肝硬変を含めたウイルス性肝疾患の治療の標準化に関する研究

文献情報

文献番号
200933012A
報告書区分
総括
研究課題名
肝硬変を含めたウイルス性肝疾患の治療の標準化に関する研究
課題番号
H19-肝炎・一般-012
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
熊田 博光(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 肝臓センター)
研究分担者(所属機関)
  • 岡上 武(大阪府済生会吹田病院 消化器科)
  • 恩地 森一(愛媛大学医学部 先端病態制御内科)
  • 森脇 久隆(岐阜大学医学部 臓器病態学講座消化器病態学分野)
  • 泉 並木(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 田中 榮司(信州大学医学部 消化器内科)
  • 茶山 一彰(広島大学医学部 先進医療開発科学講座分子病態制御内科)
  • 向坂 彰太郎(福岡大学医学部 第3内科)
  • 竹原 徹郎(大阪大学医学部 消化器内科)
  • 桶谷 眞(鹿児島大学医学部健康科学専攻人間環境学講座消化器疾患生活習慣病学)
  • 芥田 憲夫(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 肝臓センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
42,360,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
この研究班は、慢性肝炎から肝硬変まで一連のガイドラインを作成し、将来的に我が国の発癌例が減少することを目的とした研究班であることからB型・C型慢性肝炎に対する治療の標準化ガイドラインを補足修正し、肝硬変を含めた治療のガイドラインを作成した。
研究方法
平成21年は、C型慢性肝炎の初回治療ガイドラインは新たにHCV genotype 1では、IFNβとリバビリン併用療法の48-72週間、Geno 2では24週間の治療法を追記した。 特にPEG-IFNα+Ribavirin併用療法の不適応症例には、IFNβとRibavirin併用療法が基本とした。さらに治癒目的の再治療法を明示した。
結果と考察
治癒目的の再治療:1型高ウイルス量で初回がIFN単独療法であった症例は、IFN(αまたはβ)とリバビリン併用療法48週?72週間投与の治療が基本である。初回がIFN+Ribavirin併用療法で再燃(治療後36週までにHCV RNA陰性化例)例への再投与はIFNとRibavirin併用療法72週間投与が望ましいとした。また、初回治療でうつ病・うつ状態などIFNα製剤が不適応症例は、IFNβとリバビリン併用療法を選択する。今年度は、1型高ウイルス量例の中止基準を提示しPEG-IFNα+Ribavirin併用療法開始12週後にRNA量が前値の1/100以下に低下がなくRNA陽性(Real time PCR法)で36週までに陰性化がなくかつALT・ASTが正常化しない例は36週で治癒目的の治療は中止することとした。また、投与開始12週後にHCV RNA量が前値の1/100以下に低下するがRNA陽性で36週までに陰性化例のうち50歳以上の女性、血小板が13万以下またはF3の症例は開始9週目以降にRNAが陰性化した症例は72週投与も考慮することとした。B型慢性肝炎は、新たに核酸アナログ製剤のdrug freeの範囲を広げe抗原陽性・>7 log copies/mLの症例は、年齢に拘わらずe抗原が陰性化後にDNAが陰性化した症例はSequential 療法(核酸アナログ製剤とIFNを1ヶ月併用しIFNをトータル6ヶ月投与し治療を中断する。)の治療法を追記した。ウイルス性肝硬変に対する包括的治療については従来どおり発癌予防を目指す治療法とした。
結論
慢性肝炎から肝硬変まで最新の基礎・臨床研究に基づいたガイドラインを作成し肝発癌率を減少させることを目的として研究した。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-02-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200933012B
報告書区分
総合
研究課題名
肝硬変を含めたウイルス性肝疾患の治療の標準化に関する研究
課題番号
H19-肝炎・一般-012
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
熊田 博光(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 肝臓センター)
研究分担者(所属機関)
  • 岡上 武(大阪府吹田病院 消化器科)
  • 恩地 森一(愛媛大学医学部 先端病態制御内科)
  • 森脇 久隆(岐阜大学医学部 臓器病態学講座消化器病学分野)
  • 泉 並木(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 田中 榮司(信州大学医学部 消化器内科)
  • 茶山 一彰(広島大学医学部 先進医療開発科学講座分子制御内科)
  • 向坂 彰太郎(福岡大学医学部 第3内科)
  • 竹原 徹郎(大阪大学医学部 消化器内科)
  • 桶谷 眞(鹿児島大学医学部健康科学専攻人間環境学講座消化器疾患生活習慣学)
