極細径内視鏡用高機能中空ファイバの製作

文献情報

文献番号
201011028A
報告書区分
総括
研究課題名
極細径内視鏡用高機能中空ファイバの製作
課題番号
H20-ナノ・若手-010
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
岩井 克全(仙台高等専門学校 情報ネットワーク工学科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(低侵襲・非侵襲医療機器(ナノテクノロジー)研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
4,497,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高エネルギー伝送に耐える超細径中空ファイバが実現できれば、歯科内視鏡の低侵襲治療の高効率化が可能である。平成22年度は超細径中空ファイバの先端封止技術の開発で、先端封止部のEr:YAG透過率70%、内径0.1 mm、長さ10 cm、Er:YAG透過率60 %、可視光透過率20 %の超細径無機薄膜内装銀中空ファイバの製作を目標とする。
研究方法
ファイバ先端を保護する目的でシーリングキャップの製作を行う。シーリング膜として、当該波長帯で比較的透明であり、人体に対して無害、そして耐久性に優れる石英ガラスを選択した。先端封止部は、キャップ型と直接封止型を製作した。キャップ型は、内径0.25 mm石英ガラス管を溶接バーナーで加熱し、先端封止を行った。照射時間は1秒である。直接封止型は、内径0.1 mm中空ファイバの先端部を光ファイバ融着接続器に設置し、アーク放電を用いて先端封止を行った。放電時間は1秒である。放電による光学膜の剥離部分は約1 mmであり、損傷範囲を抑えることに成功した。しかし、剥離した膜により損失は増加する。封止前に、光学膜のエッチング工程を導入した。
結果と考察
キャップ型先端封止部のEr:YAGレーザ光伝送特性を測定した。透過率は約88 %となった。先端形状により、集光、拡散効果が得られることが分った。直接封止型のEr:YAGレーザ光伝送特性を測定した。透過率は約70 %であった。エッチング部分を短くすると、低損失化できると思われる。Er:YAGレーザ光と、発振波長633nmの赤色LDの伝送特性を測定した。細径中空ファイバ (内径0.1 mm、長さ10 cm)は、入射端の4 cmを直線状態に保持し、出射側の部分を一定曲率で曲げた。曲げ半径13.5 mm、曲げ角90度で、赤色LDの損失上昇は約1.5 dB、Er:YAGは、約1 dBであった。直線状態で、Er:YAGレーザ光の透過率は約73 %、赤色LD光の透過率は約63 %であった。Er:YAGレーザ光の最大出射エネルギーは約6.6 mJであった。
結論
超細径中空ファイバの先端封止技術の開発を行い、目標を達成できた。先端封止部としてキャップ型と、直接封止型の製作を行った。キャップ型は、取り扱いが容易であり、直接封止型は、細部の治療に有効と思われる。内径0.1 mm中空ファイバは、曲げ半径1 mmでも折れず、曲げ負荷損失も小さいことから、実用的である。歯科内視鏡用無機ガラス薄膜内装銀中空ファイバの実用化が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2011-07-15
更新日
-

