ハンセン病の再発・再燃、難治症例に対する予防・診断・治療とハンセン病の啓発に関する研究

文献情報

文献番号
201123007A
報告書区分
総括
研究課題名
ハンセン病の再発・再燃、難治症例に対する予防・診断・治療とハンセン病の啓発に関する研究
課題番号
H21-新興・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
向井 徹(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部)
研究分担者(所属機関)
  • 甲斐雅規(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部 )
  • 牧野正彦(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部 )
  • 石井則久(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター )
  • 前田百美(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部 )
  • 鈴木幸一(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部)
  • 鮫島朝之(国立療養所星塚敬愛園)
  • 野上玲子(国立療養所菊池恵楓園)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
48,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
世界のハンセン病は、WHOのMDT療法により登録患者数の減少がみられている。しかし、再発・再燃を繰り返す難治性ハンセン病や多剤耐性らい菌の出現に対する対策、感染・発症の予防法の開発、啓発や医師への教育など新たな問題が浮上している。これら諸問題に対応すべく研究を推進した。
研究方法
薬剤耐性ハンセン病に関する研究及び調査では、迅速な耐性変異検出法開発、迅速発育抗酸菌によるらい菌の遺伝子変異と耐性相関検出系開発および各国の耐性菌検査機関の技術指導を行った。再燃・再発患者に対する血清診断法およびモニタリングシステムの開発では、血清診断法のみならず細胞性免疫の検討の必要性を示し、今後の再燃に対する基礎データの蓄積を行った。らい菌のマクロファージ内寄生機構に関する研究では、宿主細胞HSLが治療効果把握への応用を試みた。難治症例に対する免疫療法の開発では、LipoKにより刺激された樹状細胞放出エキソームに特定のらい菌膜成分が多く含まれることを示した。ハンセン病予防法に関する研究では、組込み型抗原発現BCGは非常に安定発現しかつ安全性を高めた。ハンセン病に対する免疫療法の開発では、構築されたBCG-D70Mは、これまでの組換えBCGの中で、もっとも有望であることを示し、追加免疫剤の検討を行った。ハンセン病の理解促進に関する研究では、療養所に長期保存された各種資料より2型らい反応治療へのサリドマイド使用指針作製に活用した。ハンセン病診療のネットワーク構築では、ハンセン病の講習会・実習を開催し、患者・回復者の診療体制構築を進めた。
結果と考察
マウスを用い長期を要するらい菌薬剤耐性試験の迅速化は、流行地域での応用が期待された。再発・再燃を事前もしくは早期診断する方法の開発に有用なデーターの蓄積が行われた。予防法開発では、新規標的分子の同定、さらに、より現実的なワクチン開発が進められた。療養所に蓄積された医療情報のアーカイブ化は、治療指針作成に活かされた。診療ネットワークの構築のため開催された講習会に多数の医師が参加した。
結論
本研究より得られた知見は、今後のハンセン病対策に有用な貢献が可能と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

