文献情報
文献番号
202525001A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノマテリアルを含む化学物質の短期吸入曝露等による免疫毒性評価手法開発のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KD1001
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
足利 太可雄(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター ゲノム安全科学部)
研究分担者(所属機関)
- 高橋 祐次(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部・動物管理室)
- 善本 隆之(東京医科大学 医学総合研究所 免疫制御研究部門)
- 石丸 直澄(東京科学大学大学院医歯学総合研究科)
- 飯島 一智(横浜国立大学 大学院工学研究院機能の創生部門)
- 黒田 悦史(兵庫医科大学 医学部免疫学講座)
- 渡辺 渡(九州医療科学大学 生命医科学部)
- 大野 彰子(国立医薬品食品衛生研究所 ゲノム安全科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
18,590,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
現在のOECDガイドラインであるin vivo吸入曝露試験は多大な費用と時間が課題とされており、毒性発現機構に基づいた効率的で精度の高いin vitro試験法の開発が強く望まれている。特に化学物質の呼吸器感作については、未だ行政が受け入れ可能な試験法が開発されておらず、またナノマテリアル(NM)については、従来のin vivo吸入曝露試験のみでは毒性評価が十分に行えない状況にある。そこで本研究班では、短期吸入曝露されたNMを含む化学物質の免疫毒性評価手法の開発と将来的なOECDガイドライン化を目指すための基盤的知見の収集を目的とする。
研究方法
呼吸器感作性試験法の開発では、BEAS-2BとCD14-MLからIL-4で分化誘導した未成熟DCを用いて3次元培養を48時間行い、その後、BEAS-2Bのscaffoldを上側に、未成熟DCのscaffoldを下側にして重ねて共培養系を作成し、参照物質処理下においてRT-qPCRで指標分子のmRNA発現量を定量した。NMのin vitro抗原提示細胞活性化試験法の開発および活性化メカニズムの解明については、THP-1細胞に各濃度のNM分散液を曝露し、各遺伝子の発現量、ROSの関与などを解析した。さらに肺胞マクロファージに可能な限り近いHiTRAMおよびその前駆段階細胞を用い、NM分散液処理下における各遺伝子の発現量を測定した。In vivo吸入曝露実験方法の開発と免疫毒性解析については、Taquann処理を施したNMをマウスに暴露し、BALFの免疫機能を解析した。NMのin silicoによる特性解析については、物理化学的性状(物性)および毒性評価結果について、既存の評価文書(Dossier)に加え、新規試験データや当研究班の実測データを収集・整理し解析に供した。
結果と考察
ヒト肺胞マクロファージのシングルセルRNAシーケンス解析を行い、細胞群の不均一性とそれを定義づける種々の遺伝子群を明らかにすることができた。またこれまでに皮膚感作性と呼吸器感作性を識別するバイオマーカーとしてTNFSF4 (OX40L) を見出してきたが、新たに9遺伝子を新たなバイオマーカー候補として見出した。なお本研究班の成果である開発中の試験法は、OECDにおいてin vitro呼吸器感作性試験法開発を目的として作成されたDetailed Review Paper (DRP)に、テストガイドラインの有力候補として収載された。THP-1細胞を用い、細胞内取り込みやROSの関与を中心にメカニズムの解明を進めるとともに、バイオ―マーカーの探索を行い、IL1A遺伝子が利用できる可能性を示した。さらに、THP-1細胞と比べよりヒト肺胞マクロファージに近いiPS細胞由来のHiTRAM細胞においてNMによる活性化が検出でき、今後本細胞を用いたin vitro試験法開発が可能になったと考える。In vivo吸入曝露研究では、Scavenger receptorの一つであるMARCOのmRNA発現が濃度依存的に増加していたことから、今後in vitro試験法開発におけるバイオマーカー候補になりうると考えられた。また、BALF中のCCL5のED150値を指標としてナノシリカの感染影響を差別化できた。この順位はTHP-1細胞活性化能と一致したことから、抗原提示細胞の活性化を指標とするin vitro試験法開発の根拠になりうると考えられた。さらに、in silico解析により、BALF中のCCL5発現を亢進するナノシリカほど粒子径が小さく、不純物による表面被覆が少なく、かつ多孔質ではないソリッドな構造を持つことが示唆された。
結論
生物学的妥当性に裏付けられた、吸入曝露によるNMを含む化学物質のin vitro免疫毒性評価手法の開発および国際標準化に向け、着実な進展が得られたと考える。
公開日・更新日
公開日
2026-06-03
更新日
-