難治性疾患の医療費構造に関する研究

文献情報

文献番号
201024042A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性疾患の医療費構造に関する研究
課題番号
H20-難治・一般-042
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
荻野 美恵子(北里大学 医学部 神経内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 荒井 耕(一橋大学 商学研究科 会計講座)
  • 渡辺 守(東京医科歯科大学 消化器内科)
  • 川合 眞一(東邦大学 医学部 内科学講座 (大森)膠原病科)
  • 鈴木 則宏(慶應義塾大学 医学部 神経内科)
  • 頼高 朝子(順天堂大学 医学部 神経学講座神経内科)
  • 中島 孝(独立行政法人国立病院機構新潟病院 神経内科学)
  • 美原 盤((財)脳血管研究所附属美原記念病院 神経内科)
  • 伊藤 道哉(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 伏見 清秀(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 医療政策学講座医療情報システム学)
  • 川島 孝一郎(仙台往診クリニック 診療部)
  • 西澤 正豊(新潟大学脳研究所 臨床神経科学部門 神経内科学分野)
  • 山下 和彦(東京医療保健大学 医療保健学部 )
  • 渋谷 明隆(北里大学 医学部 医療安全管理学 研究部門)
  • 森實 敏夫(国際医療福祉大学 塩谷病院 内科)
  • 小野沢 滋(医療法人鉄蕉会亀田総合病院 地域医療支援部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
42,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本は難治性疾患患者に対し世界に類を見ない独特の制度を制定し、援助してきた。しかし、国家財政難により社会保障費が潤沢でないなかで特定疾患治療研究事業の公費負担制度のあり方に研究が必要となっている。本研究は特定疾患治療研究事業のうち、患者にかかる医療費に関する分析的研究を行い、本事業が患者の生活にどのように反映されているのかをも分析することにより、患者支援における医療費の公費負担制度のあり方を検討する資料となることを目的とする。
研究方法
1.連結不可能匿名化された社会保険診療報酬支払基金および国民健康保険中央会から保険者のレセプトデータを入手し、解析を行う。2.連結可能匿名化とした各研究協力機関から提出されたレセプトデータを委託業者にて収集し解析する全体調査を行う。3.患者ベースの個別調査を行う。4.生涯医療費の推計を行う。
結果と考察
難治性疾患の医療費構造分析においてレセプトデータから分析する方法論はほぼ確立したと思われる。疾患単位の医療費構造や患者個別調査については研究分担者の研究としてすすめた。今年度は主に支払基金データの分析となった。前年度までのデータに加えてより大きなデータを確保できたため、特定疾患治療研究事業対策疾患についてはより詳細な分析ができた。特定の疾患では年齢や性別といった患者属性や都道府県の地域差等について興味深い傾向がある可能性がわかった。具体的な医療費構造が疾患ごとに明らかとなり、今後の制度設計にどの程度変化するかを予測する基礎資料が確保できた。しかし、人口構成や診療報酬改定、治療法の変遷により、データそのものが変化していくため、継続的な分析が必要である。
結論
難治性疾患における医療費構造研究は今後の医療政策を考える上で重要であり、偏りのない実際に役立つ解析を行う必要がある。今後さらにデータ収集を重ね、継続的な解析が重要である。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

