患者・家族・国民に役立つ情報提供のためのがん情報データベースや医療機関データベースの構築に関する研究

文献情報

文献番号
200924033A
報告書区分
総括
研究課題名
患者・家族・国民に役立つ情報提供のためのがん情報データベースや医療機関データベースの構築に関する研究
課題番号
H19-3次がん・一般-034
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
若尾 文彦(国立がんセンター中央病院 放射線診断部)
研究分担者(所属機関)
  • 飯塚 悦功(東京大学大学院工学系研究科)
  • 石川 ベンジャミン 光一(国立がんセンター がん対策情報センター)
  • 小山 博史(東京大学大学院医学系研究科)
  • 柴田 大朗(国立がんセンター がん対策情報センター)
  • 新海 哲(四国がんセンター)
  • 水流 聡子(東京大学大学院工学系研究科)
  • 平田 公一(札幌医科大学)
  • 福井 次矢(聖路加国際病院)
  • 松山 琴音(先端医療振興財団)
  • 棟近 雅彦(早稲田大学)
  • 山口 直人(日本医療機能評価機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
70,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における患者・家族・国民に役立つ情報提供を実施するためのがん情報データベースや医療機関データベースを効率的に構築・運用する体制について検討し、有効性が検証されたものからがん情報提供ネットワーク等を通じて、迅速に患者に届けることができる体制を整えることを目的とする。
研究方法
ガイドライン作成・更新の体制を検討するためのアンケート調査を実施した。
がん専門医療施設の医療者により、標準パスについて検討した。
患者状態適応パスとして、肺・乳・胃・大腸・前立腺がん手術の臨床プロセスチャートとユニットシートの電子コンテンツを作成し、施設で実施されている診療内容と基本コンテンツの差違の分析方法の検討を行った。国内3臨床試験登録システムから新たに登録されたがん領域の試験を抽出し、領域×開発段階別の情報提供を新規に追加した。がん診療連携拠点病院整備指針に基づいた整備状況を確認するための電子版現況調査票の原案を作成し、厚生労働省に提示するとともに、拠点病院データベースを構築した。平成20年度 DPC調査結果として公表されている診療実績データに基づき、がん診療施設の地理的分布について、GIS(地理情報システム)を利用した分析を行った。電子カルテに蓄積されているデータを用いて、頻度の高い悪性腫瘍に関するQuality Indicator(QI)を算出し公開し、医療者アンケートにて、診療内容に与える影響を調査した。ガイドライン情報を効率的に利用するツールとして、国内の代表的な診療ガイドラインデータベースから同じ検索項目で、同時に検索表示できる分散データベース統合検索システムを開発した。また、インターネット情報サービスをがん患者等が利用する際に、予備知識がなくても必要な情報に到達できるナビゲーションシステムの開発を行った。
結果と考察
がん診療ガイドライン作成に関するアンケートより、「作成者に対する学術的評価」、「利益相反」、「保険診療とガイドラインの乖離」、「作成者に対する報酬」など問題が明らかになった。クリニカルパスデータベースの作成としては、精巣がん化学療法、胃がん手術、消化器がん化学療法、肺がん化学療法、悪性リンパ腫化学療法、リンパ浮腫保存的治療、婦人科がん化学療法の基本パスを作成した。診療ガイドラインに基づいた標準パスを策定し、全国の医療施設で活用できるデータベースを構築することで、がん診療の均てん化等に貢献することが期待される。患者状態適応型パスのがん標準コンテンツとして、肺がん・乳がん・胃がん・大腸がん・前立腺がん手術の臨床プロセスチャートとユニットシートの電子コンテンツを作成し、このコンテンツを用いて、施設で実施されている診療内容と基本コンテンツの差違の分析方法の検討を行った。がん領域の臨床試験データベースについて新たに登録されたがん領域の試験を追加し、累積1344試験とした。がん診療連携拠点病院の推薦書・現況報告書の情報のうち、患者が求める情報を抽出し、提示する画面のプロトタイプを作成するとともに、昨年度作成した電子版推薦書・現況調査票からデータ入力システムの検討を行った。患者に必要な情報をカテゴリー毎のページとすることで、がん診療拠点病院の情報へのアクセスが、容易になると考える。また、電子版推薦書・現況調査票の活用により、データ入力作業が大幅に省力化されて、データ解析が促進される。電子カルテのデータから12項目のQIを算出し、ホームページおよびがん診療ハンドブックで公開した。医療者アンケート結果から、QIの算出・公開が回答者の26%の診療内容に変化を与え、結果として医療の質が向上していく可能性が示唆された。分散データベース統合検索システムおよびナビゲーションシステムにより患者・家族を含む利用者が、サイト情報やキーワードなどの予備知識を持たなくても、がん情報の参照を簡便に実施することが可能となると考える。
結論
わが国のがん診療ガイドラインの作成公開体制に関する調査により、診療ガイドラインが円滑に作成され、更新されていくための支援の在り方、効果的な公開方法の検討が可能となると考える。また、パスデータベース、患者状態適応型パス がん標準コンテンツ、薬剤情報データベースの構築により、がん診療の均てん化に貢献することが期待される。さらに、医療機関情報データベースについて、がん診療連携拠点病院現況報告書を活用することで、効率的に全国統一の形での拠点病院情報を公開することが可能となるとともに、既存のデータであるDPCデータを用いることで、新たにデータを収集することなく、がん診療施設の診療実態を概観すること可能となり、地域のがん診療の状況の分析に有用であると考える。また、QI公開の影響に関する調査により、算出・公開が、医療者の診療内容に変化を与えていることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2016-05-31
更新日
-

