特発性造血障害に関する調査研究

文献情報

文献番号
202211010A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性造血障害に関する調査研究
課題番号
20FC1018
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
三谷 絹子(獨協医科大学 医学部 内科学(血液・腫瘍)講座)
研究分担者(所属機関)
  • 山﨑 宏人(金沢大学 附属病院)
  • 石田 文宏(信州大学 医学部)
  • 宮崎 泰司(国立大学法人長崎大学 原爆後障害医療研究所原爆・ヒバクシャ医療部門血液内科学研究分野(原研内科))
  • 高折 晃史(京都大学 医学研究科)
  • 黒川 峰夫(東京大学 医学部附属病院 血液・腫瘍内科)
  • 鈴木 隆浩(北里大学医学部)
  • 赤司 浩一(国立大学法人九州大学 医学研究院)
  • 神田 善伸(自治医科大学 医学部)
  • 太田 晶子(埼玉医科大学医学部公衆衛生学)
  • 真部 淳(国立大学法人 北海道大学大学院 医学研究院 小児科学教室)
  • 張替 秀郎(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 東條 有伸(東京医科歯科大学)
  • 井上 義一(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター, 臨床研究センター)
  • 保仙 直毅(大阪大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では再生不良性貧血、赤芽球癆、溶血性貧血、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄線維症及びランゲルハンス細胞組織球症を対象として、疫学・病因・病態・診断・治療・予後などの幅広い領域にわたって全国規模の調査研究を推進する。そのために各疾患において症例登録システムを充実させ患者の実態把握を行い、本邦の実態に即した治療法の開発・最適化に努める。さらに、京都大学 小川誠司教授と協力して、特発性造血障害疾患に対するゲノム解析研究を推進している。得られた知見は、診断基準の策定や「診療の参照ガイド」の改訂作業を通じて、広く臨床の場で利用できるようにする。
研究方法
再生不良性貧血:診療の参照ガイドの改訂を行うとともに、疾患登録事業を推進した。赤芽球癆:後天性慢性赤芽球癆の予後改善を目的として、前向き観察研究を継続した。 溶血性貧血:発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)患者における終末補体阻害薬投与前後ならびに近位補体阻害薬に切り替え(上乗せ)後の検査データを検討した。MDS:再生不良性貧血とMDSの臨床像と治療成績の把握を目的とした前方視的症例登録・追跡調査研究とセントラルレビューを継続した。また、低リスクMDSの治療方法の選択や予後についての現状把握のために、アンケートによる二次全国調査を実施し、その結果を解析した。長崎県内で全MDS症例の予後調査を行った。最後に、再生不良性貧血/MDS境界例と低リスクMDS症例における自己免疫病態・免疫抑制療法の位置づけについて、総体的なレビューを行った。骨髄線維症:前向き観察研究を継続した。ランゲルハンス細胞組織球症:日本血液学会及び日本病理学会認定研修施設を対象として、二次調査を実施し、その結果を解析した。
結果と考察
再生不良性貧血:診断基準と診療の参照ガイド作成のためのワーキンググループを新たに立ち上げ、10個のCQの設定とそれに対する推奨・解説の作成を行った。難病プラットフォームを基盤にした症例登録事業が開始され、16施設から43例が登録された。赤芽球癆:令和4年に5年の中間解析時期を迎え、91例のデータ固定作業を行った。溶血性貧血:近位補体阻害薬の好適例の選別には、ヘモグロビン値、網状赤血球数、間接ビリルビン値などの指標が有用であることが明らかになった。MDS:前方視的症例登録・追跡調査研究とセントラルレビューでは、登録症例数は464例を超え、このうち骨髄芽球が5 %未満の症例については末梢血標本及び骨髄標本のセントラルレビューを行っている。令和3年度からは、難病プラットフォーに移行し、令和5年3月時点で135症例の新規登録が行われている。低リスクMDSに対する全国二次アンケート調査では、IPSSの中間リスク群に関する解析を行なった。長崎県内の1000例以上のMDS症例を対象に、本邦の実臨床における国際的予後予測システムの有用性を検証し、これを証明した。再生不良性貧血/MDS境界例と低リスクMDS症例における自己免疫病態・免疫抑制療法の位置づけについては、提言を発表した。骨髄線維症:17年間で782例の臨床情報を集積した。生存期間の中央値は4.0年で、3年生存率は60%である。主な死因は、感染症及び白血病への移行であった。JAK2阻害薬承認後、特に中間-2リスクで予後の改善がみられた。ランゲルハンス細胞組織球症:2つの全国疫学調査を合わせ、重複等を除いた計148例の統合解析を行い、同期間に診療された86例の詳細な解析結果をまとめた。
結論
再生不良性貧血:CQと解説付きの診療の参照ガイドを完成させた。症例登録事業を継続する。赤芽球癆:データを固定し、中間解析を実施する。溶血性貧血:近位補体阻害薬好適例の条件を抽出した。 MDS:3つの調査研究が進行中である。骨髄線維症:わが国の原発性骨髄線維症780例の臨床情報を集積した。国際予後スコアリングシステムのDIPSS-Plusは、わが国の原発性骨髄線維症の予後予測に有用である。ランゲルハンス細胞組織球症:全国調査の結果貴重な臨床データがまとめられた。

