慢性腎臓病患者(透析患者等を含む)に特有の健康課題に適合した災害時診療体制の確保に資する研究

文献情報

文献番号
202212001A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性腎臓病患者(透析患者等を含む)に特有の健康課題に適合した災害時診療体制の確保に資する研究
課題番号
20FD1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
山川 智之(公益社団法人 日本透析医会)
研究分担者(所属機関)
  • 赤塚 東司雄(赤塚クリニック)
  • 雨宮 守正(さいたま赤十字病院 腎臓内科)
  • 花房 規男(東京女子医科大学 血液浄化療法部)
  • 宮崎 真理子(東北大学大学院)
  • 森上 辰哉(かいべ循環器・透析クリニック)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 腎疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 令和4年度の本研究は、令和2年度の過去の災害に関するレビューや今後想定される大災害における対応想定、令和3年度の災害対策に関する実態調査等を踏まえ、さまざまな形の大災害に対応できるような透析医療の災害時診療体制を構築するために、透析施設や透析関連団体、患者、行政等に対する各種提言を行い、教育・啓発資材を作成し、また医療者、行政関係者向けにWEB講演会を開催した。
研究方法
令和4年度の本研究においては、次の調査研究を行った。
・透析施設に対する平時の備え、啓発の提言の作成
・日本透析医会支部など都道府県の透析医療ネットワークに対する行政と協議すべき課題、災害発生時の対応についての提言の作成
・透析患者(PD、CKD を含む)およびその家族・患者の通院を補助する介護事業者等に対する災害発生に備えた準備についての提言の作成
・自治体の透析医療確保体制に関するマニュアル作成についての提言の作成
・災害時情報ネットワークの見直しについての提言の作成
・透析患者向けに災害対応に関する教育資材の作成
・医療者、自治体、透析患者等向けにホームページに掲載する啓発資材の作成
・医療者、行政関係者向けに本研究を踏まえ作成された提言に関するWEB 講演会の開催
結果と考察
 「透析施設に対する平時の備え、啓発の提言」は、基本的には以前から提言し、過去の災害で有効と確認できたものをベースに、多様化する災害に対しても医療機関が柔軟に対応することを目指し、透析施設が自らの施設に適合するマニュアル作成に資するようまとめた。
 「日本透析医会支部など都道府県の透析医療ネットワークに対する行政と協議すべき課題、災害発生時の対応についての提言」は、大規模災害においては平時からの他施設との連携が極めて重要であり、日本透析医会支部などの地域における透析医療ネットワークはその連携の核とならなければならなく、また災害発生時には医療の継続のために行政の支援が必要になることから、地域の透析医療ネットワークが、行政との連携を含む、平時および災害発生時に行うべきことをまとめた。
 「透析患者(PD、CKD を含む)およびその家族・患者の通院を補助する介護事業者等に対する災害発生に備えた準備についての提言」は、透析患者の高齢化が進行する中で、災害時に透析医療を継続するためには、患者自身、家族、あるいは介護事業者も含めた患者周囲の助力が必要な状況も生じうることから、それぞれの立場で災害発生の備えに資するべきことをまとめた。
 「自治体の透析医療確保体制に関するマニュアル作成についての提言」は、地域による特性を考慮した災害対策の枠組みについて、都道府県行政の担当部署、都道府県の透析医会支部等の透析医療施設による組織が中心となったマニュアルを平時から作成しておくことが、平時の対策、有事の対応において必要であることをまとめた。
 「災害時情報ネットワークの見直しについての提言」は、災害発生時の透析施設の情報共有については、その多くを日本透析医会災害時情報ネットワークが担っており、特に大災害時には大きな役割を果たしてきた一方で、過去の運用等で明らかになったシステムの問題点を踏まえ、また今後の広域災害に備えて、より効率的で有効なシステムを構築する必要性が高いことから、現行システムの改修を前提に、新たなシステムに必要な仕様を中心にまとめた。
 また、透析患者向けの災害対応に関する教育資材「透析患者の災害対策~災害時にすべきこと、起こる前の備え」と、医療者、自治体、透析患者等向けの啓発資材「提言:災害時に透析医療を継続するために」を作成し、ホームページに掲載した。
 さらに、医療者、行政関係者向けに本研究を踏まえ作成された提言に関するWEB 講演会を開催した。
結論
 令和4年度の本研究では、令和2年度の過去の災害に関するレビューや今後想定される大災害における対応想定、令和3年度の災害対策に関する実態調査等を踏まえ、さまざまな形の大災害に対応できるような透析医療の災害時診療体制を構築するために、①透析施設に対する平時の備えおよび啓発、②日本透析医会支部など都道府県の透析医療ネットワークに対する、行政と協議すべき課題や災害発生時の対応、③透析患者およびその家族・患者の通院を補助する介護事業者等に対する災害発生時の対応や備え、④自治体の透析医療確保体制に関するマニュアル作成、⑤災害時情報ネットワークの見直し、の五つを提言としてまとめた。これらの提言が、地域において災害時における透析医療確保の体制作りに資することができれば本望である。

