血管病モデルマウスと血管新生可視化マウスの資源化

文献情報

文献番号
200911004A
報告書区分
総括
研究課題名
血管病モデルマウスと血管新生可視化マウスの資源化
課題番号
H19-生物資源・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
望月 直樹(国立循環器病センター研究所 循環器形態部)
研究分担者(所属機関)
  • 松田 潤一郎(独立行政法人医薬基盤研究所)
  • 宮田 敏行(国立循環器病センター研究所 病因部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(生物資源・創薬モデル動物研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
6,819,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国民病といっても過言ではない動脈硬化症、糖尿病、虚血性心疾患の臓器障害は、血管の生理的機能の破綻と考えられる。したがって、これらの血管病ともいえる状態の血管障害病態モデルを動物で作製し、新規薬剤の個体での薬効評価系として資することを目的として研究を行った。血管可視化マウス、血管障害病態モデルマウスは医薬基盤研究所から国内外へ提供可能な情報発信と提供システムを構築することを目標とした。
研究方法
血栓症の成因となるNdrg4についての機能を調べるために、同遺伝子の欠損マウスを作製した。
血管可視化マウスの作製を目的としてVascular endothelial cadherin プロモーターエンハンサー(VEcad E/P)によって直接enhanced green fluorescent protein (EGFP)あるいは、Creリコンビナーゼを発現するマウスを作製した。HIFによって誘導される分子CD82の血管内皮細胞特異的強制発現マウスを作製した。
結果と考察
Ndrg4欠損ホモマウスは正常に発育したが、逃避潜時と遊泳距離が遅延していた。また、一過性局所脳虚血による脳梗塞体積の解析では、野生型に比べ、Ndrg4欠損ホモマウスでは片側運動麻痺の亢進と脳梗塞体積の増加が観察された。VEcad P/E-EGFPは緑色蛍光が弱く、通常の実体顕微鏡で検出可能な蛍光が取得できず、血管新生可視化は無理と判断した。VEcad P/E-Creはレポーターマウスとの交配中である。CD82発現マウスはPCRで確認できる範囲では、6系統得ることができた。これらのマウスはいずれも基盤研究所のバンクに登録した。今回作製したマウスは、血栓症・血管研究に使用可能なマウスであり、今後血管新生研究にも使用可能である。
結論
国立循環器病センター研究所よりVEcad-CreマウスならびにNdrg4欠損ホモマウスなど血管研究に必要なマウスを寄託した。これらのマウスを含め、バンク機能(登録、譲渡)を昨年度より充実させた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200911004B
報告書区分
総合
研究課題名
血管病モデルマウスと血管新生可視化マウスの資源化
課題番号
H19-生物資源・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
望月 直樹(国立循環器病センター研究所 循環器形態部)
研究分担者(所属機関)
  • 松田 潤一郎(独立行政法人 医薬基盤研究所)
  • 宮田 敏行(国立循環器病センター研究所 病因部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(生物資源・創薬モデル動物研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
癌の血管新生、虚血性疾患・血栓症の病態の本態ともいえる血管・骨髄由来細胞による病態形成をモデル化可能なマウスを作製することにより新規治療法の開発や病態解析に資するこれらのマウスを資源化することを目的とする。資源化には医薬基盤研究所にバンク機能を構築して、資源の登録管理・提供システムを円滑に運営して、国内外への資源の提供を行える体制を整える。
研究方法
血管可視化マウスと血栓病態モデルマウスの作製を行っていき(国立循環器病センター)、これを医薬基盤研究所に登録・資源化することで、円滑に国内外に提供するシステムをさらに充実させていくことである。具体的には血栓症と血管収縮による冠状動脈攣縮・脳血管攣縮モデルマウスとなりうるモデルマウスを樹立する。血管可視化については、血管内皮細胞特異的にプロモーター活性を示すVascular endothelial cadherin (VEcad)プロモーターとエンハンサー (VEcad P/E)によってレポーターの発現(蛍光蛋白質)するマウスを作製して、血管のイメージングを生体で可能にした。
結果と考察
血管新生可視化マウスとしてVEcad-P-Cre, VEcad-P/E-Creを樹立して、蛍光蛋白質をレポーターとするloxPマウスとの交配により生体で血管をイメージング可能なマウスとすることができた。また様々な血管病モデルマウスとして、高血圧を呈するephexin1/5ダブルノックアウトマウス、脳梗塞の重症化をおこるNdrg4 ノックアウトマウス、血小板血栓形成能の亢進したADAMTS13欠損マウス、などを基盤研に登録した。これらを含む27系統のマウスを血管病態研究マウス、さらに他にも基盤研究所のバンク登録マウスとして本研究開始前よりも3年間で100系統以上のマウスの保存・資源化ができた。これらのマウスを当初の目的のように国内外の研究者に供されると期待する。
結論
血管新生可視化マウスと血管病研究のためのモデルマウスの資源化を国立循環器病センターと医薬基盤研との連携で行うことができた。バンク機能の拡充と、円滑化も達成できた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200911004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
治療による癌の血管新生の抑制効果、あるいは虚血性疾患での血管新生の促進効果を判定するためには血管可視化マウスは有用である。また、様々な血管疾患により臓器障害(腎障害、心疾患、眼疾患)を起こすことを考えると血管病モデルマウスによる病態の解明のためのモデル作製は不可欠であると考える。このために本研究は重要であり、またその成果も当初の予定を達成していると判断する。
臨床的観点からの成果
腫瘍退縮効果を期待して、腫瘍血管のVEGFR2受容体を標的とした治療法が現在臨床でも使用され、効果がある腫瘍もある。今後も癌治療の手段として腫瘍血管の抑制を目指した治療の開発が行われると予想する。臨床治験の前には動物で腫瘍移植モデルが使用されるが、標的である血管を可視化できるモデルマウスはさらに有用であると考える。また、本研究で作製した血管病モデルマウスは、血栓・脳梗塞の新たな治療法の開発につながる研究であると判断する。


