健康づくりのための身体活動・運動の実践に影響を及ぼす原因の解明と科学的根拠に基づく対策の推進のためのエビデンス創出

文献情報

文献番号
202308009A
報告書区分
総括
研究課題名
健康づくりのための身体活動・運動の実践に影響を及ぼす原因の解明と科学的根拠に基づく対策の推進のためのエビデンス創出
課題番号
22FA1004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
澤田 亨(早稲田大学 スポーツ科学学術院)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 茂(東京医科大学公衆衛生学分野)
  • 岡 浩一朗(早稲田大学 スポーツ科学学術院)
  • 小熊 祐子(慶應義塾大学スポーツ医学研究センター・大学院健康マネジメント研究科)
  • 小野 玲(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 身体活動研究部)
  • 中田 由夫(筑波大学 体育系)
  • 原田 和弘(神戸大学 人間発達環境学研究科)
  • 宮地 元彦(早稲田大学 スポーツ科学学術院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
16,918,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2024年1月、健康日本21(第三次)における身体活動・運動分野の取組を推進するため、健康づくりに関わる専門家を対象者に身体活動・運動に係る推奨事項や参考情報をまとめた「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(以下、新ガイド)」が公表された。
今後、国民に向けた「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」の改訂が行われる予定であり、これらのガイドを最大限に活用していくために、身体活動・運動の実践に影響を及ぼす要因を解明するとともに、ガイドが健康政策に及ぼす影響や国民の行動変容に及ぼす影響を確認し、EBPM(根拠に基づく政策立案)に資する質の高いエビデンスを提供する。
研究方法
1) 身体活動・運動量を減少させる社会人口統計学的要因を特定するために横断的・縦断的な分析を行った。また、国民健康・栄養調査のデータのデータベース化を行った。
2) 新聞(全国紙5紙)における座りすぎの問題の掲載状況を調査した。また、新ガイドの遵守率や、遵守者・非遵守者の特徴を明らかにした。さらに、身体活動および座位行動と行動経済学的特性の関連を調査した。
3) 安全に運動指導をおこなうためのソフトとハード要件を解明するためのレビューを行った。また、ハード要件の整理を行った。さらに、米国のガイドラインを確認した。加えて、リスクアセスメントの雛型の作成と試行をおこなった。
4) 国民健康・栄養調査の運動習慣、歩数、体格・体力に関連する項目を整理した。また、国民健康・栄養調査で使用されている歩数計と加速度計内蔵の活動量計との歩数比較をおこなった。
5) 身体活動指針の認知度と国民の行動変容の関係解明するために、縦断調査研究の1年後調査をこなった。また、身体活動指針の熟読の影響を検証するランダム化比較試験をおこなった。さらに、身体活動増加の最大許容時間に関する調査を行った。
6) 身体活動・運動による健康効果の機序を解明するために、同一個人の反復測定による縦断解析を用い、加齢による最高心拍数の変化を調査した。
7) 妊産婦の身体活動ガイドライン(案)を作成するためのシステマティックレビューを行った。
8)「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」の改訂に向けた課題を整理した。
結果と考察
1)歩行時間が短いことと関連する人口統計学的要因と近隣環境要因を特定した。社会的、物理的環境を整備することの重要性が示唆された。
2)座りすぎの問題を主要トピックとしている記事は22件であった。科学的根拠に基づく座位行動の減少策を効果的に国民に知らせられるよう、報道機関に対する働きかけが必要だと考えられた。また、身体活動基準の遵守率は成人28.3%、高齢者31.5%であった。社会人口統計学的特徴は、成人では男性・若年層・独身・高学歴・適正BMI・就労者が高く、高齢者では、若年・男性・既婚・高学歴・就労者の遵守率が高かった。さらに、リスク選好においてリスク回避的であることと座位時間が短い・移動場面の中強度身体活動時間が長いことと関連していた。
3) 有害事象を報告した論文は多くなく傷害の報告が中心であった。ハード要件は、AEDと血圧計は必須と考えられた。米国のガイドラインには転倒事故を防ぐ工夫が求められていることが明らかとなった。リスクアセスメントの雛型については、施設の性質等に応じて、追加項目をアドインできるとよいと考えられた。
4) 運動習慣の定義や歩数調査用の歩数計は一貫して同じものが使用されていた。また、手首に装着した活動量計を除く機種に関しては概ね直線回帰により変換可能と考えられた。
5) アクティブガイドの認知度は事前調査の認知度よりも向上していた。また、身体活動指針を認知していることは、1年後の身体活動の実践状況が良好であることと関連していた。アクティブガイドの熟読は、熟読直後の知識・行動意図や、熟読1週間後の知識や余暇の身体活動へ好影響がもたらしていた。一方、新しいガイド(案)の熟読は、熟読直後の知識へ好影響をもたらすに止まっていた。対象者の48.2%が1日15分の身体活動増加を許容していた。
6) 年齢と最高心拍数の回帰式は男女それぞれ最高心拍数=222.6 - 0.92年齢および210.4 - 0.79年齢であることを確認した。
7) 1次スクリーニングで69件の論文を抽出した。今後、2次スクリーニングとデータ抽出を進め、研究統合を行う。
8)国民や指導者が誤解することなく適切に活用されるためにはどのような推奨事項がより実効性があるかを明らかにする必要があると考えられた。
結論
最終年度における身体活動・運動無関心層にも行動変容を促す身体活動推進政策の提案に向けて、それぞれの研究において貴重な研究結果が得られた。

公開日・更新日

公開日
2024-08-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2024-10-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202308009Z