乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験

文献情報

文献番号
201019061A
報告書区分
総括
研究課題名
乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験
課題番号
H18-第3次対がん総合戦略・戦略-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大内 憲明(東北大学大学院 医学系研究科 腫瘍外科学分野(東北大学病院 乳腺内分泌外科))
研究分担者(所属機関)
  • 東野 英利子(筑波大学大学院 人間総合科学研究科 放射線医学)
  • 福田 護(聖マリアンナ医科大学 附属研究所 乳腺外科)
  • 祖父江 友孝(国立がん研究センター がん対策情報センター )
  • 斎藤 博(国立がん研究センター がん予防・検診センター 消化器病学)
  • 山本 精一郎(国立がん研究センター がん対策情報センター 生物統計学)
  • 遠藤 登喜子(国立病院機構 名古屋医療センター 放射線科)
  • 高田 悦雄(独協医科大学 光学医療センター)
  • 笠原 善郎(福井県済生会病院 外科)
  • 渋谷 大助(宮城県対がん協会 がん検診センター 消化器病学)
  • 石田 孝宣(東北大学大学院 医学系研究科 腫瘍外科学)
  • 中島 一毅(川崎医科大学附属病院 乳腺甲状腺外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
201,720,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 マンモグラフィによる乳がん検診の死亡率減少効果は50歳以上に限定的である。本研究では、40歳代女性を対象に、超音波による検診の標準化を図った上で、マンモグラフィに超音波を併用する(介入)群と併用しない(非介入)群との間でランダム化比較試験(RCT)を行い、2群間で検診精度と有効性を検証する。プライマリ・エンドポイントを感度・特異度とし、セカンダリ・エンドポイントを累積進行乳がん罹患率とする。
研究方法
 1)超音波乳がん検診の標準化のためのガイドラインを作成し、検診を行う医師、技師に対して乳房超音波講習会を開催し、精度管理を行う。2)有効性を検証するために、40歳から49歳女性を対象に、 超音波検診を併用する群(介入群)、超音波検診を併用しない群(非介入群)の2群間でランダム化比較試験(RCT)を実施する。研究参加団体は全国23都道府県の42団体である。
結果と考察
 1)超音波乳がん検診の標準化と普及:標準化のためのガイドラインを策定し、乳房超音波講習会を全国で9回開催して教育研修を行った。年間受講者数は医師244名、技師287名であった。平成22年度までの通算受講者数は医師1,791名、技師2,084名となる。2)ランダム化比較試験:平成22年度は9,246人の新規登録者を得て、平成19年度からの累積登録者数は76,083人に達した。また、平成20年度初回受診者28,802人のうち、2年後2回目受診者は21,446名(74.5%)となった。二回目受診を行ったものは平成19年と20年の受診者合計37,128人のうち27,707人(74.6%)であった。わが国のみならず国際的にも臨床試験(RCT)で登録者数が8万人に迫る例はなく、二回目受診率も高いといえる。今後は追跡を行い発見がん、中間期がん、並びに病理組織学的結果の把握を行う。
結論
 超音波による乳がん検診の標準化に関して、ガイドラインに沿った超音波講習会の総受講者数は医師、技師ともに1,700名を超えたことから、第一の目的である超音波による乳がん検診の標準化に大きな成果があったといえる。第二の目的であるRCTによる有効性の検証に関して、平成19年度後半から平成22年度までの3.5年間で約8万人の新規登録者を達成できたことは、わが国でも大規模RCTによる臨床試験が可能であることを示した。戦略研究としての研究期間は終了し、今後は指定研究へと移行する。がん対策のための戦略研究として企画された本研究が確実にアウトカムを達成するには、今後の追跡が重要なテーマとなる。引続き研究の推進を図り、成果を普及・活用し、発展させるよう務めなければならない。

