超急性期脳梗塞患者の救急搬送及び急性期病院受け入れ体制に関する実態調査研究

文献情報

文献番号
200926063A
報告書区分
総括
研究課題名
超急性期脳梗塞患者の救急搬送及び急性期病院受け入れ体制に関する実態調査研究
課題番号
H19-心筋・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
木村 和美(川崎医科大学 脳卒中医学)
研究分担者(所属機関)
  • 有賀 徹(昭和大学 医学部 救急医学)
  • 岡村 智教(国立循環器病センター 予防検診部)
  • 宮松 直美(滋賀医科大学医学部 臨床看護学講座)
  • 鈴木 幸一郎(川崎医科大学 救急医学)
  • 井口 保之(川崎医科大学 脳卒中医学 )
  • 芝崎 謙作(川崎医科大学 脳卒中医学 )
  • 岩永 健(川崎医科大学 脳卒中医学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
15,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の脳卒中有病者数は200万人を大きく超え国民の医療保険、介護保険に占める脳卒中・脳血管疾患の比重は年々増加している。この現状を打開するためには①適切な脳卒中発症予防対策によって脳卒中の発症自体を抑制すること、さらに万が一脳卒中を発症した場合には②発症後の「早期受診・早期治療」によって後遺障害を最小限に押さえ込むこと、そのために最適な急性期脳卒中診療体制を築くことが重要である。本研究は一般市民、救急隊、医療施設を対象とし、急性期脳卒中医療の現状を分析し、目指すべき医療システムを関係諸機関に提言することを目的としている。
研究方法
①一般市民の脳卒中症状知識習得のために実施されている脳卒中啓発法を比較検証し、対費用効果を算出した。③H20年9-11月に全国807消防本部を対象に実施したアンケート調査結果を解析し、脳卒中を疑う傷病者の救急搬送の問題点を明らかにした。④超急性期脳梗塞患者の受け入れ体制に関する全国病院アンケート調査を実施した。⑤テレビ機能付き携帯電話を用いた遠隔診療(stroke mobile telemedicine; SMT)を実施した。
結果と考察
①テレビによる脳卒中啓発活動は市民の脳卒中症状知識習得に効果的であった。発症症状の完答率を1%上昇させるための脳卒中啓発にかかるコストは、1世帯あたり109?165円であった。②各地域の医療体制に適した急性期脳卒中患者搬送のルールは、自治体、医療機関が協力して設定することが望ましい。③急性期脳卒中患者の受け入れ体制には脳卒中専門医師の不足、偏在に起因する医療の地域間格差が存在する。⑤SMTの導入で、地域病院における脳卒中患者受け入れ体制は改善する可能性が示唆された。
結論
今回の研究結果から、一般市民の脳卒中症状知識習得に最適な啓発方法の普及・開発、救急搬送システムのルール作り、急性期脳卒中患者の受け入れ体制整備が必要であることが明らかになった。このような問題点を解決するためには、自治体横断的、省庁横断的な新たな枠組みが不可欠と考える。日本中に「急性期脳卒中患者への対応」が可能な医療体制を構築することを理念に掲げた「脳卒中対策基本法」等の法整備が急務であろう。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

文献情報

文献番号
200926063B
報告書区分
総合
研究課題名
超急性期脳梗塞患者の救急搬送及び急性期病院受け入れ体制に関する実態調査研究
課題番号
H19-心筋・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
木村 和美(川崎医科大学 脳卒中医学)
研究分担者(所属機関)
  • 有賀 徹(昭和大学医学部 救急医学)
  • 岡村智教(国立循環器病センター 予防検診部)
  • 宮松直美(滋賀医科大学医学部 臨床看護学講座)
  • 鈴木幸一郎(川崎医科大学 救急医学)
  • 井口保之(川崎医科大学 脳卒中医学)
  • 芝崎謙作(川崎医科大学 脳卒中医学)
  • 岩永 健(川崎医科大学 脳卒中医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
超急性期脳梗塞患者に対してt-PA療法を実施すると、脳梗塞後遺症が軽減することが明らかにされた。この治療の対象は発症3時間以内の超急性期脳梗塞患者のみであり、多くの国民がこの治療法を享受するためには、脳梗塞疑い患者をt-PA療法が実施できる医療機関に迅速に搬送し、病院到着後直ちに診療を開始できる急性期脳卒中診療体制を構築する必要がある。本研究は一般市民、救急隊、医療施設を対象に質問紙調査を行うことにより、治療の現状を分析し、発症から治療開始までの円滑なシステムの構築と効果的な市民啓発方法について明らかにし、関係諸機関に提言することを目的としている。
研究方法
①公共放送(NHK岡山放送局)による脳卒中啓発効果を明らかにするために、一般市民を対象とした意識調査を行った。②また、紙媒体、講演会、市民公開講座などによる脳卒中啓発効果の費用対効果を検証した。③H20年9-11月に全国807消防本部を対象に実施したアンケート調査結果を解析し、発症から搬送までの時間に関わる因子を検討した。④超急性期脳梗塞患者の受け入れ体制に関する全国病院アンケート調査を実施した。⑤テレビ機能付き携帯電話を用いた遠隔診療(stroke mobile telemedicine; SMT)を実施し急性期脳卒中患者の転帰が改善するか検証した。
結果と考察
①平成22年4月以降に予定している介入後意識調査を行うことによって、公共放送による啓発活動の介入効果が評価される。②発症症状の完答率を1%上昇させるための脳卒中啓発にかかるコストは、1世帯あたり109?165円と推定された。③小規模な消防本部と比較し、大規模な消防本部で適切な急性期脳卒中患者搬送のルール作りが必要と考えられた。④t-PA療法を年間11例以上実施するためには脳卒中専門医師が3名以上の勤務が必要であった。⑤SMTの導入で、死亡率が減少し、一方でt-PA静注療法はより多く実施できる可能性が示唆された。
結論
今回の研究結果から、脳卒中に関する知識啓発活動の有用性、搬送システムや医療提供側の整備充実が必要であることが明らかになった。脳卒中患者は増加の一途をたどり、患者本人や家族の負担だけでなく、自治体の医療費の負担も社会問題となりつつある。限られた医療資源を有効に利用しながら、日本中に「急性期脳卒中患者への対応」が可能な医療体制を構築することが急務である。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200926063C

