文献情報
文献番号
201035006A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノマテリアルのヒト健康影響の評価手法に関する総合研究
課題番号
H20-化学・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
福島 昭治(中央労働災害防止協会 日本バイオアッセイ研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 鷹屋光俊(独立行政法人労働安全衛生総合研究所)
- 相磯成敏(中央労働災害防止協会 日本バイオアッセイ研究センター )
- 甲田茂樹(独立行政法人労働安全衛生総合研究所)
- 吉田緑(国立医薬品食品衛生研究所)
- 小川幸男(国立医薬品食品衛生研究所)
- 長野嘉介(中央労働災害防止協会 日本バイオアッセイ研究センター )
- 浅倉眞澄(中央労働災害防止協会 日本バイオアッセイ研究センター )
- 野口忠(中央労働災害防止協会 日本バイオアッセイ研究センター )
- 山本雅也(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
38,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ナノマテリアルは極めて微細であり一般生活環境や産業現場の気中に拡散し易いため、経気道的に容易に体内に侵入する可能性が高く、ヒトへの健康影響が懸念される。本研究の目的は、ナノマテリアルの経気道暴露によるヒトへの健康影響の評価に役立つ手法を開発することである。
研究方法
ナノマテリアルの経気道暴露による健康影響の評価手法を確立する研究では、各種物理化学的測定によりMWCNTのキャラクタリゼーション、MWCNTのラットへの気管内投与によるMWCNTの肺外への移行の検索、肺のマイクロアレイ解析及び中期発がん試験、ナノマテリアルを取扱う労働現場での電顕及び炭素分析を用いて作業環境測定、酸化チタンのラットへの気管内投与による肺の経時的変化の光顕と電顕による観察、吸入暴露装置の開発を行った。in vitro及びin vivo試験系によるスクリーニング法の研究では、MWCNTの細胞形質転換試験及び気管内投与したgpt delta ラット肺での突然変異性試験を実施した。また、ナノマテリアルの文献情報の収集・整理を行った。
結果と考察
MWCNTのキャラクタリゼーションについては凝集状態や表面の微細構造の解析の必要性が示唆された。MWCNTの気管内投与では、肺に沈着したMWCNTは肝臓、腎臓、脳などの遠隔臓器に除々に移行すること、肺のマイクロアレイ解析の結果、炎症、酸化的ストレス等に関与する遺伝子発現が増加すること、中期発がん試験の結果、DHPN処理による肺の腫瘍発生を修飾する作用がないことが明らかになった。また、ナノマテリアルを取扱う労働現場での作業者への暴露の可能性は少ないと考えられた。酸化チタンの気管内投与では、肺の炎症を引き起こすこと及び肺内のマクロファージに長期間留まることが示された。MWCNT用吸入暴露装置については、音響式の発生器とディスポーザブル暴露チャンバーが完成し、吸入暴露システムを構築した。MWCNTは培養細胞で形質転換を誘発するが、gpt delta ラットでは肺に突然変異誘発性は認められなかった。また、炭素系ナノマテリアル及び金属系ナノマテリアル等の暴露情報、特に吸入暴露に関する情報を収集・整理した。
結論
以上の研究成果は、ナノマテリアルによるヒトの健康への影響の評価手法の確立と機序の解明に資することができる。
公開日・更新日
公開日
2011-05-20
更新日
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