文献情報
文献番号
202226002A
報告書区分
総括
研究課題名
化審法における監視化学物質・優先評価化学物質の長期毒性評価スキームの創出に関する研究
課題番号
20KD1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
鰐渕 英機(大阪公立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 鈴木 周五(大阪公立大学大学院医学研究科)
- 豊田 武士(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター・病理部)
- 横平 政直(香川大学 医学部 腫瘍病理学)
- 加藤 寛之(名古屋市立大学 大学院医学研究科実験病態病理学)
- 魏 民(大阪公立大学 大学院医学研究科)
- 戸塚 ゆ加里(日本大学薬学部 環境衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
19,239,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
化審法の規制区分「監視化学物質」及び「優先評価化学物質」には、スクリーニング毒性試験の結果から健康影響の懸念を評価されているものの、慢性毒性や発がん性が不明の物質が多く存在する。しかし、それらの物質を全て長期試験により検討することは、莫大な費用や時間等を必要とするため困難である。そこで、化学物質の発がん性を迅速に、かつ高精度に評価できる試験法及び試験スキームの確立は、社会的にも経済的にも非常に重要であり、国民生活の安全・安心を保証する。
本研究では化学物質の標的となる臓器の大半は肝臓であることに着目し、肝発がん性を短期で高精度に検証できるシステムを確立するとともに、問題となる「監視化学物質」及び「優先評価化学物質」について肝発がん性評価を行った。5研究施設の協同体制にて下記の研究を実施した。我々が以前に開発した「遺伝子セットを用いた遺伝毒性肝発がん物質超短期検出法」及び「DNAアダクトーム解析による遺伝毒性評価」はいずれも正答率が9割を超える高精度試験系であるが、「監視化学物質」及び「優先評価化学物質」を含め化学物質数を増やし、より信頼性の高い評価法へと発展させた。加えて、「遺伝子セットを用いた非遺伝毒性肝発がん物質短期検出法」を確立した。
本研究では化学物質の標的となる臓器の大半は肝臓であることに着目し、肝発がん性を短期で高精度に検証できるシステムを確立するとともに、問題となる「監視化学物質」及び「優先評価化学物質」について肝発がん性評価を行った。5研究施設の協同体制にて下記の研究を実施した。我々が以前に開発した「遺伝子セットを用いた遺伝毒性肝発がん物質超短期検出法」及び「DNAアダクトーム解析による遺伝毒性評価」はいずれも正答率が9割を超える高精度試験系であるが、「監視化学物質」及び「優先評価化学物質」を含め化学物質数を増やし、より信頼性の高い評価法へと発展させた。加えて、「遺伝子セットを用いた非遺伝毒性肝発がん物質短期検出法」を確立した。
研究方法
非遺伝毒性肝発がん物質短期検出法の検証は、OECDテストガイドラインのTG407:げっ歯類における28日間反復経口投与毒性試験法に則って、ラットに被験物質投与を行い、肝臓における遺伝子発現についてマイクロアレイにより取得した。今年度は、被検物質として優先評価物質6種類を含む合計10種を28日間における最大投与用量で投与した。肝発がん性の予測において、これまでに構築した非遺伝毒性肝発がん物質検出法の検出感度をさらに高めるため、遺伝子セットについて再選定し、新たな検出モデルを構築し判定を行った。
遺伝毒性肝発がん物質超短期検出法の検証試験では、ラットに被験物質の単回強制胃内投与試験を行った。これまでの検出モデル-1を用いた検討において偽陰性となった遺伝毒性肝発がん物質の5種類について新たな肝発がん検出モデル-2を作成し検討した。投与24時間後の肝臓における網羅的遺伝子発現解析を行い、優先評価化学物質であるo-phenylenediamine、既知の遺伝毒性肝発がん物質である1-amino-2,4-dibromoanthraquinoneを陽性とするモデル(検出モデル-2)を作成し、5種類の物質について判定を行った。
