建築物の特性を考慮した環境衛生管理に関する研究

文献情報

文献番号
201036014A
報告書区分
総括
研究課題名
建築物の特性を考慮した環境衛生管理に関する研究
課題番号
H21-健危・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大澤 元毅(国立保健医療科学院 建築衛生部)
研究分担者(所属機関)
  • 鍵 直樹(国立保健医療科学院 建築衛生部)
  • 田島 昌樹(国立保健医療科学院 建築衛生部)
  • 池田 耕一(日本大学 理工学部)
  • 中館 俊夫(昭和大学 医学部)
  • 射場本 忠彦(東京電機大学 未来科学部)
  • 柳 宇(工学院大学 建築学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
建築物形態と用途の違いに着目し,その環境衛生上の現状と問題点を実態調査,資料調査などを通して抽出し,建築物の用途別に異なる維持管理方法の必要性と提言に取りまとめる。
研究方法
本研究は次の4部会体制で実施した。
1)建築物の地下空間の実態と維持管理に関する研究:全国的な実地測定による維持管理と環境実態把握
2)建築物の用途別の維持管理実態に関する研究:立入検査資料とビル管理者へのアンケート結果の分析による,用途別維持管理実態の把握
3)建築物の環境衛生と省エネルギーのあり方に関する研究:省エネルギー技術の導入による影響とその機序の把握
4)湿度環境とインフルエンザに関する文献調査:文献レビューとその分析
結果と考察
1)地下街における低湿度は冬期に集中して夏期に少ない,夏期にも外気流入による温度・粉じん・浮遊微生物濃度の空間分布と変動性が大きいなどの課題が明らかになった。さらに,地上出入口等の大開口において,設計想定外の過大な気流が生じている実態,地下階濃度が地上階に比べ有意に高いこと等が示唆された。
2)統計的・総合的な検討により,全般に温度,相対湿度,二酸化炭素濃度の不適率が上昇傾向にあり,検討すべき重要項目であることを示した。また、空気環境の不適率と,地域や用途との関係,法改正による対象建築物の拡張や,維持管理状況との関係などの懸念事項を明らかにした。さらに,不適率増加と個別空調方式との間に有意な関係を見出したほか,空調機及び関連装置の不良や点検・整備不足との関係なども示唆された。
3)事務所での相対湿度の不適割合が高く,特に冬季著しいことに注目し,建物内・室内での空間分布が相対湿度に影響すること,相対湿度の制御を難しくする原因となっている状況を明らかにした。今後,計測箇所や計測方法など適切な維持管理手法・監視方法の改善を図ることにより、基準値の範囲を満たす(適合)割合が高くなると考えられる。
4)文献検索の結果,インフルエンザ感染予防のために,建築物環境衛生という観点から考慮すべき重要な知見を報告している複数の文献が見出された。
結論
地下街をはじめとする建築物に,個別空調の導入や加湿方式の変化など,用途毎に特有な実態と課題があることが示され,用途に応じた維持管理手法や適切な監視方法の提案の必要性が明らかにされた。また,環境項目が不適となる原因を追及することで,適切な維持管理手法により改善する可能性についても示された。

公開日・更新日

公開日
2011-07-22
更新日
-

文献情報

文献番号
201036014B
報告書区分
総合
研究課題名
建築物の特性を考慮した環境衛生管理に関する研究
課題番号
H21-健危・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大澤 元毅(国立保健医療科学院 建築衛生部)
研究分担者(所属機関)
  • 鍵 直樹(国立保健医療科学院 建築衛生部 )
  • 田島 昌樹(国立保健医療科学院 建築衛生部 )
  • 池田 耕一(日本大学 理工学部)
  • 中館 俊夫(昭和大学 医学部)
  • 射場本 忠彦(東京電機大学 未来科学部)
  • 柳 宇(工学院大学 建築学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
建築物形態と用途の違いに着目し,その環境衛生上の現状と問題点を実態調査,資料調査などを通して抽出し,建築物の用途別に異なる維持管理方法の必要性と提言に取りまとめる。
研究方法
本研究は次の4部会体制で実施した。
1)建築物の地下空間の実態と維持管理に関する研究:全国的な実地測定による維持管理と環境実態把握
2)建築物の用途別の維持管理実態に関する研究:立入検査資料とビル管理者へのアンケート結果の分析による,用途別維持管理実態の把握
3)建築物の環境衛生と省エネルギーのあり方に関する研究:省エネルギー技術の導入による影響とその機序の把握
4)湿度環境とインフルエンザに関する文献調査:文献レビューとその分析
結果と考察
1)地下街の環境は全般に良好であったが,一部施設で相対湿度が40%を下回ったほか,細菌濃度が高い場合や,過大な外気侵入,改修工事等による局所的な空気汚染が散見された。
2)統計的・総合的な検討により,温度,相対湿度,二酸化炭素濃度の不適率が上昇傾向にあり,地域や用途との関係,法改正による対象建築物の拡張や,維持管理状況との関係などの懸念事項が明らかになった。さらに、不適率増加と個別空調方式との間に有意な関係を見出され検討を要する。
3)事務所で,建物内・室内での空間分布が相対湿度に影響すること,相対湿度の制御を難しくする原因となっている状況を明らかにした。
4)文献検索の結果,インフルエンザ感染予防のために,建築物環境衛生という観点から考慮すべき重要な知見を報告している複数の文献が見出された。
結論
現在の地下街環境は,衛生或いは安全優先で維持管理されているため問題が顕在化していないが,今後温暖化対策などを強いられた時の対応がこれからの課題である。
特定建築物において管理基準を満たさない割合(不適率)が増える傾向が継続しており,原因と目される個別空調方式や加湿方式に関する検討と対策が必要である。
空調技術・建築技術自体の革新が,室内の均一性や安定性などを変えており,想定状況自体を様々な技術革新や社会的制約に対応して見直していくことが求められている。