文献情報

文献番号
201123007B
報告書区分
総合
研究課題名
ハンセン病の再発・再燃、難治症例に対する予防・診断・治療とハンセン病の啓発に関する研究
課題番号
H21-新興・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
向井 徹(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部)
研究分担者(所属機関)
  • 甲斐 雅規(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部 )
  • 鮫島 朝之(国立療養所星塚敬愛園)
  • 鈴木 幸一(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部 )
  • 前田 百美(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部 )
  • 牧野 正彦(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部 )
  • 野上 玲子(国立療養所菊池恵楓園)
  • 石井 則久(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
世界の新規ハンセン病患者は、年間二十数万人を数え、耐性菌対策および再発・再燃への有効な予防・診断・治療法は現存しない。さらに、我が国の新規患者数は極めて少なく、医療従事者・一般人への教育・啓発が必要である。これらへの対処法を明らかにすることを目的とした。
研究方法
1.薬剤耐性菌対策では、耐性遺伝子変異を迅速かつ多数検出するHPRT-PCR法を開発した。耐性と変異の相関を直接証明する新規手法を開発し、臨床応用の可能性を示した。
2.再燃・再発の早期診断法開発は、菌蛋白に対する血清抗体価を3年間測定し、さらに細胞性免疫能を検討した。
3.らい菌の細胞内寄生機構解明では、ファゴゾームの脂質蓄積機構に関し検討した。
4.難治症例に対する免疫療法開発では、菌リポ蛋白は殺菌作用を強く誘導し、さらに、菌感染樹状細胞のエキソソームに菌由来分子が検出され、T細胞の活性化に関わった。予防法開発では、安定的に抗原分泌し、安全なBCGの開発を進めた。また、ウレアーゼ欠損BCGであるBCG-D70Mを作製し、免疫学的効果を解析した。追加免疫用治療的ワクチンとして、各種組換え蛋白を検討した。
5.理解の促進では、療養所の紙資料の薄冊目録を作成した。日本におけるスムーズなハンセン病診療のためのネットワーク構築を目指した。
結果と考察
1.各国サンプルにより耐性菌の存在を確認し、臨床応用が可能であった。
2.入所者抗体価は広範な皮膚病変であったほど高値持続した。再燃・再発の早期診断は、臨床症状も含め、総合的な検討が必要であった。
3.菌感染細胞では、脂質蓄積に関与酵素の誘導、脂質分解酵素の抑制を明らかにした。本遺伝子発現評価は、多剤併用療法の効果判定に有用と考えられた。
4.新規強力プロモーターと薬剤耐性遺伝子を除去した安全なBCGは、各種ワクチン作製を可能にすると考えられた。BCG-D70Mは、初回治療用ワクチンとして、MMP-II及びHSP70-MMP-II融合リコンビナント蛋白は、追加免疫用治療ワクチンとして有用であった。
5.アーカイブズの構築は、医学史研究等に貢献しうる。年1回、講習会・実習を行い、診療体制を整えた。さらに、退所者ハンドブックを作成し、回復者の診療が円滑に行われるようにした。
結論
本研究より得られた知見は、ハンセン病対策に有用な貢献が可能と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-01-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201123007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
試料より薬剤耐性らい菌を、多数かつ迅速に検出する方法を開発した。菌が感染したヒト細胞は、脂質を貯留する方向に制御されることを発見した。菌成分であるLipoKにより樹状細胞が活性化され、菌を殺戮する機構を報告した。構築した組換えBCGは、これまでの中で最も強い抗らい菌免疫誘導を示した。非常に強い抗酸菌プロモーターを同定した。菌接種カニクイザルに、長期にわたり菌を排出する個体を確認した。H24年度より「ハンセン病の予防法及び診断・治療法の開発・普及に関する研究」において研究内容が引き継がれた。
臨床的観点からの成果
療養所の回復者の協力のもと、3年間の継続した抗体価調査により、皮疹が広範な既往者ほど、高い抗らい菌蛋白抗体価を保っていることが判明した。今後、再発・再燃の早期診断法開発に生かされると考えられた。H24年度より「ハンセン病の予防法及び診断・治療法の開発・普及に関する研究」において研究内容が引き継がれた。
ガイドライン等の開発
療養所に長期保管されていた各種資料のアーカイブ化を行った。その中のサリドマイド使用の記録を、らい反応におけるサリドマイド使用指針作成に活用した。
その他行政的観点からの成果
我が国におけるハンセン病発生動向調査は、本研究班のみで行われている。公表文献の検索等により新規患者数の調査を行い、21年度は2名、22年度は4名、23年度は5名であることを報告した。今後、ハンセン病を知らない医師が増加するため、医師等への教育、また、回復者が一般医療機関を受診し易いように、医師のネットワーク形成を推進した。H24年度より「ハンセン病の予防法及び診断・治療法の開発・普及に関する研究」において研究内容が引き継がれた。
その他のインパクト
医師等医療関係者への教育・ネットワーク構築のため、ハンセン病に関する講習会を、福岡市、東京都、名古屋市においで開催し、計89名の参加をみた。内容として、ハンセン病についての講義、回復者による講義、皮膚スメア・末梢神経検査実習、病理標本実習を行った。今後も継続して開催することが重要と考えられた。H24年度より「ハンセン病の予防法及び診断・治療法の開発・普及に関する研究」において研究内容が引き継がれた。