ガイドライン等の開発
とくになし
その他行政的観点からの成果
厚生労働行政として、癌疾患・虚血性心疾患ならびに動脈硬化症性血管閉塞症の治療法の開発は、急務である。とくに生活習慣病の罹患者数の増加は国内の医療費の増加に拍車をかけることになり病状の悪化を予防することが期待される。本研究は、血管病の治療あるいは癌治療・虚血性疾患の治療効果判定に使用できる生物資源を提供するシステムとしても重要である。
その他のインパクト
一般公開セミナーとして「循環器病の研究を支える生物資源」セミナー2008年11月19日(水) 13時から17時(於 千里阪急ホテル)を開催した。研究者ではなく、一般市民の皆様に参加していただき生物資源の重要性について紹介した。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
25件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
19件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nakaoka Y, Nishida K, Narimatsu K et al
Gab family proteins are essential for postnatal maintenance of cardiac function through transmitting neuregulin-1 /ErbB signaling
J Clin. Invest. , 117 , 1771-1781  (2007)
原著論文2
Seguchi O, Takashima S, Yamazaki S, et al
A cardiac myosin light chain kinase regulates sarcomere assembly in the vertebrate heart.
J Clin. Invest , 117 , 2812-2824  (2007)
原著論文3
T. Miyata, K. Kokame, F. Banno et al
ADAMTS13 assays and ADAMTS13-dificient mice
Curr Opin Hematol , 14 , 277-283  (2007)
原著論文4
Y. Taketomi, K. Sunaga, S. Tanaka, M et al
Impaired mast cell maturation and degranulation and attenuated allergic responses in Ndrg1-dificient mice.
J Immunol, , 178 , 7042-7053  (2007)
原著論文5
Fukuhara S, Sako K, Minami T et al
Differential function of Tie2 at cell-cell contacts and cell-substratum contacts regulated by angiopoietin-1.
Nat. Cell Biol. , 10 , 513-526  (2008)
原著論文6
Koyama T, Nakaoka Y, Fujio Y et al.
Interaction of scaffolding adaptor protein Gab1 with tyrosine phosphatase SHP2 negatively regulates IGF-I-dependent myogenic differentiation via the ERK1/2 signaling pathway
J. Biol. Chem. , 283 , 24234-24244  (2008)
原著論文7
F. Banno, AK. Chauhan, K. Kokame, J
The distal carboxyl-terminal domains of ADAMTS13 are required for regulation of in vivo thrombus formation.
Blood , 113 , 5323-5329  (2009)
原著論文8
M. Fujioka, K. Hayakawa, K. Mishima
ADAMTS13 gene deletion aggravates ischemic brain damage: a possible neuroprotective role of ADAMTS13 by ameliorating postischemic hypoperfusion.
Blood , 115 , 1650-1653  (2010)
原著論文9
Takahama H, Minamino T, Asanuma H et al
Prolonged targeting of ischemic/reperfused myocardium by liposomal adenosine augments cardioprotection in rats.
J. Am. Coll.Cardiol. , 53 , 709-717  (2009)
原著論文10
Sako K, Fukuhara S, Minami T, et al
Angiopoietin-1 Induces Kruppel-like Factor 2 Expression through a Phosphoinositide 3-Kinase/AKT-dependent Activation of Myocyte Enhancer Factor 2.
J. Biol. Chem. , 284 , 5592-5601  (2009)
原著論文11
Sawada T, Tanaka A, Higaki K,
Intracerebral cell transplantation therapy for murine GM1 gangliosidosis.
Brain Dev. , 31 , 717-724  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-