文献情報

文献番号
201011028B
報告書区分
総合
研究課題名
極細径内視鏡用高機能中空ファイバの製作
課題番号
H20-ナノ・若手-010
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
岩井 克全(仙台高等専門学校 情報ネットワーク工学科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(低侵襲・非侵襲医療機器(ナノテクノロジー)研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高エネルギー伝送に耐える超細径中空ファイバが実現できれば、歯科内視鏡の低侵襲治療の高効率化が可能である。本研究では、平成20年度に内径0.1 mm超細径銀中空ファイバ (長さ25cm)の製作を目標とし、平成21年度は無機薄膜形成技術の開発で、Er:YAG透過率60%の無機薄膜内装銀中空ファイバ(10 cm)の製作を目標とし、平成22年度は超細径中空ファイバの先端封止技術の開発で、先端封止部のEr:YAG透過率70%、Er:YAG透過率60 %、可視光透過率20 %の中空ファイバ(10 cm)の製作を目標とする。
研究方法
銀中空ファイバの製作は、内径0.1 mmガラス管280本束を2個並列に接続して銀鏡反応を用いて行う。銀鏡条件は、前処理液にSnCl2溶液を用いる、銀鏡溶液温度は18度、銀鏡時間は3分である。無機薄膜内装銀中空ファイバの製作は、液相法を用いて行う。成膜条件は、濃度38 wt%、送液速度は10 cm/min、窒素ガス100 ml/minを流し、1時間室温乾燥である。先端封止技術の開発として、キャップ型と直接封止型の先端封止部の製作を行う。キャップ型は、内径0.25 mm石英ガラス管を溶接バーナーで加熱し、先端封止を行い、直接封止型は、内径0.1 mm中空ファイバの先端を光ファイバ融着接続器で封止した。
結果と考察
銀中空ファイバ(20cm)の損失波長測定を行った。各種内径 (内径1 mm~0.25 mm)の銀中空ファイバと比較して、内径0.1 mm銀中空ファイバに良好な銀膜を形成できた事を確認した。無機薄膜内装銀中空ファイバ(10 cm)の損失波長測定を行い、波長1.7 μmで透過率64%であった。成膜した膜厚0.27 μmは、Er:YAG伝送に有効な光学膜厚であることを確認した。先端封止部のEr:YAG伝送特性を測定し、キャップ型の透過率は約88 %、直接封止型は約70 %であった。中空ファイバ (10 cm)の曲げ伝送特性の測定を行った。曲げ半径13.5 mm、曲げ角90度で、赤色LDの損失上昇は約1.5 dB、Er:YAGは約1 dBであった。直線状態で、Er:YAGの透過率は約73 %、赤色LDは約63 %であった。Er:YAGの最大出射エネルギーは約6.6 mJであった。
結論
内径0.1 mm無機薄膜内装銀中空ファイバの開発を行い、目標を達成できた。本研究で製作した中空ファイバは、内装膜に耐久性の高い無機材料を用いており、製作が容易でディスポーザブルな医療用ファイバとして有効である。安価に製造できるため、消耗品のコストを下げ、医療費の抑制に繋がることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-07-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201011028C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究で製作したEr:YAGレーザ用の内径0.1 mm無機薄膜内装銀中空ファイバは、内装膜に耐久性の高い無機材料を用いており、製作が容易でディスポーザブルな医療用ファイバとして有効である。高反射膜の設計により各種赤外レーザ光に対応可能なため、赤外光の計測にも応用されつつある。安価に製造できるため、消耗品のコストを下げ、医療費の抑制に繋がることが期待される。更なる中空ファイバの細径化を行う際の製作条件の基となっており、内径0.05 mm、内径0.02 mm銀中空ファイバの製作に繋がっている。
臨床的観点からの成果
臨床的観点からの成果は、特にはありません。
ガイドライン等の開発
ガイドライン等の開発に関する成果は、特にはありません。
その他行政的観点からの成果
その他行政的観点からの成果に関する成果は、特にありません。
その他のインパクト
その他のインパクトに関する成果としては、光関係の国際学会で発表した結果、赤外光計測用の細径プローブとして利用したいということで、サンプルが欲しいという問い合わせがあった。国内学会で発表した結果、光計測用の細径プローブとして、並列に接続して利用したいので、複数本のサンプルが欲しいという問い合わせがあった。また、大学の研究グループから、赤外光を用いた計測用に用いたいとのことで、極細径赤外伝送路の製作法について技術提供を行い、その成果は国際学会で発表され、更なる研究テーマへと展開している。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
18件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
14件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
1件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
X. Lin, Y. W. Shi, K. R. Sui, et al.
Fabrication and characterization of infrared hollow fiber with multi-SiO2 and AgI inner-coating layers
Appl. Opt. , 48 (35) , 6765-6769  (2009)
原著論文2
X. L. Tang, Y. W. Shi, M. Matsuura, et al.
Transmission characteristics of terahertz hollow fibers with an absorptive dielectric inner-coating film
Opt. Lett. , 34 (14) , 2231-2233  (2009)
原著論文3
K. R. Sui, X. Lin, X. S. Zhu, et al.
Fabrication of SiO2/AgI/SiO2/Ag hollow glass fiber for infrared transmission
Proc. SPIE , 7173 , 1-10  (2009)
原著論文4
K. Iwai, M. Miyagi, Y. W. Shi, et al.
Fabrication of hollow optical fiber with a vitreous film for CO2 laser light delivery
Proc. SPIE , 7173 , 1-7  (2009)
原著論文5
K. Iwai, A. Hongo, H. Takaku, et al.
Transmission properties of dielectric-coated hollow optical fibers based on silver-cladding-stainless pipe
Proc. SPIE , 7559 , 1-12  (2010)
原著論文6
C. H. Yang, H. Hua, W. Tan, et al.
FT-IR based loss-spectrum measuring system for infrared hollow waveguides
Proc. SPIE , 7559 , 1-8  (2010)
原著論文7
C. Yang, H. Hua, W. Tan, et al.
Loss spectrum measurement for infrared hollow fiber based on the Fourier transform infrared spectrometer
Appl. Opt. , 49 , 2504-2509  (2010)
原著論文8
37) K. Iwai, M. Miyagi, Y. W. Shi, and Y. Matsuura
Fabrication of silver-coated hollow fiber with an inner diameter of 100 μm or less
Proc. SPIE , 7894 , 1-8  (2011)
原著論文9
B. Sun, X. Zeng, K. Iwai, M. Miyagi, N. Chi, and Y. W. Shi
Experimental investigation on liquid-phase fabrication techniques for multiplayer infrared hollow fiber
Optical fiber technology , 17 (4) , 281-285  (2011)
原著論文10
K. Iwai, M. Suzuki, M. Miyagi, Y. W. Shi, and Y. Matsuura
Uniform polymer-film formation in 100-μm-bore hollow fiber for Er:YAG laser transmission
Proc. SPIE , 8218 , 1-9  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201011028Z