文献情報
文献番号
201024045A
報告書区分
総括
研究課題名
筋萎縮性側索硬化症の病態に基づく画期的治療法の開発
課題番号
H20-難治・一般-045
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 元(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 岡野 栄之(慶應義塾大学医学部生理学)
- 郭 伸(東京大学大学院医学系研究科)
- 高橋 良輔(京都大学大学院医学系研究科)
- 田中 啓二((財)東京都医学研究機構 東京都臨床医学総合研究所)
- 中野 今治(自治医科大学内科学講座神経内科学部門)
- 青木 正志(東北大学大学院医学系研究科)
- 船越 洋(大阪大学大学院医学系研究科)
- 漆谷 真(滋賀医科大学分子神経科学研究センター)
- 長谷川成人((財)東京都医学研究機構東京都精神医学総合研究所)
- 山中 宏二(理化学研究所脳科学総合研究センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
33,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態に基づく画期的治療法の開発に向けて、ALSの病態を担う病態関連分子を探索・同定・解析し、これを基に有効な分子標的治療を開発することである。
研究方法
1.病態に関連する新規標的分子の探索同定による病態解明、2.新規治療法・治療手段の開発、3.孤発性ALS新規疾患モデルの開発の三者の研究を分担研究者、研究協力者間の共同研究、情報交換に基づき有機的に結合させることで研究を推進した。
結果と考察
疾患感受性遺伝子探索の分野ではisopentenyl diphosphate isomeraseを同定した。グリア・免疫病態の役割解明の分野では、BAFFシグナル、自然免疫経路の重要性を明らかにした。TDP-43の役割解明と疾患モデル開発の分野では、TDP-43の翻訳後修飾が酸化ストレスでも生じうること、TDP-43凝集体が細胞の増殖阻害や転写制御異常を起こすことを明らかにし、さらに野生型TDP-43過剰発現による孤発性ALSモデルラット作製を行った。治療法開発へ向けた新規病態解明の分野では、SOD1の結晶X線構造解析、ミトコンドリアの品質管理経路の解明、神経細胞の突起伸長に係わるTRIMENの機能解析などを行った。孤発性ALS疾患モデルの開発の分野では、TDP-43の変化がRNA編集異常の下流の変化であることを明らかにした。治療に向けたデリバリーシステム開発の分野では、AAVベクターの血管内投与により治療用遺伝子を乏突起膠細胞へ導入する方法を開発し、骨格筋に接種したポリオウイルスベクターを中枢神経系で発現させることに成功した。治療開発分野では、変異SOD1の転写を抑制する低分子化合物および既存薬Xを同定しin vivoでの効果確認を行った。また、新規経口治療薬として、キサンチン酸化還元(XOR)酵素阻害作用を有しかつプリンサルベージ回路の基質とならない化合物のマウスにおける効果を確認した。さらに血管新生・保護因子、骨髄移植と顆粒球コロニー刺激因子GCSF投与の併用療法も有効であることが明らかとなった。また、患者皮膚からのiPS細胞樹立と運動ニューロンへの誘導に成功し、変異SOD1マウスに対する野生型アポワクチン効果の作用機序解明などを推進した。
結論
本研究によって、TDP-43やグリア・免疫の病態への役割が明らかになりつつある。また、新規治療法開発へ向けてのALSの病態解明がさらに進み、新たな分子標的が次々と明らかになった。さらに、低分子化合物による治療、遺伝子治療、再生治療、免疫治療についても研究は順調に進捗した。
公開日・更新日
公開日
2011-12-27
更新日
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