摂食・嚥下障害の機能改善のための補助具に関する総合的な研究

文献情報

文献番号
201025003A
報告書区分
総括
研究課題名
摂食・嚥下障害の機能改善のための補助具に関する総合的な研究
課題番号
H20-長寿・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
植田 耕一郎(日本大学歯学部 摂食機能療法学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 向井 美惠(昭和大学歯学部 口腔衛生学教室)
  • 森田 学(岡山大学大学院 医歯薬学研究科 予防歯科学)
  • 菊谷 武(日本歯科大学附属病院 口腔介護・リハビリテーションセンター 大学院生命歯学研究科 臨床口腔機能学)
  • 戸原 玄(日本大学歯学部 摂食機能療法学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
6,175,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
構音障害に対する機能改善のための補助具として軟口蓋挙上装置(PLP; Palatal Lift Prosthesis)が臨床応用されているが、現在のところ本装置の適応は、口腔癌術後など口腔器官の形態障害に限られている。実際には、他の疾患や、摂食・嚥下障害に対しても補助具としての役割を果たせる場合のあることを臨床上経験する。そこで、今回はPLPの適応性の把握と有効性の検討を行った。
研究方法
協力施設53か所に調査票を発送し、補助具適応患者の把握と評価、さらに、従来の摂食機能訓練にあわせて補助具装着による介入群と機能訓練のみのコントロール群の効果を、初回評価および初回評価から補助具装着または機能訓練の期間を経てからの評価において比較した。
結果と考察
PLP適応の把握に最も有効な因子は、軟口蓋と舌の運動障害や嚥下反射障害や構音障害といった病態であると思われた。構音に関する診査では、開鼻声が臨床上導入しやすい診査であり実用的である。摂食・嚥下機能においては、フードテスト、RSST、改訂水飲みテストで誤嚥の疑いをもつ者が3から4割におよび、VFやVEでも食塊等の咽頭部残留ないし誤嚥を認めた者は5割近くに達した。それら患者は、平成21年度本研究事業のPAP適応者に比較すると、摂食・嚥下機能において比較的リスクの高い咽頭相障害も併発していることが示唆された。介入群とコントロール群の比較検証では、構音障害に対して、PLPの装着は即時的効果を発揮し、摂食・嚥下障害に対しては、装着後6か月以上経過した場合に、VFやVE検査により「喉頭蓋谷あるいは梨状窩」における多量残留が著しく減少したことが確認された。さらに軟口蓋挙上不全をともなう構音障害は比較的容易に診断が可能なので、早期のうちにPLPの装着を実現させ、その後、摂食・嚥下障害に関する診断・評価を継続的に実施し、6か月を目途に効果検証を行う。以上の臨床上の工程が歯科医療従事者にとって一つの道筋であろうと思われた。
結論
PLP適応の把握に最も有効な因子は病態であり、PLPは構音障害の補助装置に加え、摂食・嚥下障害に対する機能改善のための訓練用装置であるとの期待がもてた。適応者の選定等に関して術者間の温度差が感じられたことから、今後は、歯科医師がPLPを応用する際の診断、手技、評価等の体系作りが必要であると思われた。

公開日・更新日

公開日
2011-08-10
更新日
-

文献情報

文献番号
201025003B
報告書区分
総合
研究課題名
摂食・嚥下障害の機能改善のための補助具に関する総合的な研究
課題番号
H20-長寿・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
植田 耕一郎(日本大学歯学部 摂食機能療法学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 向井 美惠(昭和大学歯学部 口腔衛生学教室)
  • 森田 学(岡山大学大学院 医歯薬学研究科 予防歯科学)
  • 菊谷 武(日本歯科大学附属病院 口腔介護・リハビリテーションセンター 大学院生命歯学研究科 臨床口腔機能学)
  • 相田 潤(東北大学大学院 歯学研究科 国際歯科保健学分野)
  • 戸原 玄(日本大学歯学部 摂食機能療法学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
摂食・嚥下障害の機能改善を目的とした義歯型補助具の使用状況等の実態および補助具適応患者の把握、補助具の有効性の検証をし、摂食・嚥下障害の改善に寄与するために3カ年の調査研究を行った。
研究方法
平成20年度は、全国歯科診療所3,000カ所、歯学部付属病院29カ所、病院内歯科500カ所、都内高齢者施設5カ所を対象に、補助具使用の実態と適応患者を把握するために調査を実施した。平成21年度は、協力医療機関39施設において、補助具の中で最も臨床応用頻度の高かった舌接触補助床(PAP;Palatal Augmentation Prosthesis)の「有効性」について検討した。摂食機能訓練及び補助具装着による介入群と、摂食機能訓練のみ施した補助具の非介入群(コントロール群)とで、前向き調査(RCT)にて比較検討を行った。平成22年度は、構音障害に対する補助具として臨床応用されている軟口蓋挙上装置(PLP;Palatal Lift Prosthesis)の適応症の把握と、摂食・嚥下障害に対する有効性について補助具装着による介入群と機能訓練のみのコントロール群とで比較、検討を行った。
結果と考察
平成20年度調査回収率は全体で48.0%であり、補助具使用は、病院歯科で34.3%、歯科診療所では全体の3.0%であった。歯科診療所で補助具作成はあまり行われていない理由は、「費用弁償がないので作成できない」「補助具に関心がない」が上位であった。補助具適応対象について、舌運動不良、軟口蓋挙上不良といった「病態」が対象者の把握に有効であった。さらに臨床的推計を行った結果、補助具が適応とされる患者は年間16,368例であり、それに対して約10,000例に補助具が利用されていなかった。歯科医療が独自に行える摂食・嚥下障害患者への対応手技として無視し得る数ではないと思われた。
PAPの有効性については、補助具装着後2週間という短期間で、口腔相および咽頭相領域の障害について効果のあることが証明された。
PLPにおいて、本装置は本来開鼻声を主徴候とする構音障害への補助具として臨床応用されているが、装着6か月以上になると摂食・嚥下障害に対する機能改善のための補助具あるいは訓練用装置であるとの期待がもてた。
結論
義歯型補助具の普及については、補助具作製以前に、摂食・嚥下リハビリテーションの普及、啓発が先決であろうと思われた。PAP、PLP等の補助具は、誤嚥性肺炎の予防や経口摂取の維持・増進、食生活を通じて活力ある超高齢化社会の実現に少なからず寄与するものと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2011-08-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201025003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
義歯型補助具の普及性についての全国調査を行い適応患者16,368例が存在するにもかかわらず10,000例に応用されていいことを推測した。また舌接触補助床(PAP)と軟口蓋挙上装置(PLP)の有効性について、装置装着群(介入群)と機能訓練のみ群(コントロール群)とをRCTにて有効性の立証をした。
臨床的観点からの成果
舌接触補助床(PAP)は、装着後2週間という短期間で、口腔相および咽頭相領域の障害について効果のあることが証明された。また軟口蓋挙上装置(PLP)は、装着6か月以上のスパンで、構音障害への補助装置としての扱い以外に、摂食・嚥下障害に対しうる機能改善のための補助具ならびに訓練用装置であるとの期待がもてた。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
舌接触補助床(PAP)は平成22年度医療報酬改訂の際に、医療保険導入された。
その他のインパクト
読売新聞(2011年3月24日発行)9面「食事・発声・口の動き改善」

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
植田耕一郎,向井美惠,森田学,etal.
摂食・嚥下障害に対する機能改善のための義歯型補助具の普及性
老年歯科医学 , 25 (2) , 123-130  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201025003Z