プロスタグランジン-I2合成酵素遺伝子を用いた肺動脈性肺高血圧症に対する新規治療法の開発

文献情報

文献番号
201024043A
報告書区分
総括
研究課題名
プロスタグランジン-I2合成酵素遺伝子を用いた肺動脈性肺高血圧症に対する新規治療法の開発
課題番号
H20-難治・一般-043
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
福田 恵一(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 川上 崇史(慶応義塾大学 医学部)
  • 片岡 雅晴(慶応義塾大学 医学部)
  • 山本 美智子(慶応義塾大学 医学部)
  • 田邉 忠(慶応義塾大学 医学部)
  • 佐藤 徹(杏林大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肺動脈性肺高血圧症(以下、肺高血圧症)は若年女性を中心に発症する予後不良の疾患である。肺高血圧症に対して現在予後改善が実証されている最も強力な治療薬はPGI2であるが、鎖骨下静脈からの持続静注療法によるため、患者のQOLは著しく制限されている。本研究の目的は申請者らが特許を有するPGISを既にヒトに臨床応用され安全性が確立されているアデノ随伴ウイルスベクターに組み込み、これを用いて肺高血圧症を治療しようというものである。
研究方法
GMPレベルで大量生産したアデノ随伴ウイルス(AAV)を用いたプロスタグランジンI2合成酵素(PGIS)の遺伝子治療ベクター(AAV-PGIS)を用いて小動物と犬で安全性試験を行った。AAVベクターは1型と2型を用意し、マウスを用いてベクターの作成効率、安全性・有効性を比較検討した。また、ベクターの安全性試験を行った。前臨床試験として使用するコモンマーモセットサルの肺動脈性肺高血圧症モデルを作出した。また、AAV-PGISベクターの安全性試験および品質検査試験を施行し、臨床応用へ向けてのベクターの安全性を確認した。
結果と考察
タイプ1型と2型のウイルスベクターの肺高血圧症に対する治療効果の検討し、有意に改善を認め、両群間では有意差は認めなかった。サルを用いた肺動脈性肺高血圧症モデルを作成した。安全性試験ではマウスを用いた筋注及び静注による急性毒性試験において、全ての動物で特記すべき異常は無かった。筋注による中枢神経系への作用を検査する試験において、薬剤に起因する異常は見られなかった。犬を用いた筋注による一般薬理試験/循環呼吸器への作用を検査する試験において、薬剤に起因する異常は見られなかった。AAV-PGISの品質検査試験を施行した。無菌試験にて製剤の無菌性を確認した。エンドトキシン試験において基準に適合することを確認した。BSA含有量を測定し、問題が無いことを確認した。
結論
タイプ1型と2型の両者のベクターでの治療効果を検討し、肺高血圧症モデルマウスを用いた検討において、両群間では治療効果に有意差が無いことを確認した。GMPレベルのAAVベクターをタイプ2型AAVにて作出した。タイプ2型AAVウイルスベクターの安全性試験および品質検査試験を実施し、安全性と品質性を確認することができた。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-02-15
更新日
-