成果

専門的・学術的観点からの成果
①効果的な脳卒中市民啓発活動は、テレビCMなどマスメデイアの利用であることが明らかとなった。また脳卒中啓発活度に要する費用対効果が明きからとなった。②地域における急性期脳卒中患者搬送体制は、管轄する消防本部ごとの特性に依存することが明らかになった。③急性期脳卒中患者受け入れ体制の病院間、地域間格差が存在し、その是正には、テレビ電話を用いた遠隔医療システムの構築が有効であることを示した。
臨床的観点からの成果
①一般市民に対する効果的な啓発活動を実施することによって、急性期脳卒中患者が発症早期から適切な医療機関を受療できる。②救急隊は日本臨床救急医学会が提唱する病院前脳卒中ストロークスケールを運用することで、傷病者を適切な医療機関へ搬送することが可能になる。③地域間・病院間の診療体制格差を是正するためには、地域の脳卒中専門病院に3名以上の脳卒中専門医師を配備すべきである。また、遠隔医療システムは、診療体制が整備できない病院でt-PA療法が実施可能となり、患者転帰が改善する可能性が示唆される。
ガイドライン等の開発
①脳卒中啓発活動は、紙媒体、市民公開講座、およびテレビCMなどを利用し、医療機関、行政そして、マスメデイアが協力して実施し、その効果を検証すべきである。②脳卒中疑い傷病者の救急搬送を円滑に実施するためには、倉敷病院前脳卒中スケールの適切な運用が必須である。③全国に地域脳卒中センターを設置し、脳卒中診療の集約化(脳卒中専門医師の集中的配備、遠隔医療システムの統合基地)を進めるべきである。
その他行政的観点からの成果
①脳卒中啓発活動によって一般市民の知識を向上(脳卒中症状の正解率を1%上昇)させるために要するコストは、1世帯あたり109?165円である。②各医療圏ごとの救急搬送体制の実際を定期的にモニターすることが望まれる。③医師数全体の増員、適正配備について行政が積極的に介入する必要がある。④急性期脳卒中診療に関わる問題を解消するための法整備(脳卒中基本対策法)の可及的速やかな成立と運用が求められる。
その他のインパクト
①第3?5回岡山脳卒中市民公開講座の開催(平成19年?21年まで各1回)②NHK岡山放送局作成 ニュース番組(ニュース6:毎週水曜日18時15分?20分に脳卒中啓発プログラムを放送。全国版ニュース番組(平成21年10月10日、10月11日)放送。脳卒中啓発キャンペーンCM(1分版:森末慎二主演)を各番組の空き時間に放送。③急性期脳卒中医療シンポジウム(平成21年)の開催

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
第33回日本脳卒中学会(京都) 第27回日本神経治療学会(熊本) 第50回日本神経学会(仙台)
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
5件
第5回岡山脳卒中市民公開講座(岡山市) 急性期脳卒中医療シンポジウム(倉敷市) No卒中キャンペーン(岡山市)等

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Iguchi Y, Kimura K, Shibazaki K, et al.
Increasing number of stroke specialists should contribute to utilization of IV rt-PA: Results of questionnaires from 1466 hospitals in Japan
J Neurol Sci. , 279 (1) , 66-69  (2009)
原著論文2
Iguchi Y, Kimura K, Shibazaki K, et al.
Number of stroke physicians is the key to preparing IV rt-PA.
Cerebrovasc dis. , 28 (5) , 460-467  (2009)
原著論文3
井口保之、木村和美、鈴木幸一郎
急性期脳卒中患者受け入れ体制に関する全国病院実態調査研究
脳卒中 , 31 (3) , 141-147  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-