通信連絡機器を活用した健康危機情報をより迅速に収集する体制の構築及びその情報の分析評価に関する研究

文献情報

文献番号
200942002A
報告書区分
総括
研究課題名
通信連絡機器を活用した健康危機情報をより迅速に収集する体制の構築及びその情報の分析評価に関する研究
課題番号
H19-健危・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部 信彦(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 赤羽 学(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
  • 杉浦 弘明(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
10,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、地域における健康危機の発生を迅速に察知する方法として、携帯電話とインターネットを活用し、通常と異なる症状を自覚した国民から直接かつリアルタイムで健康状態に関する情報を収集する方法を検討することであり、その実行可能性と有効性も検証し、情報収集・伝達体制の在り方、収集した情報の分析・評価法も併せて検討・検証する。
研究方法
・モニタを用いた実証実験の実施:東京都の生協組合員を活用した継続的協力に係る実証実験と、出雲市モニタを用いた実証実験を実施し、比較検証を行う。また、日本生協連の協力により、東京以外の新たな1地域を対象地域として追加する。また、モニタへの非金銭的なインセンティブのあり方を検討する。
・PC及び携帯サーベイランスシステムの実用可能性についての検討:本システムで収集されるデータの正確性、費用対効果、他地域への適用可能性等の観点から、継続的な広域展開の可能性について検討実施
結果と考察
・PC版モニタの回答率は平均約50%と非常に高い値が示された。携帯電話での実施では平均59%とさらに高い値を示し、実施地域の違いはあるものの、皆勤回答率も高かった。
・日本生協連とコープとうきょうとの協働により、独自のモニタの確保方策、および研究班独自のデータ収集・分析システムを確立した。これにより、モニタ数の拡大、直接経費の大幅削減という、これまでの研究遂行上の課題を解決できる可能性を示した。
結論
本研究により、地域における健康危機の発生をより迅速に察知し、その情報を迅速に国へ伝達するための手法のプロトタイプを確立することができた。本研究の成果が実用化されれば、従来から研究されており、近い将来において実用化が見込まれる症候群サーベイランスと相互に補完しあうことで、地域における健康危機発生の察知に係る迅速性と確実性を向上させることができ、国民を健康危機から保護することができる。さらに、政策的な意義としても、ITを活用した世界でも先進的な健康危機管理手法として、e-Japanの実現にも寄与することができる。また本研究で示した手法は、携帯電話やインターネットを活用して、国民から直接かつリアルタイムに情報を収集する点であり、インターネット世帯利用率91.3%(H19末)、携帯電話世帯保有率95.0%(H19末)とインターネットや携帯電話が広く普及し、特に、携帯電話を利用して電子メール等の各種情報の送受信を行う習慣が多いわが国ならではの情報収集方法である。