  • 芥田 憲夫(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 肝臓センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ウイルス性肝疾患の最新治療法のガイドラインを確立
研究方法
毎年、最新のガイドラインを作成するため共同研究テーマを提示し班員で基礎・臨床研究を行いエビデンスデータとして検討
結果と考察
19年は、肝硬変治療はウイルス(RNA)の駆除またはALT値の正常化を目指し1b・高ウイルス(high)以外は、IFNβでRNA排除を目指すこととした。肝機能維持には、分岐鎖アミノ酸・瀉血を含め包括治療を行なうとした。B型慢性肝炎は、IFNαの在宅自己注射を3ヶ月以上投与と適応を拡げた。母子感染は、Genotype CでIFN抵抗例が多いためETVを主とした。C型慢性肝炎の初回はPEG-IFNα+RBV72週投与を推奨基準とし再治療は治癒目的治療か、肝癌予防のためAST/ALTの正常化を目指す治療かに分け指針した。20年は、非代償性肝硬変は、high以外はβ又αで、highはαにてRNA排除を提示した。B型慢性肝炎は、35歳未満e抗原陰性でDNAが7 log以上でもdrug freeを考えETV+IFNSequential療法を第一選択とし、35歳以上はe抗原陰性でDNAが7 log未満はIFN24週-48週を追記した。C型慢性肝炎は、初回は12週後にRNAが前値の1/100以下でReal time PCR法陽性で36週までの陰性化例は72週延長投与とした。21年は、C型慢性肝炎初回治療で1bは、βとRBV療法の48-72週間、2では24週間の治療法を追記した。特にα+RBVの不適応例は、βとRBV療法が基本とした。治癒目的の再治療は、highで初回がIFN単独療法例は、α又βとRBV療法48週-72週投与の治療とし、初回RBV療法で再燃例は72週投与を推奨した。うつ病などα不適応例は、βとの療法を選択しさらに中止基準として12週後にRNA量が前値の1/100以下に低下せずRNA陽性(Real time 法)で36週までに陰性化せずかつAST/ALTが正常化しない例は36週で治癒の治療は中止することとした。50歳以上の女性、血小板が13万以下又F3例は9週以降にRNA陰性化例は72週投与も推奨した。B型慢性肝炎は、Sequential 療法を定義し核酸アナログ製剤とIFNを1ヶ月併用しIFNをトータル6ヶ月投与後中断することを明記した。耐性株出現例にLMV+ADV3年以上投与後もDNAが4 log以上でAST/ALTが31 IU以上は、ETV+ADV法も選択肢とした。
結論
H22年にC型慢性肝炎治療の72週延長投与が認められ、今後肝癌発生の減少に繋がることとなった。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-02-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200933012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
平成21年度は、新たにウイルス性肝硬変及び慢性肝炎に対するガイドラインの追記・修正を行い今年度は、次世代の薬剤による治癒を考慮したガイドラインを作成した。地域共通で、慢性肝炎経過観察のためのパス、B型慢性肝炎治療の連携パス、難治性C型慢性肝炎治療の連携パス、インターフェロン単独治療のパス、肝硬変にたいする連携パス、肝癌治療後の再発早期発見の連携パスを作成した。
臨床的観点からの成果
C型の初回治療はRBV併用療法の不適応例は、IFNβとの併用療法とし治癒目的の再治療で1型高ウイルス量の初回IFN無効例は、RBV併用48から72週投与とした。初回がRBV併用で再燃例はRBV併用72週とした。うつ状態でα不適例は、βとRBV併用療法とした。また、中止基準を明確にし次世代の薬剤による治癒を目指した。B型は、NA製剤のdrug freeの範囲を広げe抗原陽性7 log以上は、年齢に拘わらずe抗原陰性化後にDNAが陰性化例はSequential 療法に切り替えることとした
ガイドライン等の開発
東京都ウイルス肝炎対策協議会2009年3月24日、東京都ウイルス肝炎対策協議会2010年3月24日、厚生労働省肝炎専門家会議 2008年1月11日、5月27日、10月20日
その他行政的観点からの成果
平成21年度より厚生労働省のC型肝炎医療費助成の基準及び治療法の参考となった。
ガイドラインは、日本肝臓学会との連携をし肝臓学会のホームページへ掲載し平成21年度版の更新をした。厚生労働省監修の啓蒙活動を行い肝臓専門医のみならず一般医へも普及させ市民公開講座を開催し患者さんへも肝炎治療の啓蒙活動を積極的に行った。
その他のインパクト
2010年3月6日平成21年度厚生労働省研究班公開報告会
2009年4月4日読売新聞2009年6月29日Japan Medicine  2009年6月16日愛媛新聞 2009年6月28日南日本新聞 2009年6月26日山形新聞 2009年6月17日山陰中央新聞 
2009年6月2O日中日新聞 2009年6月21日千葉日報 2009年9月18日信濃毎日新聞 2009年10月11日朝日新聞 2009年11月7朝日新聞2009年12月13日朝日新聞 市民公開講座 9件、パンフレット15種類

発表件数

原著論文(和文)
4件
研究代表者・研究分担者の業績数
原著論文(英文等)
128件
研究代表者・研究分担者の業績数
その他論文(和文)
15件
研究代表者・研究分担者の業績数