公開日・更新日

公開日
2023-12-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

その他
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-12-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202212001B
報告書区分
総合
研究課題名
慢性腎臓病患者(透析患者等を含む)に特有の健康課題に適合した災害時診療体制の確保に資する研究
課題番号
20FD1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
山川 智之(公益社団法人 日本透析医会)
研究分担者(所属機関)
  • 赤塚 東司雄(赤塚クリニック)
  • 雨宮 守正(さいたま赤十字病院 腎臓内科)
  • 花房 規男(東京女子医科大学 血液浄化療法科)
  • 宮崎 真理子(東北大学大学院)
  • 森上 辰哉(かいべ循環器・透析クリニック)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 腎疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 透析治療、特に血液透析治療が災害に脆弱であることは古くから認識されている。今後、首都直下型地震や南海トラフ巨大地震など、透析医療に大きな影響を与えると思われる災害も想定され、これまでの経験の蓄積を生かしつつ、透析医療の災害時診療体制をより高いレベルで整備する必要がある。本研究では、これまでの災害時の透析医療における対応状況を振り返り、また現状に関する調査を行い、課題を抽出すると共に、今後起こりうる災害の被害想定を踏まえ、様々な災害に対応できる体制を構築するための提言を行う。
研究方法
 令和2年度は、これまでの透析医療に影響があった災害の被災状況および透析医療の確保状況等についての検討と、今後の透析医療に影響を与える可能性のある大災害の被害想定を踏まえた対応想定と問題点の抽出を中心に行った。
 令和3年度は、災害時透析医療確保に向けた実態調査を中心に行い、またいくつかの先進事例についての調査を行った。
 令和4年度は、前々年度、前年度の研究成果を踏まえ、災害時の透析医療確保に関する各種提言を作成するとともに、その提言に関する啓発活動を行った。
結果と考察
 令和2年度は、今後、首都直下型地震や南海トラフ巨大地震など透析医療に大きな影響を与えると思われる災害も想定され、これまでの経験の蓄積を生かしつつ、透析医療の災害時診療体制をより高いレベルで整備する必要があることから、行政の被害想定も踏まえた透析医療の継続条件に関する研究を行い、さまざまな課題が抽出される中で、今回想定した災害においてはこれまで以上に透析医療者と行政関係者との連携の必要性が確認された。
 令和3年度は、慢性腎不全、特に透析治療における災害対策の様々な観点から調査を行い、課題を抽出することを大きなテーマとした。その結果、浮かび上がってきたのは、多くの施設や団体として積極的な活動や連携がなされていることが確認できた一方で、活動の地域差がかなり大きいことがわかった。
 東日本大震災や熊本地震など透析医療に大きな被害を与えた災害を経験するにしたがって、医療者主体での災害対応について限界があるということもわかってきている。大きな災害によって複数の施設が被災し透析の実施が不可能になった場合に、どうしても行政に頼らざるを得ない点は大きく分けて四つある。1点目は、断水と停電といったインフラの問題に対する対応である。2点目は、支援施設への患者搬送である。3点目は、被災透析患者の避難場所の確保である。4点目は、被災透析患者の生活支援である。
 令和4年度は、令和2年度、3年度の研究で明らかになった地域のネットワークの整備と行政との連携について地域差がかなり大きかったことを踏まえ、この災害対策における地域差を縮めることを大きなテーマとし、さまざまな観点からの提言を作成し、医療者、行政関係者向けにWEB講演会を開催した。
 また、本研究で提案された提言のうち医療者、自治体、透析患者等向けのものを啓発資材としてまとめ、さらに、透析患者向けの災害対応に関する教育資材を作成し、また医療者,行政関係者向けにWEB講演会を開催した。
結論
 透析医療の災害対策は、元々は透析が災害時に脆弱な治療であるという問題意識を古くから透析医療者が共有し協力していこうという所から始まり、日本透析医会が中心となって行っている災害対策事業もその延長線上にある。現在の日本透析医会災害時情報ネットワークを中心とした施設間および行政との情報共有ならびに連携によって、災害時の診療体制の確保を行う仕組みは過去の災害においてある程度有効に機能してきた。
 一方で、東日本大震災や熊本地震など透析医療に影響を与えた災害を経験し、地域の透析医療者間のネットワークや行政との連携の重要性、患者への災害教育の必要性について本研究を通じて再認識してきたところである。そのような問題意識に基づき、本研究では、多様な災害に対し透析医療の確保を行うために、各方面に対し提言を作成した。これらの提言が、地域において災害時における透析医療確保の体制作りに資することができれば本望である。

