文献情報
文献番号
202223011A
報告書区分
総括
研究課題名
フリーランスの業界団体における安全衛生対策と意識の実態把握のための調査研究
課題番号
21JA1006
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
横山 和仁(国際医療福祉大学 大学院医学研究科公衆衛生学専攻)
研究分担者(所属機関)
- 岡村 世里奈(国際医療福祉大学大学院 )
- 谷川 武(順天堂大学 大学院 医学研究科公衆衛生学講座)
- 武藤 剛(北里大学 医学部衛生学)
- 浦川 加代子(国際医療福祉大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,103,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
フリーランスの業界団体における安全衛生対策と意識の実態把握のために、以下を明らかにする。研究1:フリーランスで働く人々の支援に関する状況・要望、研究2:フリーランスで働く人々に仕事を発注している事業所の労働安全衛生対策、研究3:種々のフリーランス形態で働く人が所属する団体や協会、人材斡旋企業の、所属構成員に対する安全衛生体制についての実態、および研究4:EUのデジタル労働プラットフォームで働くフリーランスの保護に関する状況。
研究方法
研究1:フリーランスで働く人々の健康、労災防止教育、職場環境、取引に関するトラブル、スキルアップ、育児介護等との両立等に関する支援の有無や、受けた支援に対する感想やニーズを、フリーランスで働く人々を対象にインターネット質問票調査を行い、2688名の回答をまとめた。研究2:フリーランスで働く方に仕事を発注している事業所が行っている労働安全衛生に関する取り組みの内容について、昨年度作成した50項目からなる質問紙調査票を用いて、無作為に抽出した1200社に対して郵送法で調査を行い、99社の回答をまとめた。研究3:全国のIT・webデザイン/イラストレーター・芸術芸能・スポーツ・飲食デリバリー・翻訳家・司会業・専門職等の分野でフリーランスとして働く人により構成される(登録等)全国の313団体に対して、所属構成員に対する安全衛生体制についての質問紙調査を郵送法で行い、23団体の回答をまとめた。研究4:EUのデジタル労働プラットフォームワークの類型やその特有の課題やリスクに関する文献の収集・分析を行い、その上で日本への示唆について検討を行った。
結果と考察
研究1:フリーランスで働く人々の健康、労災防止教育、職場環境、取引に関するトラブル、スキルアップ、育児介護等との両立等に関する支援の有無について、あると回答した人が、どの支援についても半数程度もしくはそれ以下だったが、支援を受けた人の満足度は高かった。一方、支援を要望したくないと答える人が、要望したいと答える人よりも多い傾向にあった。取引に関するトラブル支援の要望について、要望したいと答える回答者が半数を超え、他に比べ必要とされている度合いが高かった。健康、育児、介護に関して要望したい支援は、金銭的支援、急な不調時の対応に関するものが目立った。研究2:特定のフリーランスに継続的に仕事を発注している事業所は全体の6割、フリーランス向けに支援を行ったことがある事業所、研修制度を持つ事業所は2~3割であった。各種ガイドラインの認知度は1~3割と低かった。研究3:フリーランスとして働く人が、仕事上の問題を相談できる窓口は、約半数の団体に設けられており、健康保険の加入案内を行っているのは4割、休業補償保険の案内等を行っているのは約6割の団体だった。「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」は、約半数の団体担当者が知っていたが、「労災保険の特別加入制度」を会員に周知しているのは約3割にとどまった。団体による安全衛生に対する取り組みの意識には、かなり幅があることが浮き彫りとなった。研究4:デジタル労働プラットフォームは多種多様であり、プラットフォームワーカーには、不明確な雇用形態という課題や、収入・労働条件・健康と安全・社会的保護・集団的権利などの面でリスクを負っている。そのためEUではこうした特徴を踏まえた上でプラットフォームワーカーの保護に向けた法整備を進めていることが明らかとなった。
結論
フリーランスへの安全衛生教育や、フリーランスが加入できる「労災保険の特別加入制度」、厚労省のガイドラインの周知を、事業所等に広めていくことが実態に則していると思われる。課題意識のある団体では、私傷病や業務上傷病の発生時の休業やセーフティネット、発注元の無理な要求と長時間労働、メンタルヘルス対策について取り組むことの重要性が認識されていた。各団体が、それらについて会員に周知するとともに、支援策を講じていくことが必要と考えられる。日本では、フリーランスの保護に向けた法整等に関する議論が進んでいるが、そこではフリーランスは一括りに捉えられており、デジタル労働プラットフォームの特性を踏まえた議論や検討はほとんど行われていないのが現状である。しかしながら、今後わが国においてもプラットフォームワークに従事する者が増えることが予想されることを踏まえると、プラットフォームワーカーに関しては、別途その特性やわが国の状況に応じた法的保護に関する議論や法整備を進めていくことが重要と考えられる。
公開日・更新日
公開日
2023-06-08
更新日
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