83.9%、男性3,312人、女性6,772人) を追跡し得た。追跡調査データベースから、要介護移行率を推定し、それらに影響を及ぼす要因を検討した。
結果と考察
まず統合コホートベースライン調査の結果を詳細に解析し、医師による問診で、過去1ヶ月以内に一日以上続く膝痛をもつと答えたものまたは医師の診察で膝痛をみとめたものを膝痛有りとし、過去1ヶ月以内に一日以上続く腰痛をもつと答えたものまたは医師の診察で腰痛をみとめたものを腰痛有りとし、その有病率を求めたところ、総数でみると膝痛の割合は 32.7% (男性27.9% 、女性35.1%) 、腰痛の割合は37.7% (男性34.2%、女性39.4%)であった。この有病率を平成22年度国勢調査による性・年齢別人口比率を用いて計算すると、膝痛をもつものは1800万人(男性710万人、女性1090万人)、腰痛を持つものは2770万人(男性1210万人、女性1560万人)と推定された。
追跡調査結果からは、統合コホートベースライン調査参加者12,019人のうち、平成24年末で10,084人(83.9%、男性3,312人、女性6,772人) を追跡し得た。統合コホートベースライン調査参加者のうち、65歳以上の地域住民を対象として、要介護移行率を推定すると、総数で3.58/100人年 (男性3.17/100人年、女性3.78/100人年)であることがわかった。この要介護移行率を平成22年度国勢調査による性・年齢別人口比率を用いて計算すると、年間111万人(男性41万人、女性70万人)が要介護に移行することがわかった。
要介護移行の関連要因をCoxの比例ハザードモデルを用いて推定した。目的変数を要介護移行の有無とし、性、年齢、体格(0:BMI正常範囲, 1:BMI<18.5kg/m2, 2:BMI>=25kg/m2)、地域(0:田舎地域、1:都会地域)を説明変数としてモデルに入れて検討したところ、年齢が高いほど要介護移行へのリスクは高く (+1歳, Hazard ratio 1.14, 95%信頼区間1.12-4.45, p<0.001)、やせが有意に関連していることがわかった(やせvs.正常範囲のBMI, 1.24, 1.01-1.54, p = 0.043)。また地域特性が要介護の発生に関連していることもわかった(都会居住0.63, 0.54-0.73, p < 0.001)。一方、性差(女性)、過体重については、要介護リスクをあげる傾向にあったが有意ではなかった(男性vs.女性, 1.14, 0.98-1.32, p=0.099;過体重vs.正常範囲BMI, 1.16, 0.98-1.36, p = 0.082)。
追跡調査結果からは、統合コホートベースライン調査参加者12,019人のうち、平成24年末で10,084人(83.9%、男性3,312人、女性6,772人) を追跡し得た。統合コホートベースライン調査参加者のうち、65歳以上の地域住民を対象として、要介護移行率を推定すると、総数で3.58/100人年 (男性3.17/100人年、女性3.78/100人年)であることがわかった。この要介護移行率を平成22年度国勢調査による性・年齢別人口比率を用いて計算すると、年間111万人(男性41万人、女性70万人)が要介護に移行することがわかった。
要介護移行の関連要因をCoxの比例ハザードモデルを用いて推定した。目的変数を要介護移行の有無とし、性、年齢、体格(0:BMI正常範囲, 1:BMI<18.5kg/m2, 2:BMI>=25kg/m2)、地域(0:田舎地域、1:都会地域)を説明変数としてモデルに入れて検討したところ、年齢が高いほど要介護移行へのリスクは高く (+1歳, Hazard ratio 1.14, 95%信頼区間1.12-4.45, p<0.001)、やせが有意に関連していることがわかった(やせvs.正常範囲のBMI, 1.24, 1.01-1.54, p = 0.043)。また地域特性が要介護の発生に関連していることもわかった(都会居住0.63, 0.54-0.73, p < 0.001)。一方、性差(女性)、過体重については、要介護リスクをあげる傾向にあったが有意ではなかった(男性vs.女性, 1.14, 0.98-1.32, p=0.099;過体重vs.正常範囲BMI, 1.16, 0.98-1.36, p = 0.082)。
結論
大規模住民コホートを統合し、膝痛、腰痛の有病率を推定した。さらに追跡調査の解析から、わが国の高齢者における要介護移行率を推定し、要介護移行に関連する要因を明らかにした。
公開日・更新日
公開日
2013-08-27
更新日
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