公開日・更新日

公開日
2011-07-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201036014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
地下街実態調査では,一部で相対湿度が基準値40%を下回った外,環境衛生優先の運用が行われ,全般に良好な環境が維持されている実態が確認された。但し,大型かつ代表的な施設を対象としたため,中小規模,或いは環境・経済・社会的制約が厳しくなった場合には更なる配慮が必要である。用途別調査では,事務所・学校等における相対湿度,温度,二酸化炭素濃度の不適が全国的に増加傾向にあることを示し,個別方式空調普及との関連を指摘した。また建築物衛生法改正に伴う対象の変化や省エネ機器導入等との関連も示唆された。
臨床的観点からの成果
地下街環境は概ね良好であったが,細菌濃度が高い場合や,大開口での過大な外気侵入,改修等による一時的汚染などが一部に指摘された。維持管理実態については,アンケートから得た検査データや意見等により,用途による設備構成や使用目的の違いが管理水準に影響している実態,都道府県によって有意な差が生じている状況などが示された。典型的な事務所建物における実証的調査では,室間或いは空調ゾーン間に建築物衛生法の想定を超える温湿度分布が生じ,相対湿度の制御を難しくする原因となっている状況を明らかにした。
ガイドライン等の開発
本研究で収集し取りまとめた建築物における環境衛生に関する実測調査及び立入検査データ,アンケート結果等の資料は,その現状と課題を示唆する希少な基礎データである。
その成果は雑誌への掲載,学術分野への情報提供,行政担当者への研修会などに供されるほか,施策担当者に提供されて,建築物衛生法の管理基準や運用手続きの検討,ガイドライン等への反映が期待される。
その他行政的観点からの成果
今後,建築物用途毎の解析を進めることにより,不適となる原因究明が達成されれば,建築物の維持管理水準の底上げに有益な情報となることから,これについても追及を続けて,現場となる保健所環境衛生監視員及び建築物衛生管理技術者への反映を図る必要があると考えられる。
その他のインパクト
建築物における環境衛生上の問題の原因が建築設備にある場合は,設備の設計時,図面審査時など建築前に改善指導を行う必要性が示唆される。一方,維持管理に問題がある場合は,適切な対策手法について情報を提供することが求められる。
環境衛生基準については更に,最新の研究成果をレビューし,正確な情報を発信することで,環境の維持管理の必要性に関する基礎情報整備と提言に結び付けていくことが求められている。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
13件
空気調和衛生工学会、室内環境学会、日本建築学会
学会発表(国際学会等)
1件
Indoor Air 2011
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
4件
生活衛生研修会(厚生労働省)2回 建築物衛生管理講習会(品川区、港区) 建築物衛生勉強会(全国ビルメンテナンス協会)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
谷川力,鍵直樹,斉藤秀樹,他
地下街における有害生物生息状況アンケート結果とヒアリング報告
家屋害虫 , 32 (1) , 13-17  (2010)
原著論文2
柳宇,鍵直樹,池田耕一
空調システムにおける微生物汚染の実態と対策に関する研究 第4報-個別方式空調における「かび臭」原因究明のための調査
日本建築学会環境系論文集 , 75 (654) , 721-726  (2010)
原著論文3
鍵直樹,柳宇,池田耕一,他
事務所建築物の規模による室内空気質の比較検討
日本建築学会環境系論文集 , 76 (659) , 43-48  (2011)

公開日・更新日

公開日
2017-08-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201036014Z