アジュバント安全性評価データベースの構築研究

文献情報

文献番号
201208036A
報告書区分
総括
研究課題名
アジュバント安全性評価データベースの構築研究
課題番号
H24-創薬総合-指定-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
石井 健(独立行政法人医薬基盤研究所 創薬基盤研究部アジュバント開発プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 弘(独立行政法人医薬基盤研究所 トキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクト)
  • 水口 賢司(独立行政法人医薬基盤研究所 バイオインフォマティクスプロジェクト)
  • 清野 宏(東京大学 医科学研究所)
  • 中西 憲司(兵庫医科大学 免疫学)
  • 瀬谷 司(北海道大学 医学研究科)
  • 植松 智(東京大学 医科学研究所)
  • 浜口 功(国立感染症研究所 血液安全性研究部)
  • 保富 康宏(独立行政法人医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター)
  • STANDLEY DARON(大阪大学 免疫学フロンティア研究センター 免疫システム学)
  • Coban Cevayir (大阪大学 免疫学フロンティア研究センター マラリア免疫学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
310,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、次世代の免疫医薬として期待されるアジュバントの開発研究(有効性)および審査行政(安全性)に寄与するバイオマーカー探索可能なデータベースを構築することを目的とする。
研究方法
 本提案はアジュバントやワクチンの安全性と有効性の判断における有用な指標(バイオマーカー、サロゲートマーカー)を同定、検証するために、人に対する臨床試験を行う前の研究段階で2つの実験系を用いて行い、臨床試験のデータからのサンプルでバリデーションをとる。
各種アジュバントやアジュバントを含んだワクチンを用いてデータを蓄積し、公開することを目的とし、下記の研究方法を採った。

1)認可もしくは開発中のアジュバントを20種類選択し、ヒトのリンパ球等各種免疫系細胞、マウス等のモデル動物を用いてアジュバント及びワクチンに対する初期反応(自然免疫反応を含む)の遺伝子解析をDNAマイクロアレイ、マイクロRNAアレイを用いて行う
 これまでに研究開発された又は開発中のアジュバント、ワクチンのなかからワクチンメーカー等と調整を行って対象となるサンプルを選定して使用し、DNAマイクロアレイ法によりそれらの生物学的活性を、細胞や生体レベルでの宿主細胞反応としての遺伝子発現情報として解析し、蓄積する。
 また、実際のヒトにおけるアジュバントワクチンの臨床試験(平成21年度に行われたアラムアジュバントを含有する全粒子H5N1プレパンデミックワクチンの小児での臨床試験(BK-PIFA/KIB-PIAの健康小児を対象とした臨床試験:代表研究者 神谷齊))のサンプル(血清など)を用いてマイクロRNAの解析を行う。
 次にこれらの網羅的解析で見つかってきた分子群、因子群に関して、アジュバント(ワクチン)の安全性もしくは有効性の指標になりうるかを、細胞レベル、動物実験レベル、そして臨床試験のレベルで検証実験を行う。特に評価法の開発につながるアジュバントのターゲット器官である粘膜におけるターゲット細胞の解析や、アジュバントのイメージングなどを行う。

2)また、動物モデルの実験系を用いてアジュバント(ワクチン)接種後の時空間的変化を病理学的、および分子生物学的な手法を用いて解析する。 アジュバントを接種し、アジュバントの組織への取り込み効率の検討、他の組織へのアジュバントの侵入経路、炎症性細胞の浸潤、多臓器への影響の検討を病理学的手法を用いて解析を行う。

結果と考察
  上記の通り、予定されていた研究内容を予定通りかそれ以上の成果を上げることが出来たと考えている。
 特に、上市されているアジュバントや臨床試験にてドロップしたアジュバントなどを網羅的解析できるかが、このアジュバントデータベースプロジェクトの成否を握るといっても過言ではないが、5年かけてじっくり交渉する予定であった外資の企業などから積極的な参画の申し込みがあったのは想定外であった。そのため予定より早くMTA、共同研究契約の交渉が始まり、計画の前倒しが可能になった。
 また、平成24年度はアラムアジュバントを含有する全粒子H5N1プレパンデミックワクチンの小児での臨床試験の被験者血清でのマイクロRNA解析を計画していたが、トキシコゲノミクス、バイオインフォーマティクスのチームの積極的な関与もプラスに働き、計画より早く解析が終了した。そのため、25年度以降に予定していたアジュバントの安全性(発熱)や有効性(抗体価)を予見できるバイオマーカー候補の同定作業やその次に予定していたアジュバント入りインフルエンザワクチンの臨床試験の検体を用いたバリデーションの解析まで24年度中に可能になった。

結論
今後のワクチン開発におけるアジュバントの役割は非常に大きく、アジュバントの安全性及び有効性を科学的に評価するためには、アジュバント投与によって生じる生体反応を細胞および遺伝子レベルで解析したデータからなるデータベース構築が必須である。本研究では、ラット、マウス、ヒトPBMCを用いてアジュバント投与後の遺伝子発現変化を遺伝子アレイによって網羅的解析してデータベース構築を進めていく。アジュバントの有効性と安全性を適正に評価するためには高品質のデータベースが必要であり、さらに知見を集積してSOPを確立していく。また、結果として得られる膨大なデータから様々な指標を抽出する方法論の確立も進めていく。

公開日・更新日

公開日
2013-07-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201208036Z