在宅および施設における要介護・要支援高齢者に必要な介護サービス量を推定するモデルの開発に関する研究

文献情報

文献番号
200921013A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅および施設における要介護・要支援高齢者に必要な介護サービス量を推定するモデルの開発に関する研究
課題番号
H19-長寿・一般-013
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
筒井 孝子(国立保健医療科学院 福祉サービス部)
研究分担者(所属機関)
  • 宮野 尚哉(立命館大学 理工学部)
  • 三島 和夫(国立精神・神経センター精神保健研究所 精神生理部)
  • 東野 定律(静岡県立大学 経営情報学部)
  • 山内 康弘(帝塚山大学 経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
7,470,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、高齢者の状態像に応じた予防並びに介護給付のそれぞれの必要性とその量を推定するモデルを開発することである。
研究方法
平成21年度の研究においては、第1に、予防重視群および介護重視群に提供されていたサービスの内容及び時間、提供時間帯等を比較し、第2に、介護サービスにおける典型的な内容の抽出、並びに両群に必要なサービス量の分析を実施し、簡易な分類モデルの妥当性の検証を行った。第3に、ライフコーダーによる客観的睡眠パラメータについての分析を行った。第4に、要介護高齢者の経年的変化に関するデータから、介護給付及び予防給付が高齢者の状態像の変化に与える影響について計量的な分析を行った。
結果と考察
介護サービスを利用している要支援・要介護高齢者の初回、2回目の要介護認定データを用いて「予防重視型高齢者群」及び「介護重視型高齢者群」に分類した。次に、この2群別に標準的な介護内容別時間を示した。これによって予後予測に基づく、適切なサービス提供方法を検討することが可能となった。さらに要介護認定データから算出した中間評価項目得点と、認定基準時間の変化量と提供された介護保険サービス量という3種類の指標による経年的変化を分析し、要介護高齢者の能力の低下(老化)のパターンを予測したモデルである「角度指標」を開発した。これは、今後、介護サービスの成果を測定する際の基準とできる可能性があり、重要である。
結論
要介護認定データの初回および2回目データから、要介護高齢者を生活している場所に関わらず、予防重視群と介護重視群に分類できることがわかった。また、これらの群別に標準的なサービス量を提示できた。さらに、これら要介護高齢者群の経年的変化の分析経過から、要介護高齢者の老化に関する指標として「角度指標」を開発し、この指標によるモデル化ができたことは、今後の介護報酬に質の評価を組み入れる可能性を広げたこととなり、行政研究としても有用な成果が示された。