公開日・更新日

公開日
2010-06-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200942002B
報告書区分
総合
研究課題名
通信連絡機器を活用した健康危機情報をより迅速に収集する体制の構築及びその情報の分析評価に関する研究
課題番号
H19-健危・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 岡部 信彦(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 赤羽 学(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座 )
  • 杉浦 弘明(公立大学法人奈良県立医科大学 健康政策医学講座 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域での健康危機の発生を迅速に察知する方法として、家庭用のPCや携帯電話を活用して、通常と異なる症状を自覚した国民から直接的にリアルタイムで情報を収集する方法や体制のあり方、収集情報の分析・評価の方法を検討・検証した。
研究方法
インターネット調査会社のプラットフォームを用い、島根県出雲市及び北海道洞爺湖町周辺においては家庭用PC、東京都府中市においては携帯電話を媒体とした調査を行った。
結果と考察
1 本研究で示した症候群サーベイランスシステムによって得られたデータ(島根県出雲市)について、データの精度向上のため「48時間以上前」の「咳」発症データを除き、CDC推奨のEARS(Early Aberration Reporting System)によって分析したところ、地域の健康状況の異常を早期に探知し得ることが確認できた。また外来受診サーベイランスでは取得できない土日のデータを取得できる点も本システムの特長である。
2 通常の症候群サーベイランスは実施において地域住民の理解が必要であるのに対して、本システムは、インターネットに接続する環境と十分な数のインターネット・モニタが確保されていれば即座に実施できる機動性がある。平成20年の洞爺湖サミット開催中において短期間の準備によって前向き調査が実施できた。
3 PC版モニタの回答率は平均約50%と非常に高い値が示された。携帯電話の実施では平均59%とさらに高い値を示し、実施地域の違いはあるものの、皆勤回答率も高かった。
4 一方で、概算で1モニタ・1ヶ月で約5千円というコストが問題となった。回答間隔を3日に1回としたところ、連日調査と比べて回答率が大きく低下し、また回答1回あたり20円程度の謝礼(1回あたり謝礼:40~80円)の差は回答率に影響を及ぼさなかった。このため、日本生協連とコープとうきょうとの協働により、独自のモニタの確保方策、および研究班独自のデータ収集・分析システムを確立した。これにより、モニタ数の拡大、直接経費の大幅削減という、これまでの研究遂行上の課題を解決できる可能性を示した。
結論
合意形成と新規のシステム構築が不要で、即日からでも実施可能な機動性の高い症候群サーベイランスの仕組みが構築できた。フォローアップの結果、発症後の対処として「何もしていない」「自宅で安静にしている」有症者がそれぞれ約30%、約20%見られたことから、本システムは、学校欠席者数や薬局データを用いた既存のサーベイランスを補完し得るものであると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2010-06-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200942002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
インターネット調査会社のプラットフォームを用い、島根県出雲市及び北海道洞爺湖町周辺においては家庭用PC、東京都府中市においては携帯電話を媒体とした調査を行い、症候群サーベイランスとして有用性を確立した。研究班独自のデータ収集システムを構築し、データ収集から解析まで一貫したシステムにおいても症候群サーベイランスとして実証された。基本システムを応用したアレルギー調査では季節ごとや日々の変化を確実にとらえ、感染症分野で用いたEARSが応用可能なシステムと考えられた。
臨床的観点からの成果
合意形成と新規のシステム構築が不要で、即日からでも実施可能な機動性の高い症候群サーベイランスの仕組みが構築できた。フォローアップの結果、発症後の対処として「何もしていない」「自宅で安静にしている」有症者がそれぞれ約30%、約20%見られたことから、本システムは、学校欠席者数や薬局データを用いた既存のサーベイランスを補完し得るものであると考えられる。
ガイドライン等の開発
本研究班の取り組んだ研究内容は、厚生労働省における「症候群サーベイランス」実施において、基礎資料となり得るもので、実際、2008年開催の洞爺湖G8サミットで健康危機対策の一つとして、実践配備、運用し、多くの有用性を確認している。
その他行政的観点からの成果
研究班独自のデータ収集システムを構築したことにより、モニター数の拡大、直接経費の大幅削減という、これまでの研究遂行上の課題を一度に解決できる可能性が示唆された。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
4件
大日康史 岡部信彦 今村知明 他,インターネットアンケート調査による新しい症候群サーベイランスの構築と洞爺湖サミットでの運用,医療情報学 28(Suppl.),1031-1036,2008他
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
杉浦弘明、赤羽学、岡部信彦、今村知明. インターネットを用いた症候群サーベイランスの長期運用に向けた試み. 第68回日本公衆衛生学会総会. 奈良県文化会館/奈良県新公会堂 2009年10月21日他
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
大日康史、今村知明、岡部信彦 他
北海道洞爺湖サミットにおける症候群サーベイランスの実施
感染症学雑誌 , 83 (3) , 236-244  (2009)
原著論文2
Sugiura Hiroaki, Okabe Nobuhiko, Imamura Tomoaki et al.
Construction of syndromic surveillance using a web-based daily questionnaire for health and its application at the G8 Hokkaido Toyako Summit meeting
Epidemiology and Infection , 13 , 1-10  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-11-24
更新日
-