高齢者の生活機能低下に対する作業療法の効果に関する研究

文献情報

文献番号
200921005A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の生活機能低下に対する作業療法の効果に関する研究
課題番号
H19-長寿・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
能登 真一(新潟医療福祉大学 医療技術学部)
研究分担者(所属機関)
  • 上村隆元(杏林大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
1,860,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的はこれまで十分なエビデンスとして示しきれていない作業療法の効果,とくに高齢者の生活機能低下への介入効果を理学療法と比較することで明らかにすることである.
研究方法
全国の6府県にある介護保険の施設での多施設間ランダム化比較試験を実施した.介入群にはADLやIADL練習,認知課題,環境調整などを行う作業療法的なアプローチを実施し,対照群には筋力トレーニング,関節可動域訓練,歩行訓練などの理学療法的アプローチを実施した.それぞれ3ヶ月間介入し,その後にプログラムを入れ替えるクロスオーバーデザインで行った.
結果と考察
対象者は全国の11の施設から184名が登録されたが,最終的にデータ解析の対象となったのは作業療法的介入(OT)群120名,理学療法的介入(PT)群120名であった.
OT群ではICFの「活動と参加」の「学習と知識の応用」,「一般的な課題と遂行要求」,「運動」,「自己管理」,「対人関係」領域の項目に改善を認めた.さらに,健康関連QOLの一つであるHealth Utilities Index(HUI)によって測定された健康効用値でも介入前の0.191から介入後には0.216へと有意な改善を認めた.HUIのSingle scoreでは認知と疼痛の領域で有意な改善を認めた.
またFIMで測定したADLや疾病特異尺度であるDementiaQOLで測定した健康関連QOLではOT群ともに改善を認めた. 
さらにどのような対照群に作業療法の効果があったかについて検討したところ,要介護度では要介護2と3対象者に改善が認められ,多変量解析によっては要介護度が低いことと介入前のHUIの値が低いことが改善する要因の一つであることが確認された.
結論
要介護高齢者に対しては,単に身体機能面へのアプローチをすることよりも,ADLやIADL,さらには趣味的な活動へのアプローチをした方が対象者の健康関連QOLは向上することが実証され,臨床現場では作業療法を含めたアプローチを種々の職種が連携しながら実施する必要があると考えられた.

公開日・更新日

公開日
2010-04-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200921005B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者の生活機能低下に対する作業療法の効果に関する研究
課題番号
H19-長寿・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
能登 真一(新潟医療福祉大学 医療技術学部)
研究分担者(所属機関)
  • 上村 隆元(杏林大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は要介護高齢者の生活機能低下の実態をICFの概念に即して調査し,さらに作業療法の効果を理学療法と比較しながら検証することである.
研究方法
要介護高齢者に対する実態調査ではICFの「心身機能」,「活動と参加」,「環境因子」の第3レベルすべての項目についてそれらの評価点を用いた評価を横断的研究として実施し,あわせてADLや健康関連QOLについても調べた.
作業療法の介入研究は多施設間のランダム化比較試験を実施し,介入群にはADLやIADL,認知課題,環境調整といった作業療法的アプローチを実施し,対照群には筋力トレーニング,関節可動域訓練,歩行訓練などの理学療法的アプローチを実施した.またそれらを3か月ずつ実施した後には群を入れ替えるクロスオーバーデザインを採用した.
結果と考察
横断的研究ではICF「活動と参加」の「家庭生活」や「主要な家庭領域」での困難度が高くなり,「環境因子」では,「保健の専門職」や「その態度」が促進因子として大きく関与している実態が明らかとなった.またこれらは生活機能の低下は健康関連QOLなども同様に要介護度により強く影響されていた.
介入研究では作業療法的介入を実施した群にのみ,健康効用値で表わされる健康関連QOLが向上した.特にこの結果は要介護度が重度ではなく,介入前の健康関連QOLが平均よりも低下した高齢者に強く表れた.
結論
要介護高齢者は身体機能の低下もさることながら,生活場面で様々な困難を抱えており,そこに対して何らかのアプローチが必要である.ADLやIADL練習,あるいは環境調整といったアプローチを得意とする作業療法がそこに介入することによって高齢者の健康関連QOLを向上させることが可能である.

公開日・更新日

公開日
2010-04-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200921005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
要介護高齢者に対する作業療法の介入効果について,作業療法的介入をする群と理学療法的介入をする群に分けるランダム化比較試験によって検証した.作業療法群ではADL以外にも健康関連QOLの中の健康効用値に有意な改善が認められた.特に要介護度が重度ではなく,介入前の健康関連QOLが平均よりも低下している高齢者に効果が発揮されると示唆された.成果は公衆衛生学会等で発表され,一定の評価が得られた.
臨床的観点からの成果
ICFを用いた評価によって,要介護高齢者は「活動や参加」面での「家庭生活」や「主要な生活領域」で様々な困難を抱えており,「環境因子」では「保健の専門職」や「その態度」が促進因子として大きく関与している実態が明らかとなった.高齢者に対する維持期のリハには身体機能面だけではなく,ADLやIADL,さらには環境調整といった作業療法を含めた多面的かつ多職種で連携するアプローチが必要と考えられた.
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
維持期のリハビリテーション,特に介護保険サービスに関連して,高齢者の健康関連QOLを向上させるためには単なる身体機能面へのアプローチではなくADLやIADLに着目したアプローチが必要であり,これを促進することで家事援助などにかかっている費用を削減できる可能性があると考えられた.
その他のインパクト
作業療法学会などを通して広く成果を公表していく予定である.

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-