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
34件
研究代表者の国内における学会・研究会での発表数
学会発表(国際学会等)
1件
2009年APASLにて分担研究者芥田憲夫
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
研究代表者が出席した厚生労働省肝炎専門家会議んいて医療助成について審議、東京都ウイルス肝炎対策協議会にて東京都医療助成を審議の数
その他成果(普及・啓発活動)
22件
上記その他のインパクトを参照(ただし研究代表者の業績のみを掲載した。)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Arase Y, Suzuki F, Suzuki Y,et al
Sustained virological response reduces incidence of onset of type 2 diabetes in chronic hepatitis C
Hepatology ,  (49) , 739-744  (2009)
原著論文2
Akuta N, Suzuki F, Hirakawa M,et al
A Matched Case-Controlled study of 48 and 72 weeks of Peginterferon plus Ribavirin Combination Therapy in Patients Infected With HCV Genotype 1b in Japan: Amino Acid Substitutions in HCV Core Region as Predictor of Sustained Virological Response
Journal of Medical Virolory ,  (81) , 452-458  (2009)
原著論文3
Akuta N, Suzuki F, Kawamura Y,et al
Virological Response and Hepatocarcinogenesis in Lamivudine-resistant Hepatitis B Virus Genotype C Patients treated with Lamivudine plus Adefovir Dipivoxil
Intervirology , 6 (51) , 385-393  (2009)
原著論文4
Akuta N, Suzuki F, Hirakawa M, et al
Amino acid substitutions in the hepatitis C virus core region of genotype 1b are the important predictor of severe insulin resisitance inpatients without cirrhosis and diabetes mellitus
Journal of Medical Virology ,  (81) , 1032-1039  (2009)
原著論文5
Ikeda K, Arase Y, Kawamura Y,et al
Significance and neccesities of interferon therapy in elderly patients with hepatitis C virus-related chronic liver disease
American Journal of Medicine ,  (122) , 479-486  (2009)
原著論文6
Sezaki H, Suzuki F, Akuta N,et al
An open pilot study exploring the efficacy of fluvastatin, pegylated interferon and ribavirin in patients with C virus genotype 1b in high viral loads
Intervirology ,  (52) , 43-48  (2009)
原著論文7
Sezaki H, Suzuki F, Kawamura Y,et al
Poor Response to Pegylated Interferon and Ribavirin in Aged Women Infected with Hepatitis C Virus of Genotype 1b in High Viral Loads
Dig Dis Sci ,  (54) , 1317-1324  (2009)
原著論文8
Suzuki F, Kobayashi M, Kumada H
Correlation Between Serum Hepatitis B Virus Core-Related Antigen and Intrahepatic Covalently Closed Circular DNA Chronic Hepatitis B Patients
Journal of Medical Virology ,  (81) , 27-33  (2009)
原著論文9
Suzuki Y, Suzuki F, Kawamura Y,et al
Efficacy of entecavir treatment for lamivudine-resistant hepatitis B over 3 years: Histological improvement or entecavir resistance?