高分解能精密質量分析装置を用いたDNA付加体の網羅的解析(DNAアダクトーム)を用いて、遺伝毒性および肝発がん性の異なる物質の肝臓におけるDNA損傷の詳細な評価を行なった。毒性予測モデルの更なる正答率向上に向け、得られたデータに対して標準化を行い、遺伝毒性予測ラベルと発がん性予測ラベルを作成し、ランダムフォレスト(RF)と線形判別分析(LDA)及びLeave-One-Out交差検証による機械学習手法により検討した。
遺伝毒性肝発がん物質超短期検出法の検証試験では、ラットに被験物質の単回強制胃内投与試験を行った。これまでの検出モデル-1を用いた検討において偽陰性となった遺伝毒性肝発がん物質の5種類について新たな肝発がん検出モデル-2を作成し検討した。投与24時間後の肝臓における網羅的遺伝子発現解析を行い、優先評価化学物質であるo-phenylenediamine、既知の遺伝毒性肝発がん物質である1-amino-2,4-dibromoanthraquinoneを陽性とするモデル(検出モデル-2)を作成し、5種類の物質について判定を行った。
高分解能精密質量分析装置を用いたDNA付加体の網羅的解析(DNAアダクトーム)を用いて、遺伝毒性および肝発がん性の異なる物質の肝臓におけるDNA損傷の詳細な評価を行なった。毒性予測モデルの更なる正答率向上に向け、得られたデータに対して標準化を行い、遺伝毒性予測ラベルと発がん性予測ラベルを作成し、ランダムフォレスト(RF)と線形判別分析(LDA)及びLeave-One-Out交差検証による機械学習手法により検討した。
結果と考察
非遺伝毒性肝発がん物質短期検出法の検証において、これまで検討した89物質について、従来モデルでは感度39%、特異度100%と判定された。感度および特異度の改善のため、3つの異なる発がん機序ごとにモデルを作成し、その成果を統合するモデル(機序別統合モデル)は、感度64%(23/36物質)、特異度94%(50/53物質)、正答率が82%(73/89物質)となる高い精度で検出できる可能性が示唆された。
遺伝毒性肝発がん物質超短期検出法の検証試験において、検出モデル-1で偽陰性となった5物質のうち4物質が陽性判定とされる検出モデル-2構築が出来た。我々の開発した2つの検出モデルを組み合わせて用いることで、遺伝毒性肝発がん物質を感度97%及び特異度95%と、高い精度で検出可能であった。
遺伝毒性肝発がん物質超短期検出法で得られた肝組織を用いたDNAアダクトーム解析による評価ではRFよりもLDAを用いた結果が良好であり、発がん性(83%)および遺伝毒性(65%)を予測するモデルが作成できた。
遺伝毒性肝発がん物質超短期検出法の検証試験において、検出モデル-1で偽陰性となった5物質のうち4物質が陽性判定とされる検出モデル-2構築が出来た。我々の開発した2つの検出モデルを組み合わせて用いることで、遺伝毒性肝発がん物質を感度97%及び特異度95%と、高い精度で検出可能であった。
遺伝毒性肝発がん物質超短期検出法で得られた肝組織を用いたDNAアダクトーム解析による評価ではRFよりもLDAを用いた結果が良好であり、発がん性(83%)および遺伝毒性(65%)を予測するモデルが作成できた。
結論
遺伝子セットを用いた非遺伝毒性肝発がん物質短期検出法では、感度64%、特異度84%、正答率が82%、遺伝子セットを用いた遺伝毒性肝発がん物質超短期検出法では、感度97%、特異度95%、正答率が96%と、いずれも高い精度で検出できる可能性が示唆された。DNAアダクトーム解析及び線形判別分析により、遺伝毒性や肝発がん性の有無を分別できる可能性を示した。
公開日・更新日
公開日
2023-07-31
更新日
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