難治性小児がんに対する組織的・包括的取り組みに基づく臨床的特性に関する分子情報の体系的解析と、その知見を活用した診断・治療法の開発

文献情報

文献番号
201019028A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性小児がんに対する組織的・包括的取り組みに基づく臨床的特性に関する分子情報の体系的解析と、その知見を活用した診断・治療法の開発
課題番号
H22-3次がん・一般-011
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
清河 信敬(独立行政法人 国立成育医療研究センター 研究所 小児血液・腫瘍研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 中澤 温子(中川 温子)(独立行政法人 国立成育医療研究センター 病院 病理診断部)
  • 森 鉄也(独立行政法人 国立成育医療研究センター 病院 内科系専門診療部 血液腫瘍科)
  • 大喜多 肇(独立行政法人 国立成育医療研究センター 研究所 小児血液・腫瘍研究部 )
  • 林 泰秀(群馬県立小児医療センター)
  • 鶴澤 正仁(愛知医科大学 小児科)
  • 小川 誠司(東京大学 医学部)
  • 大平 美紀(千葉県がんセンター 研究所 がんゲノムセンター)
  • 福島 敬(筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
22,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性小児がんの治療予後改善を通した保険・医療向上への貢献を目的に、臨床的特性に関する分子情報の網羅的体系的解析を組織的・包括的に実施して、急速な進展や再発を繰り返す亜型の分子特性の新たな側面の解明を試みるとともに、その成果を新規診断・治療法開発に応用することを目指した。
研究方法
小児がん臨床検体に対するマイクロアレイを用いた網羅的な発現遺伝子/ゲノム構造/エピゲノム解析を行った。免疫不全マウスへの細胞株移植系、培養細胞でのテトラサイクリン依存的発現系を用いて小児がんの発症、治療モデル構築を試みた。先行研究の成果として得られた分子情報をもとに難治性小児がんの治療層別化法を構築し、その臨床応用について検討した。関連する倫理指針、法規を遵守し、適切な倫理手続きを行なって実施した。
結果と考察
1) 難治性小児がんの分子プロファイリングと標的因子探索: Burkitリンパ腫特異的因子としてZNF385Bを同定、小児白血病とMDSでのCBL遺伝子変異を明らかにした。骨肉腫で予後に強く関連すると期待される染色体領域を同定、固形腫瘍でのクエン酸回路関連酵素IDH1およびIDH2遺伝子の異常を示し、小児腎腫瘍のエピゲノムプロファイルを明らかにした。以上の新たに見いだされた知見は、各腫瘍の特性や腫瘍の発症・進展に関与すると考えられる。
2) 小児がん発症、治療モデルの構築と解析: p16機能性ペプチドのin vivoにおける異型大細胞性リンパ腫細胞への抗腫瘍効果が確認され、ZNF385BがB細胞のアポトーシス制御に関与することが明らかになり、新規治療法への応用が期待される。
3) 分子情報に基づく治療層別化法の臨床応用:肝芽腫の予後層別化モデルの暫定版を構築した。小児ALLの予後層別化法として、Ig/TCR遺伝子再構成やキメラ遺伝子を利用したqPCR、フローサイトメトリー等の様々な方法でMRD検出を試み、その有用性について検証した。免疫組織学的、分子病理学的解析を加えた病理診断による治療の層別化・悪性度診断法の構築を進めた。
結論
これまで解析が不十分であった難治性小児がんについて分子プロファイリングが進み、新たな標的因子候補が複数同定され、先行研究の成果に基づく予後層別化法の構築や、発症、治療モデルの構築が進展した。今後さらに研究を進めて、その臨床応用を目指す。

公開日・更新日

公開日
2015-10-05
更新日
-

収支報告書

文献番号
201019028Z