採血基準の見直しと献血者確保の方策に関する研究

文献情報

文献番号
201132015A
報告書区分
総括
研究課題名
採血基準の見直しと献血者確保の方策に関する研究
課題番号
H21-医薬・一般-017
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 一格(東京都赤十字血液センター)
  • 佐竹 正博(東京都西赤十字血液センター)
  • 豊田 九朗(日本赤十字社 血液事業本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、採血基準の変更が献血者および血液事業にどのような影響を与えたかを検証することにより、採血基準の変更の妥当性を検討することを目的としている。併せて採血時のVVR等の副作用の実態を解明することにより献血者の安全性の確保も企図している。また、潜在的な献血者を発掘することが献血者数を大幅に増やすための有効な手段であると考えられることから、種々の条件下でその方策を提示することも目的としている。
研究方法
平成23年4月~12月の間の献血者のデータを用いて新基準のもとで献血ができなかった者やVVR(血管迷走神経反応)等の有害事象の背後にある属性について分析した。次いで2010年1月1日~同年12月31日の間に全国の献血実施場所を訪れ、しかも九州に住所地を有する734,793名を抽出し、献血者が居住している九州の市町村ごとの献血の状況を年齢階級ごとに算定した。さらに2010年1月1日から12月31日までの献血者のデータを基にし、気象庁公開の都道府県の県庁所在地での日次の天候データを比較して分散分析を行った。
結果と考察
採血基準変更後の血色素低値のため献血できなかった献血者ならびに男性17歳の400mL献血および男性のPC献血の上限年齢引き上げの影響が初めて明らかになった。また、採血に伴う副作用が若年者を中心に多いことが確認された。とりわけ副作用の大半を占めるVVRが発症した場合、軽症になるケースが食後約数十分~3時間に有意に多いことがわかった。
次に九州地域で試行的に年齢階級別の献血率を市町村ごとに算定し、市町村別に献血状況に関する所謂、“通知表”を作成した。これを用いて潜在献血者の掘り起しに資する献血思想の普及啓発活動を効率良くピンポイントに行うための資料を作成した。
 さらに天気の要因が献血行動にどのような影響を与えているのかを調査した。その結果、天気の要因がそれぞれの献血ルームの献血者の行動に影響していることが示された。
結論
研究結果は、平成の市町村の大合併により、献血思想の普及・啓発活動、そして献血の実践の場としての自治体自体が広域化するとともに献血推進を担う人材が減少してきている状況の中で、今後の献血者の確保ならびに安全で安定した血液事業を展開するための基礎資料となるものである。

公開日・更新日

公開日
2012-06-06
更新日
-

文献情報

文献番号
201132015B
報告書区分
総合
研究課題名
採血基準の見直しと献血者確保の方策に関する研究
課題番号
H21-医薬・一般-017
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 一格(東京都赤十字血液センター)
  • 佐竹 正博(東京都西赤十字血液センター)
  • 豊田 九朗(日本赤十字社 血液事業本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
献血者確保のために採血基準等を科学的根拠に基づいて見直すことは、新たな献血者の開拓等につながる科学的根拠を求め、結果を今後の血液事業に反映させるための方策を提示することが目的である。
研究方法
日本赤十字社の全国統一コンピュータシステムに入力されている献血者データを用いて採血基準を拡大するためのデータ、ならびに採血基準変更後の献血者の副反応データを収集し、変更の妥当性を検証した。また、GIS(地図情報システム)を用いて献血者の地域特性を分析し、気象データを用いて気象要因が献血行動に与える栄養を分析した。スイス赤十字社や病院輸血部の関係者のインタビューにより、BSE関係の献血制限の根拠等について分析した。
結果と考察
北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、岡山県、そして福岡県の献血者の地理的分布や実際の献血率、さらに地理的属性等が明らかとなった。400mL献血の献血回数を見直して年間4回の採血の可能性を調査した。平均Hb値は、それほど低下しなかったものの低下が大幅な献血者が存在すること、ならびにHb値が採血可能境界域を少し越えた献血者が4回献血すると、Hbが基準以下に低下することから、さらにデータを収集して慎重に検討していく必要があることがわかった。スイスの調査では、BSEに関連する6か月の英国滞在歴で採血不可の判定に科学的根拠がないことがわかった。採血基準変更後の血色素低値のため献血できなかった献血者ならびに男性17歳の400mL献血および男性のPC献血の上限年齢引き上げの影響が初めて明らかになった。また、採血に伴う副作用が若年者を中心に多いことが確認された。とりわけ副作用の大半を占めるVVRが発症した場合、軽症になるケースが食後約数十分~3時間に有意に多いことがわかった。次に九州地域で試行的に年齢階級別の献血率を市町村ごとに算定し、市町村別に献血状況に関する所謂、“通知表”を作成した。これを用いて潜在献血者の掘り起しに資する献血思想の普及啓発活動を効率良くピンポイントに行うための資料を作成した。 さらに天気の要因が献血行動にどのような影響を与えているのかを調査した。その結果、天気の要因がそれぞれの献血ルームの献血者の行動に影響していることが示された。
結論
本研究は、献血者の確保ならびに安全で安定した血液事業を展開するための基礎資料となるものである。

公開日・更新日

公開日
2012-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-02-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201132015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究により男性の血小板献血が可能となる上限年齢が、54歳から69歳に引き上げられた。また、献血者の居住地別の献血率を初めて算定することができたことは、効果的に潜在献血者の発掘に有益な資料を提供することとなる。また、献血行動に影響を与える気象等の因子の同定は、効果的な献血業務の展開に有用である。
臨床的観点からの成果
平成23年4月より17歳男性の400mL献血が可能となったが、本研究によりこの新たな採血基準で献血を行なった場合のVVR(血管迷走神経反応)等の副反応の発生状況を調査した。その結果、採血基準の拡大による副反応の増加は認められなかった。これは献血者の臨床的側面からの健康保護に寄与する内容である。
ガイドライン等の開発
厚生労働省の薬事・食品衛生審議会血液事業部会(2009年12月27日)にて、本研究の成果である男性の血小板献血が可能となる上限年齢の引き上げが決定され、同血液事業部会運営会議(平成21年2月)で「採血基準」の変更が了承された。

その他行政的観点からの成果
前述のように研究成果は、採血基準の変更に科学的論拠を与えたものである。これにより、高齢化により医療需要が増大している血小板採血の量的確保が少なからず容易となった。
その他のインパクト
献血基準の変更は多くのマスコミにより報道されるとともに、各地の輸血療法委員会や学会でも取り上げられた。これら採血基準の変更が献血者の関心を呼び、特に10歳代の献血者の減少に歯止めがかかり、増加に転じそうな傾向が認められる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201132015Z