発表件数

原著論文(和文)
37件
原著論文(英文等)
35件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
61件
学会発表(国際学会等)
32件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
医療関係者対象にハンセン病に関する講習会を開催した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nakata N., Kai M., Makino M
Mutation Analysis of Mycobacterial rpoB Genes and Rifampicin Resistance Using Recombinant Mycobacterium smegmatis
Antimicrob. Agents Chemother. , 56 , 2008-2013  (2012)
原著論文2
Suzuki K.,Akama T., Kawashima A., et al.
Current status of leprosy: epidemiology, basic science and clinical perspectives.
J Dermatol , 38 , 1-9  (2011)
原著論文3
Y. Fukutomi, Y. Maeda, M. Makino.
Apoptosis-inducing activity of clofazimine in macrophages.
Antimicrob .Agents Chemother. , 55 , 4000-4005  (2011)
原著論文4
Y. Maeda, T. Tamura, Y. Fukutomi, et al.
A lipopeptide facilitate induction of Mycobacterium leprae killing in host cells.
PLoS Neglected Tropical Diseases , 5 , 1401-  (2011)
原著論文5
石井則久、石田 裕、 岡野美子、他
らい性結節性紅斑(ENL)に対するサリドマイド診療ガイドライン
日本ハンセン病学会誌 , 80 , 275-285  (2011)
原著論文6
Tsukamoto Y.,Endoh M., Mukai T., et al.
Immunostimulatory activity of major membrane protein-II from Mycobacterium tuberculosis.
Clin. Vaccine Immunol. , 18 , 235-242  (2011)
原著論文7
Nakata N., Kai M., Makino M.
Mutation Analysis of the Mycobacterium leprae folP1 Gene and Dapsone Resistance.
Antimicrob Agents Chemother. , 55 , 762-766  (2011)
原著論文8
Kai M., Nguyen P.N.H., Nguyen H.A., et al.
Analysis of drug-resistant strains of Mycobacterium leprae in an endemic area of Vietnam.
Clin Infect Dis , 52 , 127-  (2011)
原著論文9
Akama T., Tanigawa K., Kawashima A., et al.
Analysis of Mycobacterium leprae gene expression using DNA microarray
Microb. Pathog , 49 , 181-185  (2010)
原著論文10
Suzuki K., Takigawa W., Tanigawa K., et al.
Detection of Mycobacterium leprae DNA from archaeological skeletal remains in Japan using whole genome amplification and polymerase chain reaction.
PLoS ONE , 5 , 12422-  (2010)
原著論文11
Suzuki K., Udono T., Fujisawa M., et al.
Infection during infancy and long incubation period of leprosy suggested in the case of a chimpanzee used for medical research.
J Clin Microbiol. , 48 , 3432-3434  (2010)
原著論文12
. Mukai, Y. Maeda, T. Tamura, et al
Enhanced activation of T lymphocytes by urease-deficient recombinant Bacillus Calmette-Guérin producing heat shock protein 70-major membrane protein-II fusion protein.
J. Immunol. , 185 , 6234-6243  (2010)
原著論文13
M. Makino, Y. Maeda, M. Kai, et al.
GM-CSF mediated T-cell activation by macrophages infected with recombinant BCG that secretes major membrane protein-II of Mycobacterium leprae.
FEMS Immunol. Med. Microbiol. , 55 , 39-46  (2009)
原著論文14
Y. Maeda, T. Tamura, M. Matsuoka, et al.
Inhibition of the multiplication of Mycobacterium leprae by vaccination with a recombinant M. bovis BCG strain that secretes major membrane protein-II in mice.
Clin. Vaccine Immunol. , 16 , 1399-1404  (2009)
原著論文15
T. Mukai, Y. Maeda, T. Tamura, et al.
Induction of cross-priming of naïve CD8+ T lymphocytes by recombinant Bacillus Calmette-Guérin that secretes heat shock protein 70-major membrane protein-II fusion protein.
J. Immunol. , 183 , 6561-6568  (2009)
原著論文16
Hatta, M., M. Makino, Ratnawati, et al.
Detection of serum antibodies to M. leprae Major Membrane Protein-II in leprosy patients from Indonesia.
Leprosy Review , 80 , 402-409  (2009)
原著論文17
Akama T., Suzuki K., Tanigawa K., et al.
Whole genome tiling array analysis of Mycobacterium leprae RNA reveals high expression of pseudogenes and non-coding regions
J. Bacteriol. , 191 , 3321-3327  (2009)
原著論文18
Tanigawa K., Suzuki K.,Kimura H., et al.
Tryptophan aspartate- containing coat protein (CORO1A) suppresses Toll-like receptor signalling in Mycobacterium leprae infection.
Clin Exp Immunol. , 156 , 495-501  (2009)
原著論文19
Nakamura K., Akama T., Pham DB, et al.
Detection of RNA expression from pseudogenes and noncoding genomic regions of Mycobacterium leprae.
Microb. Pathog. , 47 , 183-187  (2009)
原著論文20
Li H-J, Kanazawa N., Nakatani Y. et al.
No involvement of the NOD1 polymorphism Glu266Lys in Japanese leprosy patients.
J Dermatol. Sci. , 56 , 72-73  (2009)

公開日・更新日

公開日
2014-06-03
更新日
2016-05-26

収支報告書

文献番号
201123007Z