Journal of Gastroenterology and Hepatology ,  (24) , 429-435  (2009)
原著論文10
Okanoue T, Itoh Y, Hashimoto H,et al
Predictive value of amino acid sequences of the core and NS 5A regions in antiviral therapy for hepatitis C: a Japanese multi-center study
Journal of Gastroenterology ,  (44) , 952-963  (2009)
原著論文11
Akuta N, Suzuki F, Hirakawa M, et al
Association of amino acid substation pattern in core protein of hepatitis C virus Genotype 2a high viral load and virological response to interferon-ribavirin combination therapy
Intervirology ,  (52) , 301-309  (2009)
原著論文12
Suzuki F, Akuta N, Suzuki Y,et al
Rapid loss hepatitis C virus genotype 1b from serum in patients receiving a triple treatment with telaprevir (MP-424), pegylated interferon and ribavirin for 12 weeks
Hepatology Research ,  (39) , 1056-1063  (2009)
原著論文13
Suzuki F, Akuta N, Suzuki Y,et al
Sustained virological response in a patient eith chronic hepatitis C treated by monotherapy with the NS3-4A protease inhibitor telaprevir
Journal of clinical virology ,  (47) , 76-78  (2010)
原著論文14
Kumada H, Okanoue T, Onji M,et al
Guidelines for the treatment of cronic hepatitis and cirrhosis induced by hepatitis B virus infection for the fiscal year 2008 in Japan
Hepatology Reserch ,  (40) , 1-7  (2010)
原著論文15
Kumada H, Okanoue T, Onji M,et al
Guidelines for the treatment of cronic hepatitis and cirrhosis induced by hepatitis C virus infection for the fiscal year 2008 in Japan.
Hepatology Reserch ,  (40) , 8-13  (2010)
原著論文16
Kobayashi M, Suzuki F, Akuta N,et al
Influence of amino-acid polymorphism in the core protein on progression of liver disease in patients infected with hepatitis C virus genotype 1b
Journal of Medical Virology ,  (82) , 41-48  (2010)
原著論文17
Kobayashi M, Suzuki F, Akuta N, et al
Correlation of YMDD mutation and breakthrough hepatitis with hepatitis B virus DNA and serum alanine aminotransferase during lamivudine treatment in hepatitis B
Hepatology Reserch ,  (40) , 125-134  (2010)
原著論文18
Ohkawa K, Takehara T, Kato M,et al
Mutations associated with the therapeutic efficacy of adefovir dipivoxil added to lamivudine in patients resistant to lamivudine with type B chronic hepatitis
Journal of Medical Virology ,  (81) , 798-806  (2009)
原著論文19
Arase Y, Suzuki F, Akuta N, et al
Combination Therapy of Peginterferon and Ribavirin for Hepatitis C Patients with Genotype 1b and Low-virus Load
Internal Medicine ,  (48) , 253-258  (2009)
原著論文20
Arase Y, Fumitaka S, Ikeda K, et al
Multivariate analysis of risk factors for the development of type 2 diabetes in nonalcoholic fatty liver disease
Journal of Gastroenterology ,  (44) , 1064-1070  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-