性感染症に関する予防、治療の体系化に関する研究

文献情報

文献番号
200931034A
報告書区分
総括
研究課題名
性感染症に関する予防、治療の体系化に関する研究
課題番号
H21-新興・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小野寺 昭一(東京慈恵会医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 荒川 創一(神戸大学 医学部)
  • 飯沼 雅朗(日本医師会)
  • 川名 尚(帝京大学医学部溝口病院)
  • 本田 まりこ(東京慈恵会医科大学附属青戸病院)
  • 松本 哲朗(産業医科大学)
  • 大西 真(国立感染症研究所)
  • 岡部 信彦(国立感染症研究所感染症情報センター)
  • 大日 康史(国立感染症研究所感染症情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1.性感染症患者の実態把握のため、地域を限定した性感染症の全数調査を行って発生動向調査を検証するとともに、若者における性感染症の無症候感染者についても実態を調査する。
2.STD患者、耳鼻咽喉科受診者などを対象として咽頭の性感染症病原体保有状況について実態把握を行う。梅毒の届け出基準の見直しを行う。
3.性器ヘルペスについてはウイルス型の血清疫学調査を、HPVについてはHPV型別蔓延状況の調査を、薬剤耐性淋菌については分子型別法を確立する。
4.疾患毎の対策を明らかにし、総合的な性感染症の蔓延予防策を構築する。
研究方法
1.7モデル県における性感染症全数調査を行い、流動人口が多い千葉県と少ない岐阜県において患者の年齢や地域性を考慮した調査を行う。
2.無症候の若者を対象として性器クラミジアの郵送による検査を行い、検査結果を受診に結び付ける体制を構築する。
3.梅毒検査における倍数希釈法と自動化法の相関性を評価する。
4.STD患者、耳鼻科受診者などを対象としてうがい液を用いた咽頭の性感染症病原体の調査を行う。
5.性器ヘルペスについては血清疫学調査、尖圭コンジローマではHPV-DNAの検出、淋菌については分子タイピングなど新しい微生物学的な解析を行う。
結果と考察
3年間のモデル県における全数調査では、性器ヘルペスを除いて減少傾向はみられなかった。今回の対象となった医療機関において定点医療機関の占める割合は地域でばらつきが大きいことが明らかになった。若者における性器クラミジア陽性率は3%と低かったが、若者が受診するにあたってのサポート体制の構築が必要である。性器ヘルペスでは、女性の40%が1型、60%が2型であり、尖圭コンジローマが生殖器に観察されない女性の6%にコンジローマタイプのHPVが検出された。これらの調査はわが国のウイルス性の性感染症の将来予測のための資料となる。淋菌の分子タイピングの結果、新規薬剤耐性淋菌の出現と耐性遺伝子の水平伝播により異なる遺伝型の耐性淋菌が出現する機構の一端が明らかになった。
結論
7モデル県における性感染症全数調査と若者の無症候の性感染症患者の動向については今後も継続して調査する必要がある。また、梅毒については新たな届出基準の制定が必須である。ウイルス性の性感染症である性器ヘルペスと尖圭コンジローマについては、血清疫学調査により質的な実態把握が可能となる。淋菌の分子タイピングは耐性淋菌の時間的・地理的変遷を知るための資料となる。これらの結果はわが国におけるきめ細かい性感染症対策の立案に資する。

公開日・更新日

公開日
2010-07-14
更新日
-