文献情報

文献番号
200924033B
報告書区分
総合
研究課題名
患者・家族・国民に役立つ情報提供のためのがん情報データベースや医療機関データベースの構築に関する研究
課題番号
H19-3次がん・一般-034
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
若尾 文彦(国立がんセンター中央病院 放射線診断部)
研究分担者(所属機関)
  • 飯塚 悦功(東京大学大学院工学系研究科)
  • 石川 ベンジャミン 光一(国立がんセンター がん対策情報センター)
  • 小山 博史(東京大学大学院医学系研究科)
  • 柴田 大朗(国立がんセンター がん対策情報センター)
  • 新海 哲(四国がんセンター)
  • 水流 聡子(東京大学大学院工学系研究科)
  • 平田 公一(札幌医科大学)
  • 福井 次矢(聖路加国際病院)
  • 松山 琴音(先端医療振興財団)
  • 棟近 雅彦(早稲田大学)
  • 山口 直人(日本医療機能評価機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における患者・家族・国民に役立つ情報提供を実施するためのがん情報データベースや医療機関データベースを効率的に構築・運用する体制について検討し、有効性が検証されたものからがん情報提供ネットワーク等を通じて、迅速に患者に届けることができる体制を整えることを目的とする。
研究方法
ガイドライン作成・更新の体制を検討するためのアンケート調査を実施した。がん専門医療施設の医療者により、パスの標準化について検討した。患者状態適応パスとして、肺・乳・胃・大腸・前立腺手術の臨床プロセスチャートとユニットシートの電子コンテンツを作成し、施設で実施されている診療内容と基本コンテンツの差違の分析方法の検討を行った。国内3臨床試験登録システムから新たに登録されたがん領域の試験を抽出し、領域×開発段階別の情報提供を新規に追加した。がん診療連携拠点病院整備指針に基づいた整備状況を確認するための電子版現況調査票の原案を作成し、厚生労働省に提示するとともに、拠点病院データベースを構築した。平成20年度 DPC調査結果として公表されている診療実績データに基づき、がん診療施設の地理的分布について、GIS(地理情報システム)を利用した分析を行った。電子カルテに蓄積されているデータを用いて、頻度の高い悪性腫瘍に関するQuality Indicator(QI)を算出し公開し、医療者アンケートにて、診療内容に与える影響を調査した。ガイドライン情報を効率的に利用するツールとして、国内の代表的な診療ガイドラインデータベースから同じ検索項目で、同時に検索表示できる分散データベース統合検索システムを開発した。また、インターネット情報サービスをがん患者等が利用する際に、予備知識がなくても必要な情報に到達できるナビゲーションシステムの開発を行った。
結果と考察
平成19-21年度に新たに公開されたがん診療ガイドラインは、10種であった。さらに、9種において、第2版が公開された。ガイドライン作成・更新状況を把握するとともに問題点を明確にすることで、診療ガイドラインが円滑に作成され、更新されていくための関連組織間調整と組織形成に関する検討が可能となると考える。全国40施設からのクリニカルパス担当者による検討により、12パスを完成しがん情報サービスより公開した。診療ガイドラインに基づいた標準パスを策定し、全国の医療施設で活用できるデータベースを構築することで、がん診療の均てん化等に貢献することが期待される。肺・乳・胃・大腸・前立腺の手術の臨床プロセスチャートとユニットシートを作成し、診療内容と基本コンテンツの差違の分析方法の検討を行った。本検討により病院の標準診療を構造的に可視化が可能となり、標準診療からの乖離の分析が可能となる。がん領域の臨床試験データベースについてがん領域の試験を収集し、1344試験を登録した。領域×開発段階別の情報提供を追加することで、患者・医療関係者が、注目している領域の中でより開発段階の進んだ臨床試験へ容易にアクセスすることが可能となる。がん診療連携拠点病院の推薦書・現況報告書の情報のうち、患者が求める情報を抽出し、提示する画面のシステムを作成し、電子版現況調査票からデータ入力システムの検討を行った。患者に必要な情報をカテゴリー毎のページとして、整理することで、がん診療拠点病院の情報へのアクセスが、容易になると考える。電子版・現況調査票の活用により、データ入力作業が大幅に省力化されて、データ解析が促進される。電子カルテから12項目のQIを算出した。算出したQIは、ホームページおよびがん診療ハンドブックで公開した。医療者アンケートから、医療の質が向上していく可能性が示唆さられた。ガイドライン情報を効率的に利用するツールとして、分散データベース統合検索システムおよびナビゲーションシステムの開発を行った。
結論
わが国のがん診療ガイドラインの作成公開体制に関する調査により、診療ガイドラインが円滑に作成され、更新されていくための支援の在り方、効果的な公開方法の検討が可能となると考える。また、パスデータベース、患者状態適応型パス がん標準コンテンツ、薬剤情報データベースの構築により、がん診療の均てん化に貢献することが期待される。さらに、医療機関情報データベースについて、がん診療連携拠点病院現況報告書を活用することで、効率的に全国統一の形での拠点病院情報を公開することが可能となるとともに、既存のデータであるDPCデータを用いることで、新たにデータを収集することなく、がん診療施設の診療実態を概観すること可能となり、地域のがん診療の状況の分析に有用であると考える。また、QIの公開の影響に関する調査により、QIの算出・公開が、医療者の診療内容に変化を与えていることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2016-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200924033C