飲料水の水質リスク管理に関する統合的研究

文献情報

文献番号
200942008A
報告書区分
総括
研究課題名
飲料水の水質リスク管理に関する統合的研究
課題番号
H19-健危・一般-012
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
松井 佳彦(北海道大学 大学院工学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 禎彦(京都大学 大学院地球環境学堂)
  • 浅見 真理(国立保健医療科学院 水道工学部)
  • 相澤 貴子(財団法人水道技術研究センター )
  • 西村 哲治(国立医薬品食品衛生研究所 環境衛生化学部)
  • 伊藤 雅喜(国立保健医療科学院 水道工学部)
  • 秋葉 道宏(国立保健医療科学院 水道工学部)
  • 泉山 信司(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 松下 拓(北海道大学 大学院工学研究科)
  • 長谷川 隆一(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
  • 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室)
  • 平田 睦子(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室)
  • 小野 敦(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室)
  • 国包 章一(静岡県立大学 環境科学研究所)
  • 西野 二郎(社団法人日本水道協会 工務部水質課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
52,538,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
水道水質基準の逐次見直し等に資すべき化学物質や消毒副生成物,病原生物等を調査し,着目すべき項目に関してそれらの存在状況,監視,低減化技術,暴露評価とリスク評価に関する研究を行い,水道水質基準の逐次改正等に資するとともに,水源から給水栓に至るまでの水道システム全体のリスク管理のあり方に関して提言を行うことにある.
研究方法
無機物質,一般有機物,微生物,消毒副生成物,農薬,水質管理,リスク評価の7課題群-研究分科会を構築し,研究分担者13名の他に44もの水道事業体や研究機関などから70名の研究協力者の参画を得て,研究施設や浄水場などのフィールドにおける実態調査を行った.
結果と考察
耐塩素性病原微生物対策として試料水の濃縮方法などを開発した。rRNAの逆転写によってクリプトスポリジウム等の高感度検出が可能となり,qRT-PCRによる定量や直接塩基配列決定による種や型の情報が得られた.水道原水中にゲルマニウムなどUSEPAのCCL3のレアメタルが検出された.原水,オゾン処理水,浄水からニトロソアミン化合物が検出されたが,その挙動は個別の物質により異なり,また特定の前駆体排出源の存在が示唆された.第一群農薬の中でほとんど検出されない農薬もあり,見直しの必要な農薬を選定するためのデータを得ることができた.出荷量が増加しているネオニコチノイド系農薬の検出,第一群農薬を対象としたΣ値と全ての測定農薬を対象としたΣ値に約3倍程度の開きがありその理由がMPPの分解物によること,塩素付加体などの存在とその高毒性から,農薬原体のみならず反応・分解物の測定と毒性評価が課題として認められた.有害金属元素の摂取に対する水道水の比率は,基準値設定の際の寄与率デフォルト値10%より低く,塩素酸摂取に対する水道水の比率は高かった.トリハロメタン4種と一部のハロ酢酸については現行の飲用寄与率のデフォルト値(20%)よりも低い値が,ハロアセトニトリルは高い方が適切と試算された.アルミニウム化合物に関しては多くの毒性情報が得られたが,リスク評価のためにはさらなる研究が望まれた.NDMAは発がん性以外の慢性影響に関する評価はほとんど行われていなかった.動物毎の新規UFのPKとPDへの分割を試みた.
結論
水道原水の状況,水道水に含まれる物質の検出方法,浄水過程における低減化法,毒性情報,暴露量への寄与,水質管理体制など水道水質基準の基礎となる多数の知見が得られた。主要な知見は「結果と考察」のとおりである.