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-

文献情報

文献番号
201019061B
報告書区分
総合
研究課題名
乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験
課題番号
H18-第3次対がん総合戦略・戦略-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大内 憲明(東北大学大学院 医学系研究科 腫瘍外科学分野(東北大学病院 乳腺内分泌外科))
研究分担者(所属機関)
  • 東野英利子(筑波大学大学院人間総合科学研究科・疾患制御医学専攻応用放射線医学分野 准教授)
  • 福田 護(聖マリアンナ医科大学附属研究所ブレスト&イメージングセンター センター長)
  • 祖父江友孝(国立がんセンター・がん対策情報センター・疫学 部長)
  • 斎藤 博(国立がんセンター・がん予防・検診センター・消化器病学 部長)
  • 山本精一郎(国立がんセンター・がん対策情報センター ・生物統計学 室長)
  • 遠藤登喜子(名古屋医療センター臨床研究センター高度診断研究部 部長)
  • 髙田 悦雄(獨協医科大学超音波センター 教授)
  • 笠原 善郎(福井県済生会病院・外科 部長)
  • 渋谷 大助(宮城県対がん協会・がん検診センター 所長)
  • 石田 孝宣(東北大学大学院医学系研究科・腫瘍外科 准教授)
  • 中島 一毅(川崎医科大学付属病院・乳腺甲状腺外科 講師)
  • 中島 護雄(東北大学大学院医学系研究科・腫瘍外科 助教)
  • 櫻井 遊(宮城県立がんセンター・乳腺科 医長)
  • 玉城研太朗(東北大学病院・乳腺・内分泌外科 医員)
  • 光山 昌珠(市立北九州医療センター・外科 院長)
  • 深尾 彰(山形大学大学院医学系研究科・公衆衛生学講座 教授)
  • 栗山 進一(東北大学大学院医学系研究科・環境遺伝医学総合研究センター・分子疫学分野 教授)
  • 鯉淵 幸生(独立行政法人国立病院機構・高崎総合医療センター乳腺外科 医長)
  • 片岡 健(広島大学大学院保健学研究科・成人健康学 教授)
  • 大崎 昭彦(埼玉医科大学国際医療センター・乳腺腫瘍科 准教授)
  • 池田由加利(北海道対がん協会・外科 医長)
  • 大野 真司(国立病院機構九州がんセンター・乳腺科 部長)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
マンモグラフィによる乳がん検診の死亡率減少効果は50歳以上に限定的である。本研究では、40歳代女性を対象に、超音波による検診の標準化を図った上で、マンモグラフィに超音波を併用する(介入)群と併用しない(非介入)群との間でランダム化比較試験(RCT)を行い、2群間で検診精度と有効性を検証する。プライマリ・エンドポイントを感度・特異度とし、セカンダリ・エンドポイントを累積進行乳がん罹患率とする。
研究方法
1)超音波乳がん検診の標準化のためのガイドラインを作成し、検診を行う医師、技師に対して乳房超音波講習会を開催し、精度管理を行う。2)有効性を検証するために、40歳から49歳女性を対象に、 超音波検診を併用する群(介入群)、超音波検診を併用しない群(非介入群)の2群間でランダム化比較試験(RCT)を実施する。研究参加団体は全国23都道府県の42団体である。
結果と考察
1)超音波乳がん検診の標準化と普及:標準化のためのガイドラインを策定し、乳房超音波講習会を全国で開催して教育研修を行った。平成22年度までの通算受講者数は医師1,814名、技師2,084名となった。2)ランダム化比較試験:平成19年度からの累積登録者数は76,158人に達した。また、二回目受診を行ったものは平成19年と20年の受診者合計37,128人のうち27,707人(74.6%)と通常の検診に比較して高いといえる。今後は追跡を行い発見がん、中間期がん、並びに病理組織学的結果の把握を行う。
結論
超音波による乳がん検診の標準化に関して、研究参加団体は全国に及び、ガイドラインに沿った超音波講習会の総受講者数は医師、技師ともに1,800名を超えたことから、第一の目的である超音波による乳がん検診の標準化に大きな成果があったといえる。第二の目的であるRCTによる有効性の検証に関して、平成19年度後半から平成22年度までの3.5年間で約8万人の新規登録者を達成できたことは、わが国でも大規模RCTによる臨床試験が可能であることを示した。国際的にも臨床試験(RCT)で登録者数が8万人に迫る例はない。戦略研究としての研究期間は終了し、今後は指定研究へと移行する。がん対策のための戦略研究として企画された本研究が確実にアウトカムを達成するには、今後の追跡が重要なテーマとなる。引続き研究の推進を図り、成果を普及・活用し、発展させるよう務めなければならない。

