テレワークの常態化による労働者の筋骨格系への影響や生活習慣病との関連性を踏まえた具体的方策に資する研究

文献情報

文献番号
202223016A
報告書区分
総括
研究課題名
テレワークの常態化による労働者の筋骨格系への影響や生活習慣病との関連性を踏まえた具体的方策に資する研究
課題番号
22JA1005
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
甲斐 裕子(公益財団法人 明治安田厚生事業団 体力医学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 田淵 貴大(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター がん対策センター疫学統計部)
  • 金森 悟(帝京大学 大学院 公衆衛生学研究科)
  • 福田 洋(順天堂大学 先端予防医学・健康情報学講座)
  • 渡邊 裕也(びわこ成蹊スポーツ大学 スポーツ学部)
  • 中田 由夫(筑波大学 体育系)
  • 吉本 隆彦(昭和大学 医学部 衛生学公衆衛生学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
3,079,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2020年の新型コロナウイルス感染症の流行(以下、コロナ禍)に伴い、テレワークを導入する企業が急増した。テレワークは感染症予防や多様な働き方に対応できる等のメリットがある一方で、身体活動量低下や筋骨格系への影響、生活習慣病リスクが懸念されている。厚生労働省は2021年3月に「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」を策定したが、社会的緊急性から労務管理に力点が置かれており、本ガイドラインを補強する安全衛生に配慮したテレワークの具体的介入策の検討が急務である。
そこで本研究では、安全衛生に配慮したテレワークを社会で推進することを目的に、課題①全国的なテレワークの状況の把握、課題②テレワークの健康影響の解明、課題③テレワーカーへの介入策の検討を行った。
研究方法
課題①では、全国の18,036人の勤労者および上場企業684社のデータを分析した。課題②では、首都圏在住勤労者13,703名の健診データ、1,017名の加速度計データ、87名の身体組成・体力・運動器疼痛に関するデータを分析した。課題③では、全国の4,569人の在宅テレワーカーの自宅の作業環境と身体症状を分析した。さらに、テレワーカーの身体活動促進に向けたランダム化比較試験を含む介入研究を実施した。加えて、運動器疼痛に対する取り組みの企業事例やアプリに関する先行研究を収集した。また、多職種産業保健スタッフの研究会であるさんぽ会(産業保健研究会)での調査や議論を中心に、テレワーク導入の産業保健への経時的な影響を明らかにするとともにと身体活動促進に関する好事例を収集した。
結果と考察
過去1か月間にテレワークを行った勤労者は25.3%で、社会的に恵まれている勤労者がテレワークに従事している傾向があった。上場企業におけるテレワーク実施率は69.9%であり、小規模企業やテレワークになじみの薄かった業種にもテレワークが広がっていた。一方で、健康管理に関しては、不十分な実態と企業規模による格差も確認された。テレワークが多いものほど客観的に評価した身体活動量が少なく、座位時間が長く、体力が低下しており、脂質代謝指標が不良で、運動器疼痛を有する者が多かった。
テレワーカーに対する介入策を検討したところ、オフィス勤労者に対するプログラムを援用した身体活動促進プログラムでは、コンタミネーションの問題もあり、テレワーカーの身体活動は増加しなかった。一方、オンラインシステムやアプリ等のICTを活用した介入プログラムによってテレワーカーの行動変容につながった好事例や先行研究は確認されたため、テレワーカーの特性を十分に織り込んだ介入策を開発する必要があると考えられた。加えて、在宅勤務環境の整備が不十分なほど身体症状を有していたため、自宅の勤務環境の整備を促す介入策も必要である。
産業保健の現場では、新型コロナウイルス感染症パンデミック開始より大きな影響を受けており、感染状況に合わせてエビデンスも経験もない中で試行錯誤が繰り返されていた。テレワークにともなう従業員の健康課題としては、運動不足やメンタル不調、コミュニケーション不足が認識されており、それに対応する取り組みも実施されていた。一方で、参加率、継続性、出勤者とテレワーカーが混在する中での対応など、実施面での課題も多かった。今後は、我が国の産業保健の実情を踏まえつつ、エビデンスにもとづく介入策を立案していくことが必要と考えられた。
結論
テレワークが全国的に定着しつつあり、多様な業種に広がっている実態が明らかとなった。しかし、企業での健康管理対策は不十分であり、テレワークの頻度が多いと、身体活動量が低下し、体力・生活習慣病・運動器疼痛に悪影響があることも確認された。テレワーカーの身体活動・運動不足は産業保健現場でも健康課題として認識されており、先進的な企業ではその対策も始まっているが、企業規模によって大きな格差があり、実施面での課題も多かった。今後は、小規模な企業でも実施できる、テレワーク従業員が参加しやすく継続できる運動不足解消やコミュニケーション促進の対策について検討する必要があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2023-06-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-06-08
更新日
2023-08-22

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収支報告書

文献番号
202223016Z