文献情報

文献番号
201024042B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性疾患の医療費構造に関する研究
課題番号
H20-難治・一般-042
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
荻野 美恵子(北里大学 医学部 神経内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 荒井 耕(一橋大学大学院商学研究科)
  • 松田 晋哉(産業医科大学公衆衛生学教室)
  • 伏見 清秀(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科医療情報システム学分野)
  • 山下 和彦(東京医療保健大学医療保健学部医療情報学科)
  • 伊藤 道哉(東北大学大学院医学研究科医療管理学分野)
  • 森實 敏夫(国際医療福祉大学塩谷病院内科)
  • 西澤 正豊(新潟大学脳研究所臨床神経科学部門神経内科学分野)
  • 中島 孝(独立行政法人国立病院機構新潟病院)
  • 小野沢 滋(医療法人鉄蕉会亀田総合病院地域医療支援部)
  • 川島 孝一郎(仙台往診クリニック診療部)
  • 渡辺 守(東京医科歯科大学消化器内科)
  • 渋谷 明隆(北里大学医学部医療安全・管理学)
  • 川合 眞一(東邦大学医学部内科学講座(大森)膠原病科)
  • 鈴木 則宏(慶應義塾大学医学部神経内科)
  • 頼高 朝子(順天堂大学附属順天堂医院脳神経内科)
  • 服部 信孝(順天堂大学附属順天堂医院脳神経内科)
  • 美原 盤((財)脳血管研究所附属美原記念病院神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本は難治性疾患患者に対し世界に類を見ない独特の制度を制定し、援助してきた。社会保障費が逼迫するなかで特定疾患治療研究事業の公費負担制度のあり方に研究が必要となっている。特定疾患治療研究事業のうち、患者にかかる医療費に関する分析的研究を行い、本事業が患者の生活にどのように反映されているのかをも分析することにより、患者支援における医療費の公費負担制度のあり方を検討する資料となることを目的とする。
研究方法
1.連結不可能匿名化された社会保険診療報酬支払基金および国民健康保険中央会の保険者からのレセプトデータによる解析を行う。2.連結可能匿名化とした各研究協力機関から提出されたレセプトデータを委託業者にて収集し解析、全体調査を行う。3.患者ベースの個別調査を行う。4.生涯医療費の推計を行う。
結果と考察
開始年度に本研究の意義と影響を議論し、日々難治性疾患の診療にあたっている研究者が中心となって研究に取り組み、より実態を反映することができた。具体的な医療費構造が疾患毎に明らかとなり、今後の制度設計によりどの程度変化するかを予測する基礎資料が確保できたことになる。しかし、人口構成や診療報酬改定、治療法の変遷により、データは変化していくため継続的な分析が必要である。本研究でレセプトデータから分析する方法論はほぼ確立し、今後の継続した分析においても活用できるものとなった。より詳細かつ正確な分析をするための解決すべき問題点も明らかになった。これらの手法を用いることで単に医療費構造の分析のみならず、DPC分析と同様に医療の質の評価や医療政策上の資料にも用いることができる。当初の計画としては制度設計の具体的な政策提案し、シミュレーションを行い検証するところまでを考慮にいれていたが、3年間ではそこまではできなかった。今後、項目が不足していた国保データ充実と、社保・国保の通年データ化を行い、診断確実例に絞った協力施設からのレセプトデータも参考として、この研究で明らかになった点や試行的に取り組んだ推計モデル等についての検証と精緻化を進めることによって、更なる医療費構造分析が可能になると思われる。結果、より洗練され効率的な難病の医療提供と公的医療制度の設計に貢献できると考える。
結論
難治性疾患に対する制度設計が国民にとって公平なものであることを根拠を持って示すことが重要である。難治性疾患における医療費構造研究は重要であり、偏りのない実際に役立つ解析を行う必要がある。本研究により現状認識できるだけのデータを提供し、方法論を確立したため、今後さらにデータ収集を重ね、継続的な解析が重要である。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024042C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本で初めて特定疾患の医療費構造分析を行い、保険者電子レセプトから解析する方法論を確立した。国全体の特定疾患のレセプト件数、患者数、医療費ヒストグラム、請求額格差、所得・保険区分からみた患者構成、受給者証保持者における受診割合、受療動向・診療動向、都道府県格差、診療行為別医療費割合、保険者別、経過年数別解析など行った。国保はパーキンソン病、ALS、多系統萎縮症が社保ではクローン病、潰瘍性大腸炎、SLEが医療費の上位をしめた。医療費構造は疾患毎に異なるが長期に渡り負担があることが難病の特徴である。
臨床的観点からの成果
本研究により疾患別にどのような内容に医療費がかかっているのかが明らかになり、全国の診療内容の傾向も分析できるようになった。今後新規治療法が次々と開発されるなかで医療費の実態を把握することは臨床家としても重要である。主治医として患者のQOLを考えるためにも医療費を含め社会保障がどのように生活を支えているか知る必要がある。また、特定疾患は長期間の治療が必要となることが多いため生涯医療費の視点をもつことが重要である。今回の分析で地域差や性差がある疾患もあり、要因につき学問的に分析する必要がある。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
平成21年10月に新たに11特定疾患が認定されるにあたり予想医療費の推計に寄与した。高額療養費制度改訂案ついても改訂後の影響につき推計に資することができた。今後も制度設計をする際の医療費への影響予測するのに役立つデータである。本研究にて特定疾患患者は低所得者層が多いことが明らかとなり、個別調査では医療費のみならず、介護給付や障害者自立支援法、自費負担、QOLまで解析したことにより、社会保障全体から特定疾患を捉える必要性や、世代間負担に関しても考慮すべきであることを示唆した研究結果となった。
その他のインパクト
現在のところなし。医療費分析結果については今後報告する機会が増えると思われる。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
内田智久,相澤勝健,美原盤他
筋萎縮性側索硬化症患者における療養形態別の経済的自己負担
神経治療学 , 28 (1) , 83-87  (2011)
原著論文2
森實敏夫
Rを用いたシミュレーションによるサンプルサイズの算出
あいみっく , 31 (1) , 10-14  (2010)
原著論文3
Akitaka Shibuya,Keiko Hanai,Yumi Arai et al.
The cost of adverse events in hospitalized patients
The Kitasato Medical Journal , 39 (2) , 165-170  (2009)
原著論文4
渋谷明隆,小林弘祐
DPCデータ分析からみた北里大学4病院の位置づけ
北里医学 , 39 (2) , 117-127  (2009)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024042Z