文献情報
文献番号
202408016A
報告書区分
総括
研究課題名
循環器疾患及び糖尿病、COPD 等の生活習慣病の個人リスク及び集団リスクの評価ツールの開発と応用のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23FA1006
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
村上 義孝(東邦大学 医学部医学科社会医学講座医療統計学分野)
研究分担者(所属機関)
- 岡村 智教(慶應義塾大学 医学部 衛生学公衆衛生学教室)
- 二宮 利治(九州大学大学院医学研究院 衛生・公衆衛生学分野)
- 大久保 孝義(帝京大学医学部衛生学公衆衛生学講座)
- 山岸 良匡(国立大学法人筑波大学 医学医療系)
- 玉腰 暁子(北海道大学大学院医学研究院 社会医学分野公衆衛生学教室)
- 小久保 喜弘(国立循環器病センター予防健診部)
- 三浦 克之(国立大学法人滋賀医科大学 NCD疫学研究センター)
- 原田 亜紀子(滋賀医科大学 NCD疫学研究センター)
- 大西 浩文(札幌医科大学 医学部)
- 寳澤 篤(国立大学法人東北大学 東北メディカル・メガバンク機構)
- 櫻井 勝(金沢医科大学 医学部)
- 立川 佳美(放射線影響研究所臨床研究部)
- 丹野 高三(岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座)
- 清水 悠路(大阪健康安全基盤研究所 疫学解析研究課)
- 石川 鎮清(自治医科大学地域医療学センター公衆衛生学部門)
- 八谷 寛(名古屋大学大学院医学系研究科 国際保健医療学・公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
12,150,000円
研究者交替、所属機関変更
山岸良匡が筑波大学医学医療系から、順天堂大学医学部に異動した。
研究報告書(概要版)
研究目的
高血圧や脂質異常症、喫煙、糖尿病などのリスク因子は個人の循環器疾患の発症に影響を与えるが、ベースライン時の測定値による発症リスク等の長期予測能や、リスク因子の経時的変動の影響や予測可能な年数など、現時点で結論がでていない課題も多い。昨年度、わが国の循環器疫学を中心とするコホート統合研究であるEPOCH-JAPAN(Evidence for Cardiovascular Prevention From Observational Cohorts in Japan)の共同研究者に呼び掛け、データ収集・統合を行い、経時データのデータベースを作成した。本データベースを解析することで、経時的データに基づいた特定健康診査・保健指導での行動変容を促す情報ツールの元となる、危険因子等の長期的な予測能を検討した。
研究方法
各テーマの総括報告書の研究方法が示すとおり、(1) 個人における経時的なリスク因子の変動と疾患発生との関連の解析、(2) EPOCH-JAPAN循環器疾患データベースを利用した慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)の解析、(3) EPOCH-JAPAN循環器疾患データベースを利用した最新血圧分類とCVD死亡リスクの定量的評価、(4) 個々のコホートの追跡期間延長と新規コホートの追跡調査の4つの研究テーマを実施した。
結果と考察
研究の結果、(1)前年度構築したEPOCH-JAPAN経時データベース(約1万2000人)を用い、検査項目の年単位の変動・変化を考慮した指標と発症・死亡アウトカムとの関連を検討した。Cox比例ハザードモデルにより、服薬治療のない血圧・糖尿病グループにおいて男女とも、単年度の測定値を用いた場合より5年平均値や5年間の最大値を用いたハザード比の方が大きいという結果が得られた。この結果から、特定健康診査から年単位で測定される検査値の有効活用に資するエビデンスが得られた。(2)昨年度作成したEPOCH-JAPAN循環器疾患データベースに新たにCOPDを加えた拡大データベースを使用し、いまだわが国において知見が十分でないCOPD死亡に対するリスク因子を詳細に検討した。その結果、喫煙、やせ、年齢などで顕著なリスク増加が確認され、各リスク因子の長期的な予測能の妥当性が評価された。(3)EPOCH-JAPAN循環器疾患データベースを用い、最新の血圧分類とCVD死亡リスクの関連の定量的な評価を実施し、高血圧治療ガイドライン改訂に資する基本資料を作成した。その結果、未治療者において、CVD死亡リスクは血圧分類の上昇とともに段階的に増加し、非高齢者(40–64歳)でその傾向が顕著であり、最も高いPAFはI度高血圧群で観察された。また治療中患者を高血圧群に含めた場合、高血圧群のPAFは全人口の41.1%に達した。(4)個別コホートで追跡調査の継続やデータ解析が実施され、多くの科学的エビデンスが公表され、統合研究・個別研究で総計122本の論文が学術雑誌に掲載された。
結論
昨年度構築したEPOCH-JAPAN経時データベースを使用して、個人レベルに収集したデータに基づくメタアナリシスの手法を活用し、個人のリスク因子(血圧、脂質、血糖)の長期的な変動・変化が循環器疾患発症・死亡に及ぼす影響を検討した。その結果、収縮期血圧や拡張期血圧、HbA1c(男性)において、薬剤治療を受けない集団では、5年平均や最大値を用いたハザード比の方が、従来の疫学研究で用いられる単年値によるハザード比より大きな値を示した。一方でnon-HDLコレステロールでは上記に示したような結果にはならなかった。また、わが国で知見が未だ十分でないCOPD死亡に対するリスク因子を大規模コホートデータベースにより詳細に検討した。その結果、従来言われているリスク因子である喫煙、やせ、年齢で顕著なリスク増加が男女とも確認された。
公開日・更新日
公開日
2025-08-28
更新日
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