大規模イベントに対する戦略的リスクアセスメント及びヘルスシステムの強化に向けた標準的枠組に関する研究

文献情報

文献番号
202426006A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模イベントに対する戦略的リスクアセスメント及びヘルスシステムの強化に向けた標準的枠組に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24LA2002
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
冨尾 淳(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤 智也(国立感染症研究所 感染症危機管理研究センター)
  • 小井土 雄一(独立行政法人国立病院機構本部 DMAT事務局)
  • 森村 尚登(東洋大学 情報連携学学術実業連携機構)
  • 大西 光雄(国立病院機構 大阪医療センター 救命救急センター)
  • 富永 隆子(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 放射線医学研究所)
  • 高橋 晶(筑波大学 医学医療系 災害・地域精神医学)
  • 加藤 美生(国立感染症研究所 感染症危機管理研究センター)
  • 清野 薫子(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
  • 竹田 飛鳥(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
19,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、大阪・関西万博(万博)や今後の大規模イベントの安全な開催に資するべく、国や自治体、関係機関が活用可能な、戦略的リスクアセスメントの実施やヘルスシステムの強化のための計画・手順の策定に資する標準的な枠組を作成することである。
研究方法
以下の3つの研究課題に取り組み、大規模イベントの標準的な準備・対応のあり方について情報収集し、知見の統合を行った。
1.大規模イベント公衆衛生・医療対策の標準枠組に関する研究
1)標準枠組に求められる要素の整理:感染症・バイオセキュリティ、テロ対策・神経解毒剤自動注射器の活用、核・放射線、熱中症、メンタルヘルス、リスクコミュニケーションの専門領域を中心に、標準枠組に求められる要素について、先行研究の成果物および過去のイベントの記録・資料などをもとに整理した。
2)世界健康安全保障イニシアティブ(GHSI)の活動を通じた情報収集:GHSIの作業部会等の活動を通じて、大規模イベントの対策に資する情報収集を行った。
2.大阪・関西万博の準備・対応に関する研究
1)万博のリスクアセスメントの試行:世界保健機関(WHO)のリスクアセスメントツール(MG-AHRAツール)を用いてリスクアセスメントを試行し、留意するべきリスクとその低減策について提案した。
2)大阪・関西万博感染症情報解析センター(情報解析センター)の運用にかかる早期評価:万博に伴う感染症事案の早期探知、リスク評価及び関係機関への情報共有等を担う情報解析センターの活動について、万博開催前に対応の早期評価(Early action review, EAR)を企画・実施し改善策の提案を行った。
3.国内外の大規模イベントの公衆衛生・医療対策の情報収集:パリ大会やメッカ巡礼などの大規模イベント情報収集を行い、保健医療体制強化に関する取り組みを整理した。
結果と考察
東京2020大会の対応のレビューを通じて、マスギャザリングの感染症対策として、1)包括的なリスク・準備状況とギャップの評価、2)ギャップへの対策、3)ステークホルダーを交えた運用演習の3段階からなる対応が効果的であると考えられた。また、近年の化学剤の使用事例から、多様な化学剤、散布方法への対応が求められることが明らかになった。核・放射線対策として、初動対処機関の現場対応、医療機関での診療、専門機関による線量評価や専門的診療の支援、長期的フォローアップ体制の構築まで取り入れた枠組みが必要と考えられた。大規模イベントやテーマパーク等の熱中症対策として、屋外でのミスト散布やパトロール隊による啓発活動、従業員向けのクーリング対策等が実施されていたが、来場者の行動や心理的側面に直接働きかけるような工夫は限定的であった。メンタルヘルス対策は、トラウマティックストレス対応と中長期支援が基本であり、急性期~中長期の精神的対応への配慮、各地域での人材育成が必要であることが明らかになった。大規模イベントに関わる地方自治体向けの、リスクコミュニケーションに関する段階的キャパシティビルディング・プログラムを設計した。
万博について、MG-AHRAツールを用いたリスクアセスメントを試行したところ、総合スコアは「中程度」と推定された。「情報解析センター」の活動の早期評価により、行政機関・保健所から解析センターへの報告基準、休日の連絡体制、複数の保健所が関与する事案における指揮命令系統などが探知・リスクアセスメント・対応上の課題として確認された。
パリ大会と東京大会の傷病者を比較したところ、関連した総傷病者数は双方2万人弱であったが、観客、選手の傷病発生場所の割合が大きく異なっていた。東京大会では会場内よりも選手村での選手の傷病が多かった。
結論
国内外の近年の大規模イベントへの対応や、WHOが作成するリスクアセスメントツールなどを精査することで、大規模イベントの安全な開催に向けた戦略的リスクアセスメントの実施やヘルスシステムの強化のための計画・手順について検討した。1)包括的なリスク・準備状況とギャップの評価、2)ギャップへの対策、3)ステークホルダーを交えた運用演習の3段階は、大規模イベント開催時の標準的な枠組の要素となりうるものと考えられた。次年度以降、各段階で活用できるツールやリソースについて具体的な検討を行い、実装可能な枠組の構築を進める。

公開日・更新日

公開日
2025-10-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-08-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
202426006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
19,500,000円
(2)補助金確定額
18,046,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,454,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 947,588円
人件費・謝金 1,707,776円
旅費 2,448,931円
その他 12,942,271円
間接経費 0円
合計 18,046,566円

備考

備考
予定していた会議等がスケジュールの都合により中止、オンライン開催となったために差額が生じた。
(自己資金:566円)

公開日・更新日

公開日
2025-10-17
更新日
-