ドクターヘリ・ドクターカーによる超急性期からの医療提供体制ニーズの把握に係る研究

文献情報

文献番号
201205015A
報告書区分
総括
研究課題名
ドクターヘリ・ドクターカーによる超急性期からの医療提供体制ニーズの把握に係る研究
課題番号
H24-特別-指定-023
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
青木 則明(特定非営利活動法人ヘルスサービスR&Dセンター(CHORD-J))
研究分担者(所属機関)
  • 横田 順一朗(市立堺病院)
  • 奥地 一夫(奈良県立医科大学)
  • 大田 祥子(一般社団法人HIMAP)
  • 清水 健伸(一般社団法人HIMAP)
  • 酒井 未知(特定非営利活動法人ヘルスサービスR&Dセンター(CHORD-J) )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦ではアクセシビリティの改善を目的として、ドクターカーやヘリコプター(ドクターヘリや防災ヘリ)の導入が進んでいるが、搬送が必要な患者数の定量化、ドクターカーやヘリコプター搬送の臨床的効果の評価、これらを踏まえた配置の適正化に関する検討はほとんど行われておらず、これらは本邦において喫緊の課題である。本研究の目的は、ドクターカーやヘリコプター搬送に対する医療需要の定量化・視覚化を行い、現時点の救急医療体制における需給バランスを評価し、ヘリコプターの配備による医療経済的効果を検証することである。
研究方法
重症外傷(Load and Go対応の外傷)と脳卒中(脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血)の緊急性を要する2つの疾患について、地理情報システム(Geographic Information System:GIS)を活用し、全国における患者数の推定を行った上で、救急車、ドクターカー、ドクターヘリ・防災ヘリによるカバーの状況を定量化・視覚化した。また、現状の配備における臨床的な効果(予想されるアウトカム改善)とその医療経済的効果を定量化した。さらに、新規にドクターヘリを配置すべき場所を求めた上で、新規設置することの医療経済的効果を算出した。
結果と考察
年間の重症外傷の発生数は29,785例、脳卒中の発生数は343,135例で、日中と夜間の患者発生頻度はほぼ1:1であったため、日中・夜間それぞれの患者数は重症外傷14,893人、脳卒中171,568人と推定された。ヘリが運用できない状況(夜間)は重症外傷12,137人(81.5%)、脳卒中146,614人(85.5%)がカバーできていると試算されたが、日中、ドクターヘリと防災ヘリを県境を越えて運用することで、重症外傷14,291人(96.0%)、脳卒中164,810人(96.1%)がカバーできると試算された。ヘリコプター搬送の年間の医療経済効果は、脳卒中で約38億円、重症外傷で約30億円、救急搬送される患者の中で緊急性の高い患者(緊急度=赤)では約126億円と試算された。新規に配置することで、アウトカム改善が期待できる患者数は、重症外傷では2.0人、脳卒中では83.8人であり、重症外傷では年間約1.9億円、脳卒中では年間約3.3億円、合計年間約5.2億円の医療経済効果が期待された。
本研究の主たる限界点として、現場到着時間、現場活動時間、ヘリコプター運航範囲を全国一律に仮定している点、新規ヘリコプター設置拠点の検討に際し、該当する救命センターのヘリポートの有無、スタッフ数などの現状を考慮せず、地理的状況と非カバー患者数などの指標のみを勘案して設置場所を仮定している点等があるが、救急搬送の手段を地域、広域、あるいは国全体で評価するアプローチの実例を示すことができたと考えられる。
結論
本研究では、様々な限界点はあるが、救急搬送の手段を地域、広域、あるいは国全体で評価するためのアプローチを明示した上で、評価の実例を示すことができた。今後は各地域でより詳細な分析を行い、今回試算した医療経済的効果を実際のものにしていくには、搬送リソースの活用に対するモニタリングを継続的に実施し、PDSAサイクルを回して行く事が重要であり、そのための病院前と医療機関のデータを地域や都道府県レベルで統合していくための仕組み作りが必要と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201205015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究で、ドクターヘリが運行不可の夜間の重症外傷患者のカバーは81.5%と、夜間の救急医療体制を検討する必要性を示し、本研究手法を応用して、夜間の重症患者をカバーする救命医療資源の最適配置を検討することを目的とした「GISによる救急医療の需給バランス定量化と医療資源最適配置の検討手法に係る研究」が平成26年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)若手研究Bに採択された。現在も継続的に、救命救急センターやドクターカー拠点の最適配置を検討する手法の開発が行われている。
臨床的観点からの成果
2013年10月から、富山県で、本研究の手法に基づくドクターヘリ導入効果の検討を開始し、ドクターヘリ導入による救急重要疾患の搬送増加数、そのうち、臨床的アウトカムの改善が期待される推定患者数を示し、ドクターヘリを導入する臨床的効果に関して関係者の同意を得ることができた。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
地方自治体にドクターヘリを導入した場合の、重症外傷、急性心筋梗塞、院外心肺停止、脳卒中患者における効果(搬送増加数等)を定量化・視覚化する本研究の手法は、地方自治体へのドクターヘリを導入を検討する一資料となっている。2013年10月より、富山県で本研究の手法に基づくドクターヘリ導入効果の検討を行った結果、2014年3月26日、5月8日に富山県高度救急医療体制検討会で検討資料に活かされ、富山県ドクターヘリ導入につながった。
その他のインパクト
1)厚生労働省によるドクターヘリの広域連携の検討を報道した2013年6月16日のNHKで、本研究で試算した、広域連携による搬送増加数(脳卒中1,062名、重症外傷166名)が報道された。2)2013年11月16日の航空医療学会で、本研究結果と、福島、山形、新潟でヘリを広域連携する効果を示した。3)NPO法人CHORD-Jのホームページで研究報告書を公開した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
第20回日本航空医療学会, 2013年11月16日, 福島
学会発表(国際学会等)
2件
2013 American Public Health Association Annual Meeting and 2015 SER's 48th Annual Meeting
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
2014年3月26日、5月8日に富山県高度救急医療体制検討会で検討資料に活かされ、富山県ドクターヘリ導入につながった
その他成果(普及・啓発活動)
1件
NPO法人CHORD-Jホームページ上で研究成果を公開した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-28
更新日
2017-06-12

収支報告書

文献番号
201205015Z