公開日・更新日

公開日
2023-12-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-12-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202212001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
透析治療、特に血液透析治療が災害に脆弱であることは古くから認識されており、公益社団法人日本透析医会は以前から災害対応を活動の柱として取り組んでいる。本研究では、これまでの災害時の透析医療における対応状況を振り返り、また現状に関する調査を行い、課題を抽出するとともに、今後起こりうる災害の被害想定を踏まえ、さまざまな形の大災害に対応できるような透析医療の災害時診療体制を構築するために、各種提言を行い、教育・啓発資材を作成し、また医療者、行政関係者向けにWEB講演会を開催した。
臨床的観点からの成果
慢性腎不全、特に透析治療における災害対策の様々な観点から調査を行い、課題を抽出することを大きなテーマとし、その結果、浮かび上がってきたのは、多くの施設や団体として積極的な活動や連携がなされていることが確認できた一方で、活動の地域差がかなり大きいことがわかった。
ガイドライン等の開発
患者向けの教育啓発資材としてパンフレット「透析患者の災害対策~災害時にすべきこと、起こる前の備え~」を作成しホームページに掲載した。
また、医療者、自治体、透析患者等向けの啓発資材「提言:災害時に透析医療を継続するために」を作成しホームページに掲載した。
その他行政的観点からの成果
透析医療に影響を与えた災害を経験し、地域の透析医療者間のネットワークや行政との連携の重要性、患者への災害教育の必要性について本研究を通じて再認識してきたところである。そのような問題意識に基づき、本研究では、多様な災害に対し透析医療の確保を行うために、各方面に対し提言を作成した。これらの提言が、地域において災害時における透析医療確保の体制作りに資すること期待している。
その他のインパクト
国内の学会での研究成果を踏まえた発表を行った。また、今後も発表する予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-12-18
更新日
2024-11-14

収支報告書

文献番号
202212001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,085円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 4,495,947円
間接経費 500,000円
合計 5,000,032円

備考

備考
※差額 32円(受取利息32円、自己資金0円)

公開日・更新日

公開日
2023-12-18
更新日
-