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
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公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202211010B
報告書区分
総合
研究課題名
特発性造血障害に関する調査研究
課題番号
20FC1018
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
三谷 絹子(獨協医科大学 医学部 内科学(血液・腫瘍)講座)
研究分担者(所属機関)
  • 金倉 譲(一般財団法人住友病院)
  • 中尾 眞二(金沢大学大学院医学系研究科細胞移植学)
  • 石田 文宏(信州大学 医学部)
  • 赤司 浩一(国立大学法人九州大学 医学研究院)
  • 宮崎 泰司(国立大学法人長崎大学 原爆後障害医療研究所原爆・ヒバクシャ医療部門血液内科学研究分野(原研内科))
  • 高折 晃史(京都大学 医学研究科)
  • 黒川 峰夫(東京大学 医学部附属病院 血液・腫瘍内科)
  • 鈴木 隆浩(北里大学 医学部)
  • 神田 善伸(自治医科大学 医学部)
  • 真部 淳(国立大学法人 北海道大学大学院 医学研究院 小児科学教室)
  • 張替 秀郎(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 太田 晶子(埼玉医科大学医学部公衆衛生学)
  • 東條 有伸(東京医科歯科大学)
  • 井上 義一(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター, 臨床研究センター)
  • 山﨑 宏人(金沢大学 附属病院)
  • 保仙 直毅(大阪大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では再生不良性貧血、赤芽球癆、溶血性貧血、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄線維症及びランゲルハンス細胞組織球症(LCH)を対象として、疫学・病因・病態・診断・治療・予後などの幅広い領域にわたって全国規模の調査研究を推進する。そのために各疾患において症例登録システムを充実させ患者の実態把握を行い、本邦の実態に即した治療法の開発・最適化に努める。さらに、難治性疾患実用化研究事業(「オミクス解析技術と人工知能技術による難治性造血器疾患の病因解明と診断向上に貢献する解析基盤の開発」とも協力する。得られた知見は、診断基準の策定や「診療の参照ガイド」の改訂作業を通じて、広く臨床の場で利用できるようにする。
研究方法
再生不良性貧血:病態研究として、①HLA(-)血球陽性例の長期予後解析と②免疫病態解析を行った。診療の参照ガイドを改訂するとともに、「難病プラットフォーム 再生不良性貧血の症例登録・追跡調査研究」を開始した。赤芽球癆:後天性慢性赤芽球癆の予後改善を目的として、前向き観察研究を継続した。 溶血性貧血:発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)を対象として、①PNH遺伝子診断システムの構築、②PNH患者に対するCOVID-19ワクチン接種の影響の検討、③終末・近位補体薬の効果の検討を行った。MDS:再生不良性貧血とMDSの臨床像と治療成績の把握を目的とした前方視的症例登録・追跡調査研究とセントラルレビューを継続した。また、低リスクMDSを対象とした全国二次調査の結果を解析した。最後に、再生不良性貧血/MDS境界例と低リスクMDS症例における自己免疫病態・免疫抑制療法の位置づけについて、総体的なレビューを行った。骨髄線維症:前向き観察研究を継続した。LCH:日本血液学会及び日本病理学会認定研修施設を対象として当該疾患診療に関する後方視的調査を行った。
結果と考察
再生不良性貧血:①の解析の結果、HLA(-)白血球はAA患者において、免疫抑制療法における予後良好因子であることが明らかになった。②の解析では、シクロスポリンA依存性のHLA-DR15陽性AA患者においてHLA-DRの欠失が高頻度に見られた。10個のCQを設けたR4診療の参照ガイドが完成した。難病プラットフォームを基盤にした症例登録事業が開始され、16施設から43例が登録された。赤芽球癆:令和元年以降は予後調査を実施中であり、令和4年に5年の中間解析のための91例のデータ固定作業を行った。溶血性貧血:①では、PIGA遺伝子のスクリーニングを行い、変異を見出せない場合においてのみGPI-AP生合成関連遺伝子の網羅的解析を行う、PNH責任遺伝子解析スクリーニングシステムを構築した。②では、23例のPNH患者において、重度の溶血発作を呈する症例は確認されなかった。③では、終末補体阻害薬投与により血管内溶血は効果的に抑制されるものの、血管外溶血の出現によりHbの回復は限定的にとどまった。近位補体阻害薬の好適例の選別には、ヘモグロビン値、網状赤血球数、間接ビリルビン値などの指標が有用であることが明らかになった。MDS:前方視的症例登録・追跡調査研究とセントラルレビューでは、登録症例数は464例を超え、このうち骨髄芽球が5 %未満の症例については末梢血標本及び骨髄標本のセントラルレビューを行っている。令和3年度からは、難病プラットフォームに移行し、令和5年3月時点で135症例の新規登録が行われている。一方、低リスクMDS(IPSS-Rの中間リスクも含む)の治療方法の選択や予後に関する全国調査で集積された1230例の予後因子等の解析を行なった。全体の生存期間中央値は70カ月、無白血病生存期間中央値は62カ月であり、無白血病生存期間に影響する予後因子として、年齢、性別、IPSS-Rのリスク分類、診断時の輸血依存の有無、好中球数、治療(薬剤)選択が抽出された。最後に、再生不良性貧血/MDS境界例と低リスクMDS症例における自己免疫病態・免疫抑制療法の位置づけについて、提言を発表した。骨髄線維症:17年間で782例の臨床情報を集積した。生存期間の中央値は4.0年で、3年生存率は60%である。主な死因は、感染症及び白血病への移行であった。JAK2阻害薬承認後、特に中間-2リスクで予後の改善がみられた。LCH:2つの全国疫学調査を合わせ、重複等を除いた計148例の統合解析を行い、同期間に診療された86例の詳細な解析結果をまとめた。
結論
これらの研究成果を踏まえて、令和4年度には各疾患の「診療の参照ガイド」を改定した。その他、全国規模のレジストリの推進とデータの解析も進行中である。

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202211010C

収支報告書

文献番号
202211010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,200,000円
(2)補助金確定額
11,981,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,219,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,143,814円
人件費・謝金 450,000円
旅費 5,200円
その他 5,182,486円
間接経費 2,200,000円
合計 11,981,500円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-01-16
更新日
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