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201019061C

成果

専門的・学術的観点からの成果
超音波による乳がん検診の標準化に関して、研究参加団体は全国に及び、ガイドラインに沿った超音波講習会の総受講者数は医師、技師ともに1,800名を超えたことから大きな成果があったといえる。J-START精度管理・安全性評価委員会より「乳房用超音波検査に推奨される超音波画像診断装置について」を作成した。
臨床的観点からの成果
無作為化比較試験による有効性の検証に関して、平成19年度後半から平成22年度までの3.5年間で約8万人の新規登録者を達成できたことは、わが国でも大規模RCTによる臨床試験が可能であることを示している。国際的にも臨床試験(RCT)で登録者数が8万人に迫る例はない。さらに、二回目受診率も74.6%と通常の検診に比較して高い。
ガイドライン等の開発
超音波による乳がん検診ガイドラインの作成の結果を纏め平成18年に「超音波による乳がん検診ガイドラインVersion 1.0」を作成、Ver2.0、Ver2.1(平成19年)、Ver3.0、Ver3.1、Ver3.2(平成20年)、Ver4.0、Ver4.1、Ver4.2(平成21年)、Ver5.0、Ver5.1(平成22年)へと順に改良を重ねた。
その他行政的観点からの成果
平成16年3月の厚生労働省「がん検診に関する検討会」中間報告書において、乳がんの検診方法として、「マンモグラフィによる検診を原則とすること」とともに、「超音波による検診については、今後引き続き調査・研究を進める必要がある」とされた。本研究はその行政的観点からの要請に応える成果である。
その他のインパクト
AERA2010年2月18日「乳がんマンモ検診の限界米政府と学会が出した勧告の波紋」
毎日新聞2010年2月18日朝刊「乳がん検診 日本どうする」
NHK「あさイチ!」2010年11月22日「乳がん検診の話題」2010年12月20日「ちゃんと知りたい! 乳がん検診」

発表件数

原著論文(和文)
44件
原著論文(英文等)
84件
その他論文(和文)
27件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
115件
学会発表(国際学会等)
21件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kawai M, Kuriyama S, Ohuchi N et al.
Effect of screening mammography on breast cancer survival in comparison to other detection methods: a retrospective cohort study.
Cancer Science , 100 (8) , 1479-1484  (2009)
原著論文2
Kawai M, Minami Y, Ohuchi N et al.
Alcohol intake and breast cancer risk in Japanese women: The Miyagi Cohort Study.
Breast Cancer Res Treat  (2011)
原著論文3
Ohuchi N, Ishida T, Kawai M et al.
Randomized Controlled Trial on Effectiveness of Ultrasonography Screening for Breast Cancer in Women Aged 40-49 (J-START): Research Design.
Jpn J Clin Oncol , 41 (2) , 275-277  (2011)
原著論文4
Kawai M, Minami Y, Ohuchi N et al.
Adiposity, adult weight change and breast cancer risk in postmenopausal Japanese women: the Miyagi Cohort Study.
Br J Cancer , 103 (9) , 1443-1447  (2010)
原著論文5
Tohno E, Takahashi H, Ohuchi N et al.
Educational program and testing using images for the standardization of breast cancer screening by ultrasonography.
Breast Cancer  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201019061Z