遺体を取り扱う事業者や無縁改葬等の現状調査及び今後の方策検討に資する研究

文献情報

文献番号
202306004A
報告書区分
総括
研究課題名
遺体を取り扱う事業者や無縁改葬等の現状調査及び今後の方策検討に資する研究
課題番号
23CA2004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
横田 睦(公益社団法人 全日本墓園協会 理事会・事務局)
研究分担者(所属機関)
  • 浦川 道太郎(公益社団法人全日本墓園協会 調査・研究・事業部 )
  • 小松 初男(虎の門法律事務所)
  • 森山 雄嗣(公益社団法人全日本墓園協会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
6,584,000円
研究者交替、所属機関変更
(該当なし)

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、我が国は死亡者が増加しており、都市部を中心に火葬を行うまでの期間が長期化する傾向の指摘がある他、新型コロナウイルス感染症の発生を機に死亡から埋火葬まで、公衆衛生、公共の福祉の見地から遺体を適切に取り扱う重要である。また、遺体を取り扱う事業については、基本となる法的規制はなく、特に業界団体に属していない事業者については、把握をする方法がない。かかる状況下、遺体を取り扱う事業について、業界団体に属していない事業者を含めて、実態を調査するとともに、どのような方策をとることが考えられるかを検討する必要がある。その方策の一つとして、業界横断的な第三者(機関)による、「登録制度」の導入により、必要な情報を共有する仕組みも併せて検討に値する。これらの検討課題に関して、令和4年度厚生労働科学特別研究事業(新型コロナウイルスに感染した御遺体の取り扱いを含む、墓地埋葬に関する法律に関する諸問題の検証研究)で得られた知見も、今後の検討にあたり貴重な資料となる。
また、別に、無縁墳墓等(死亡者の縁故者がない墳墓又は納骨堂)の更なる増加が懸念される中、無縁改葬(無縁墳墓等の死体・焼骨を他の墳墓や納骨堂に移すこと)の円滑な実施に資するよう、無縁改葬の手続や無縁改葬後の墓石等の取り扱いを具体的に示す。
研究方法
本研究では、多様な観点から検討を加え、適切な成果が得られるよう、墓地・埋火葬に関する法律や実務に精通した専門家である研究代表者のほか、民法・消費者問題の法制度・判例研究・実務の専門家である3名の研究分担者に加え、公衆衛生分野、葬祭関係分野、消費者行政分野の研究協力者も参画する研究班を研究開始時に発足させ、検討を進めた。

 本研究を進めるに当たり、公衆衛生上の問題を検討する際に「安置所等における衛生基準の確立に向けた実証研究」(23LA0501)と連携する他、遺体の取扱いについての先行研究であ る令和4年度厚生労働科学特別研究事業(新型コロナウイルスに感染した御遺体の取り扱いを含む、墓地埋葬に関する法律に関する諸問題の検証研究)活用した。なお、以下、「遺体を取り扱う事業者の課題を調査し、登録基準案を作成する研究」と、「無縁改葬の手続き、無縁改葬後の墓石その他の物品の取扱い等への留意すべき私法上の規定・内容等の整理・研究」とで、研究体制を大きく分けて進めた。
結果と考察
●火葬場におけるアンケート結果は、火葬場での遺体の感染症の確認の有無は、「常に確認」されている。残骨灰と集じん灰の分別は、している、していないがほぼ同程度。残骨灰の処理処分は「処理業者に委託」が非常に多い。
●葬儀事業者アンケート結果は、公衆衛生の課題として、感染症対策のガイドラインは普及しているが、遺体を扱う際の安全面の不安を抱え、懸念もある。また、遺体の適切な取扱いは、遺体安置施設の管理上の基準などは、「ない」施設が半数以上である。本研究は、事業者について業界横断的な第三者による登録制度を検討した。継続的に実態把握や知見の収集が必要であり、登録制度はこれに寄与する方策と思料される。
●無縁改葬を私法上から整理すると、① 無縁改葬手続きに着手開始が出来る目安。②「在籍調査」。③ 使用関係の解消。これは地方公共団体の公営墓地と、民営墓地で個別の対応となる。④ 墓石の撤去。墓石(墳墓)は、墓所区画使用権の標示物であり、墓地使用権が失われた時点で、意義が失われる。⑤ 無縁改葬では、無縁改葬後の焼骨を如何に適切に取扱うかが要諦となる。墓埋法第15条、墓埋法施行規則第7条に拠る、墓籍簿の整備が求められる。
結論
●火葬場アンケートに関して。
多死社会において、現状の火葬場が、どの様な受け入れ体制を整えているのか、ハードウエア(施設・火葬炉)とソフトウエア(運用人員体制)の状況と展望の一端が明らかとなった。残骨灰の取り扱いは、我が国初めて全体調査を行い、その状況の一端が明らかとなった。
●葬儀事業者アンケートに関して
我が国における「全て」の儀事業者に対する調査を行った。得られた知見からは、それら「全て」の儀事業者を登録制度下に組織化する意義について、「①:特に業界団体に属していない事業者について、業者の存在を把握することで、関連通知等について、周知の徹底が図れる」「②:事故事例、不法・違法行為にかかわる行政処分事例についての情報共有が可能となり、葬儀事業者の質的向上を図る起点となり得る」などが挙げられる。登録制度を先行させ、葬儀事業者の実態を継続して把握し得る「制度」として運用を図るという考え方もある。
●無縁墳墓の改葬手続に関して
実務上の慣習として許容されている実態などを踏まえ、それらを私法上に置き換えて理論化するには、どのように整理することが出来るのか、という意義のある提示をまとめることが出来た。

公開日・更新日

公開日
2024-07-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

その他

公開日・更新日

公開日
2024-07-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202306004C

収支報告書

文献番号
202306004Z