公開日・更新日

公開日
2010-06-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-04-07
更新日
-

文献情報

文献番号
200942008B
報告書区分
総合
研究課題名
飲料水の水質リスク管理に関する統合的研究
課題番号
H19-健危・一般-012
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
松井 佳彦(北海道大学 大学院工学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 禎彦(京都大学 大学院地球環境学堂)
  • 遠藤 卓郎(国立感染症研究所 寄生動物部(平成20年度まで))
  • 国包 章一(静岡県立大学 環境科学研究所)
  • 西野 二郎(社団法人日本水道協会 工務部水質課)
  • 江馬 眞(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室(平成19年度まで))
  • 長谷川 隆一(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
  • 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室)
  • 平田 睦子(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室(平成20年度まで))
  • 小野 敦(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室(平成21年度))
  • 伊藤 雅喜(国立保健医療科学院 水道工学部)
  • 秋葉 道宏(国立保健医療科学院 水道工学部)
  • 安藤 正典(武蔵野大学 薬学部薬学研究所(平成20年度まで))
  • 相澤 貴子(財団法人水道技術研究センター)
  • 浅見 真理(国立保健医療科学院 水道工学部)
  • 西村 哲治(国立医薬品食品衛生研究所 環境衛生化学部)
  • 松下 拓(北海道大学 大学院工学研究科)
  • 泉山 信司(国立感染症研究所 寄生動物部(平成21年度))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
水道水質基準の逐次見直し等に資すべき化学物質や消毒副生成物,病原生物等を調査し,着目すべき項目に関してそれらの存在状況,監視,低減化技術,暴露評価とリスク評価に関する研究を行い,水道水質基準の逐次改正等に資するとともに,水源から給水栓に至るまでの水道システム全体のリスク管理のあり方に関して提言を行うことにある.
研究方法
無機物質,一般的な有機物,微生物,消毒副生成物,農薬,水道水の水質管理,リスク評価の7課題群-研究分科会を構築し,研究分担者17名の他に45もの水道事業体や研究機関などから89名の研究協力者の参画を得て,各研究分担者所属の施設のみならず様々な浄水場などのフィールドにおける実態調査を行った.
結果と考察
可溶性ケーキろ過を用いた捕集濃縮法とRT-LAMP法によるクリプトスポリジウム等の原虫の検出法が実用試験段階になった.ノロウイルスは凝集沈殿砂ろ過処理にて3log以上の除去,塩素処理にて3mg/L・minで4log以上の不活化が期待された.インフルエンザウイルスの塩素耐性は特に高くないことがわかった.化学物質関連では,ニトロソアミン類のうち,NDMAなどが原水やオゾン処理水等から検出され,さらに前駆物質として黄ばみ防止剤を同定した.また,NDMAの評価値として0.1μg/Lを算定した.河川中からPFOS, PFOAがng/Lレベルで検出され,一方,多くの毒性情報が得られた.また,水質管理目標設定項目第1群の中でも不検出の農薬や検出される第2群農薬があることから,見直しおよびその方法を提案した.凝集剤の塩基度を高めることにより残留アルミニウム濃度を低減化できることが分かってきた.暴露評価に関しては,消毒副生成物の一部などは水道水を用いた調理により水道水寄与率が高くなり,THMsなどの現行飲用寄与率は必ずしも20%に近くなかった.リスク評価におけるBMD法の高い有用性が示された.諸外国では水道水源保全や情報公開に関して日本に比べてより踏み込んだ規制的措置が取られていることがわかった.
結論
水道原水の状況,水道水に含まれる物質の検出方法,浄水過程における低減化法,毒性情報,暴露量への寄与,水質管理体制など水道水質基準の基礎となる多数の知見が得られた。主要な知見は「結果と考察」のとおりである.