公開日・更新日

公開日
2010-05-21
更新日
-

文献情報

文献番号
200921013B
報告書区分
総合
研究課題名
在宅および施設における要介護・要支援高齢者に必要な介護サービス量を推定するモデルの開発に関する研究
課題番号
H19-長寿・一般-013
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
筒井 孝子(国立保健医療科学院 福祉サービス部)
研究分担者(所属機関)
  • 宮野 尚哉(立命館大学 理工学部)
  • 大井 田隆(日本大学 医学部)
  • 東野 定律(静岡県立大学 経営情報学部)
  • 中嶋 和夫(岡山県立大学 保健福祉学部)
  • 三島 和夫(国立精神・神経センター精神保健研究所 精神生理部)
  • 遠藤 英俊(国立長寿医療センター 包括診療部)
  • 山内 康弘(帝塚山大学 経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、高齢者の状態像に応じた予防並びに介護給付のそれぞれの必要性に関するスクリーニングと、その量を推定するモデルを開発することである。
研究方法
平成19年度には、介護給付と予防給付をそれぞれ重視する群を弁別する方法を新たに開発し、予防給付対象群の抽出方法については、同期分析および大規模クラスター分析法を応用した手法を試行した。
平成20~21年度には、まず、在宅および施設の要介護高齢者の介護サービスの提供実態について1分間タイムスタディ調査方法を実施し、その結果を分析した。次に、予防・介護重視群に提供されていたサービスの内容及び時間、提供時間帯等を比較した。それによって、介護サービスにおける典型的な内容の抽出、並びに両群に必要なサービス量の分析を実施し、簡易な分類モデルの妥当性の検証を行った。
次に、高齢者の予後の経年的変化に関するデータによる介護給付及び予防給付が要介護高齢者の状態に与える影響について計量分析を行った。さらに、3年間にわたって要介護高齢者に対して、ライフコーダーによる客観的睡眠パラメータについてのデータを収集した。
結果と考察
平成19年度は、予防給付の対象群の選定に際して、データ同期理論を応用した統計手法を開発し「予防重視」及び「介護重視」の2分類し、さらに予後を勘案して、さらに4分類した。平成19年から20年度にかけて、この分類別の基本属性および提供された介護サービス内容を明らかにした。
平成21年度は、第1に、施設および在宅における予防重視群および介護重視群に提供されていたサービスの内容及び時間、提供時間帯等を分析した。第2に、新たに開発した高齢者タイプによるサービス量の分析を実施し、開発したモデルの妥当性を検証した。
以上の分析結果より、新たな統計手法による高齢者タイプを開発し、このタイプ別に予防重視群および介護重視群の介護サービス量の標準モデルの提示を行った。さらに、これらの分類の経年的な変動傾向の分析によって、要介護高齢者における悪化速度を示す「角度指標」を開発した。また、要介護高齢者の睡眠障害罹患率の高さを実証データから初めて明らかにし、この障害によるBPSD発現への影響について考察を行った。
結論
本研究において、要介護度の基本となる能力の低下を示す標準モデル式を明示し、これによって従来の予防や介護給付の効果の有無の根拠となる要介護高齢者における能力低下(老化)予測の標準モデルを提示した。この意義は、介護保険制度における介護や予防給付判定に課題を抱えている厚生労働行政にとって大きな貢献となり、国民の福祉の向上につながると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-01-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200921013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまで、予防あるいは介護給付を必要とする群のスクリーニングに際しての手法として同期分析を用いた例はなく、本研究で初めて実施された。この結果、要介護認定データのみで、高齢者を「予防重視高齢者群」と「介護重視高齢者群」に分類することができた。また、経年的な要介護認定データの分析によって、老化のスピードを示す「角度指標」が開発された。要介護認定データへの同期分析の応用は独創的であり、これについては、現在、論文を投稿中である。
臨床的観点からの成果
これまでの介護予防対象者は、単に認定を受けた時点で、要介護が低いだけでスクリーニングされてきた。この方法に比較すると、経年的に改善する可能性が高い要介護高齢者群を抽出する手法が確立できたことは、予防効果が高い群に対してサービスを優先的に提供することが可能となったことを意味しており、限りある介護資源の効率的な運用を実現する手法として有用である。
ガイドライン等の開発
要介護認定データから、要介護高齢者を「予防重視高齢者群」と「介護重視高齢者群」に分類し、この分類別に介護や予防サービスを提供するための介護サービスの計画方法についてガイドラインを開発している途上にある。なお、このガイドラインの一部は、平成21年度老人保健健康増進等事業「地域包括支援センターの総合評価に関する研究(研究代表:高橋紘士)」の委員会で発表した。当該ガイドラインは、国立保健医療科学院で実施される都道府県等の介護保険担当職員に伝達する予定である。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果の一部は、厚生労働省老健局が発表した平成20年度「地域包括ケア研究会報告書-今後の検討のための論点整理-」および、平成21年度に発表された地域包括ケア研究会報告書の参考とされた。また、介護および予防給付が要介護高齢者の経年的な能力低下(老化)にどのような影響を及ぼすかを介護報酬における成果評価として用いるためには、本研究で開発した「角度指標」が有用であることから、行政的観点からも意義のある研究成果となった。
その他のインパクト
平成21年度に厚生労働省老健局老健課主催による「介護サービスの質の評価の検討会」で本研究で開発した「角度指標」が介護サービスの質の評価指標に有用であることを発表し、当該研究会報告書にも、この角度指標に関する論文を掲載した。また、日仏の介護政策に係る研究者、学識経験者らによる日仏シンポジウム(2010年1月開催於フランス)、国際疫学会西太平洋地域学術会議兼第 20 回日本疫学会(2010年1月開催)にシンポジストとして登壇し、政府関係者および研究者に研究成果を広く伝達した。

発表件数

原著論文(和文)
12件
原著論文(英文等)
24件
その他論文(和文)
13件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
49件
学会発表(国際学会等)
14件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Minori Enomoto, Takako Tsutsui, Higashino Sadanori, et al
Sleep-related Problems and Use of Hypnotics in Inpatients of Acute Hospital Wards
General Hospital Psychiatry , 32 , 276-283  (2010)
原著論文2
大夛賀政昭,東野定律,筒井孝子.
介護福祉施設における夜勤介護職員の業務内容の実態に関する研究
福祉情報研究 , 5 , 14-32  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-