文献情報

文献番号
201024043B
報告書区分
総合
研究課題名
プロスタグランジン-I2合成酵素遺伝子を用いた肺動脈性肺高血圧症に対する新規治療法の開発
課題番号
H20-難治・一般-043
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
福田 恵一(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 川上 崇史(慶応義塾大学 医学部)
  • 片岡 雅晴(慶応義塾大学 医学部)
  • 山本 美智子(慶応義塾大学 医学部)
  • 田邉 忠(慶応義塾大学 医学部)
  • 佐藤 徹(杏林大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肺動脈性肺高血圧症(以下、肺高血圧症)は若年女性を中心に発症する予後不良の疾患である。肺高血圧症に対して現在予後改善が実証されている最も強力な治療薬はPGI2であるが、鎖骨下静脈からの持続静注療法によるため、患者のQOLは著しく制限されている。本研究の目的は申請者らが特許を有するプロスタグランジンI2合成酵素(PGIS)を既にヒトに臨床応用され安全性が確立されているアデノ随伴ウイルスベクターに組み込み、共同研究企業ディナベック社とGMPレベルのAAV-PGISを作製し、肺高血圧症を治療しようというものである。
研究方法
AAVベクターは1型と2型を用意し、マウスを用いてベクターの作成効率、安全性・有効性を比較検討し、GMPレベルで大量生産したアデノ随伴ウイルス(AAV)を用いたPGISの遺伝子治療ベクター(AAV-PGIS)を用いて小動物と犬で安全性試験を行った。マウスを用いてベクターの作成効率、安全性・有効性を比較検討した。また、ベクターの安全性試験を行った。前臨床試験として使用するコモンマーモセットサルの肺動脈性肺高血圧症モデルを作出した。また、AAV-PGISベクターの安全性試験および品質検査試験を施行し、臨床応用へ向けてのベクターの安全性を確認した。
結果と考察
タイプ1型と2型ベクターの肺高血圧症に対する治療効果は、対照群に比して有意に改善を認め、両群間では差はなかった。安全性試験ではマウスを用いた筋注及び静注による急性毒性試験において、全ての動物で特記すべき異常は無かった。筋注による中枢神経系への作用を検査する試験において、薬剤に起因する異常は見られなかった。犬を用いた筋注による一般薬理試験/循環呼吸器への作用を検査する試験において、薬剤に起因する異常は見られなかった。AAV-PGISの品質検査試験を施行した。無菌試験にて製剤の無菌性を確認した。エンドトキシン試験において基準に適合することを確認した。BSA含有量を測定し、問題が無いことを確認した。
結論
タイプ1型と2型の両者のベクターでの治療効果を検討し、肺高血圧症モデルマウスを用いた検討において、両群間では治療効果に有意差が無いことを確認した。GMPレベルのAAVベクターをタイプ2型AAVにて作出した。タイプ2型AAVウイルスベクターの安全性試験および品質検査試験を実施し、安全性と品質性を確認することができた。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-02-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024043C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は我が国で遺伝子単離された生理活性脂質プロスタグランジンI2(PGI2)の合成酵素遺伝子を既に臨床応用され安全性が担保されている遺伝子治療ベクター(2型アデノ関連ウイルス)に搭載する遺伝子治療ベクターを作製し、小動物・大型動物で有効性・安全性を評価したものである。PGI2の持続投与は人間でも肺高血圧症に対し有効性が確認され、動物実験では本治療法により生命予後を明らかに改善することが示すことが出来ており、学術的・専門的にも高い評価が与えられる。
臨床的観点からの成果
PGI2は重症の原発性肺動脈高血圧症(PAH)に有効な唯一の薬剤である。しかし、PGI2は皮下トンネルを介した持続注入療法以外には投与法がなく、美容上の問題、挿入部の感染、カテーテルの断線、機械の故障等多くの問題を抱えている。PAHは若年女性に発症することを勘案すると、従来の治療法には多くの問題があり、新規治療法が求められている。本治療法は患者のQOLを大きく変えうる優れた治療法である。
ガイドライン等の開発
本研究は肺動脈性高血圧症の新規治療法の開発に関わる研究であり、診断・治療等のガイドライン等の開発に関わるものではない。
その他行政的観点からの成果
本治療法は欠損あるいは遺伝子変異のために機能消失した蛋白質の遺伝子を補充するものではないため、発現蛋白に対する拒絶反応がない遺伝子治療法である。また、細胞増殖因子等の補充療法ではないため、発癌や癌細胞の増殖を惹起するものではないため、安全に行うことが出来る。また、酵素の生成物のPGI2は大量持続注入されており、安全性は担保されている。遺伝子治療としては理想的なものである。
その他のインパクト
平成20年9月12日付けの日経産業新聞に『慶大など遺伝子治療3年後の臨床目指す 肺動脈性高血圧症』等と報道された。DNAVEC社と共同開発により、肺動脈高血圧症の新規治療法として大きく期待されていることが取り上げられた。また、アンジェス社と共同で医師主導臨床治験を計画中でPMDAと折衝中である。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
65件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
48件
学会発表(国際学会等)
25件
その他成果(特許の出願)
6件
「出願」「取得」計6件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2015-05-21

収支報告書

文献番号
201024043Z