公開日・更新日

公開日
2010-06-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-04-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200942008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
PACを高塩基度化するとアルミニウムの重合が進みコロイド化により凝集処理後の溶解性アルミニウム濃度が低くなるが,凝集剤の荷電量は減少しないため凝集性は保持される.ニトロソアミン化合物の実態調査より,原水,オゾン処理水,浄水からNDMAなど検出され,その挙動は個別の物質により異なりことがわかった.またオゾン処理により生成するNDMAの前駆体の一部を同定し,その排出源が示唆された.その他,多くの専門的・学術的成果が得られた.
臨床的観点からの成果
研究内容が該当しない.
ガイドライン等の開発
なし.
その他行政的観点からの成果
水道における微生物問題検討会(H22.3.23)において,クリプトスポリジウム等に係る新しい検査方法として,本研究より開発された粉体ろ過濃縮法とクリプトスポリジウム等遺伝子検出法が主な議題となり,実用化に向けての一層の研究と有効性の検証を進めることの重要性が確認された.その他,水質基準逐次改正検討会(H20.8.6,H21.6.25)や第厚生科学審議会生活環境水道部会(H22.2.2)におけるNDMAやPFOSなどの議論に資された.
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
32件
原著論文(英文等)
58件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
79件
学会発表(国際学会等)
36件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
28件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shirasaki, N., Matsushita, T., Matsui, Y., et al.
Estimation of norovirus removal performance in a coagulation-rapid sand filtration process by using recombinant norovirus VLPs
Water Research , 44 , 1307-1316  (2010)
原著論文2
Shirasaki, N., Matsushita, T., Matsui, Y., et al.
Comparison of behaviors of two surrogates for pathogenic waterborne viruses, bacteriophages Qβ and MS2, during the aluminum coagulation process
Water Research , 43 (3) , 605-612  (2009)
原著論文3
Shirasaki, N., Matsushita, T., Matsui., et al.
Comparison of removal performance of two surrogates for pathogenic waterborne viruses, bacteriophage Qβ and MS2, in a coagulation–ceramic microfiltration system
Journal of Membrane Science , 326 , 564-571  (2009)
原著論文4
Kosaka, K., Asami, M., Konno, Y., et al.
Identification of antiyellowing agents as precursors of N-nitrosodimethylamine production on ozonation from sewage treatment plant influent
Environ. Sci. Technol. , 43 (14) , 5236-5241  (2009)
原著論文5
Asami, M., Oya M., and Kosaka, K., et al.
A nationwide survey of NDMA in raw and drinking water in Japan
Sci. Total Environ. , 407 (11) , 3540-3545  (2009)
原著論文6
Asami, M., Kosaka, K. and Kunikane, S.
Bromate, chlorate, chlorite and perchlorate in sodium hypochlorite solution used in water supply
Journal of Water Supply: Research and Technology–Aqua , 58 , 107-115  (2009)
原著論文7
Oya, M., Kosaka, K., Asami, M., et al.
Formation of N-nitrosodimethylamine (NDMA) by ozonation of dyes and related compounds
Chemosphere , 73 , 1724-1730  (2008)
原著論文8
Inomata, A., Kishida, N., Momoda., et al.
Development and evaluation of a reverse transcription-loop-mediated isothermal amplification assay for rapid and high-sensitive detection of Cryptosporidium in water samples
Water Science and Technology , 60 (8) , 2167-2172  (2009)
原著論文9
Asami, M., Kosaka, K. and Yoshida, N.
Occurrence of chlorate and perchlorate in bottled beverages in Japan
Journal of Health Science , 55 (4) , 549-553  (2009)
原著論文10
Kosaka K., Asami M., Matsuoka Y., et al.
Occurrence of perchlrorate in drinking water sources of metropolitan area in Japan
Water Res. , 41 (15) , 3474-3482  (2007)
原著論文11
Ohno, K., Minami, T., Matsui, Y., et al.
Effects of chlorine on organophosphorus pesticides adsorbed on activated carbon: Desorption and oxon formation
Water Research , 42 (6) , 1753-1759  (2008)
原著論文12
Kamoshita, M., Kosaka, K., Endo, O., et al.
Mutagenic activities of a chlorination by-product of butamifos, its structural isomer, and their related compounds
Chemosphere , 78 , 482-487  (2010)
原著論文13
寺嶋勝彦,国包章一
ニュージーランドにおける水道の水質管理制度
水道協会雑誌 , 79 (1) , 24-34  (2010)
原著論文14
Harada, T., Kimura, E., Hirata-Koizumi, M., et al.
Reproductive and developmental toxicity screening study of 4-aminophenol in rats
Drug Chem Toxicol , 31 , 473-486  (2008)
原著論文15
Hirata-Koizumi, M., Matsuyama, T., Imai, T., et al.
Disappearance of gender-related difference in the toxicity of benzotriazole ultraviolet absorber in juvenile rats
Congenital Anomalies , 49 , 247-252  (2009)
原著論文16
Matsumoto, M., Hirose, A. and Ema, M., et al.
Review of testicular toxicity of dinitrophenolic compounds, 2-sec-butyl-4,6-dinitrophenol, 4,6-dinitro-o-cresol and 2,4-dinitrophenol
Reprod Toxicol , 26 , 185-190  (2008)
原著論文17
Ema, M., Fukunishi, K., Hirose, A., et al.
Repeated dose and reproductive toxicity of the ultraviolet absorber 2-(3',5'-di-tert-butyl-2'-hydroxyphenyl) -5- chlorobenzotriazole in rats
Drug Chem Toxicol , 31 , 399-412  (2008)
原著論文18
Hirata-Koizumi, M., Matsuyama, T., Imai, T., et al.
Lack of gender-related difference in the toxicity of 2-(2'-hydroxy-3',5'-di-tert-butylphenyl)benzotriazole in preweaning rats
Drug Chem Toxicol , 31 , 275-287  (2008)
原著論文19
小坂浩司,浅見真理,今野裕介 他
利根川上・中流域におけるN-ニトロソジメチルアミンとその前駆物質の実態調査
環境工学研究論文集 , 46 , 233-240  (2009)
原著論文20
田原麻衣子,杉本直樹,末松孝子 他
qNMRに基づく有機リン系農薬イソキサチオンオキソンの品質管理
食化誌 , 16 (1) , 28-33  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-