特定妊婦に対する支援の均てん化に向けたアセスメントツール及び多職種連携地域支援プログラムの開発と社会実装についての研究

文献情報

文献番号
202207006A
報告書区分
総括
研究課題名
特定妊婦に対する支援の均てん化に向けたアセスメントツール及び多職種連携地域支援プログラムの開発と社会実装についての研究
課題番号
20DA1009
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
立花 良之(国立研究開発法人国立成育医療研究センター こころの診療部乳幼児メンタルヘルス診療科)
研究分担者(所属機関)
  • 小泉 典章(公立大学法人長野大学)
  • 山崎 嘉久(あいち小児保健医療総合センター 保健センター)
  • 杉浦 至郎(あいち小児保健医療総合センター 保健センター保健室)
  • 鈴木 俊治(日本医科大学 医学部 女性生殖発達病態学)
  • 赤尾 さく美(一般社団法人ベアホープ)
  • 上鹿渡 和宏(早稲田大学 人間科学学術院)
  • 松田 妙子(NPO法人子育てひろば全国連絡協議会)
  • 水本 深喜(松蔭大学 コミュニケーション文化学部)
  • 多門 裕貴(清川遠寿病院 精神科)
  • 相良 洋子(公益社団法人日本産婦人科医会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,620,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、自治体における特定妊婦に対する支援の現状を把握し、その結果をもとに福祉・保健・医療が共通で活用することができるアセスメントツール及び支援プログラムを作成し、特定妊婦に対する支援を均てん化することを目的とした。
研究方法
令和3年度に作成した特定妊婦支援のアセスメントシートについての実証研究を行った。保健師に対して、系統的心理社会的アセスメントとそれに基づくプラニングの地域介入プログラムを実施した。このプログラムでは、ハイリスクアプローチの一環として、心理社会的リスクが高いと考えられる妊産婦に対しては、アセスメントシート/プラニングのシートを用いて、支援を行った。本研究の目的は,本研究班で作成・実施する特定妊婦アセスメントシートを用いた支援プログラムの均てん化に向けて,質的・量的ミックス法による実装研究を行い,本支援プログラムをより効果的に実施する方法を検討することとした。
産科・精神科の連携についてどのような問題があるか、精神科診療上の観点から実態調査を行い、今後の解決すべき課題について検討することを目的とし、地域精神科診療所における妊産婦に対する医療的支援の実態調査を行うこととした。東京精神神経科診療所協会の会員に、妊産婦の精神科治療についてのアンケート調査を行った。
周産期メンタルヘルス外来を設置し、地域の母子保健の問題を検討することとした。
新規開発アプリケーションを用いた小児科医から自治体への情報提供について検討した。
救急外来における「要保護児童などに関する情報共有システム」の需要に関する調査を行った。
昨年度までに実施した特定妊婦の主な要因をもった妊産婦への対応について日本産婦人科医会母子保健部のスタッフとともに文献的レビューを行った。
早稲田大学社会的養育研究所で実施した「社会的養育推進計画の適切な指標設定に関する調査研究」の中で、特定妊婦への支援に関するヒアリングを実施した。その機会に得られた内容を昨年度までの本研究成果を踏まえ発展的に検討した。
我が国において少子化傾向は深刻化する中,本研究では,妊孕性がある男女(18歳~45歳)に質問紙調査を実施し,子どもを持とうとする意志に影響を与える要因について心理的特性も検討することとした。
本邦での児童虐待予防プログラムの作成・提案のために、特定妊婦など心理社会的リスクを持つ妊産婦を対象とした児童虐待予防のための介入研究のシステマティック・レビューを行い、エビデンス総体を示す資料を作成することを行った。



結果と考察
実証研究で、保健師が、系統的な心理社会的アセスメントとそれにもとづいて、社会資源の導入のプラニングを効果的に立てられるようになったことが示唆される。精神科診療所の多くが周産期のメンタルヘルスケアについて前向きな姿勢である一方で、十分に参画できていない現状が明らかになった。精神科診療所のさらなる参画を促すために、地域母子保健のコーディネートなどのサポートの拡充が必要と考えられる。
重層的な周産期母子保健の支援のためには、大都市の総合病院の周産期メンタルヘルス外来だけでなく、地方においても保健所単位のキャッチメントエリアでの周産期メンタルヘルス外来が必要であると考えられた。
新規開発されたアプリケーションを使用したフラグシステムは、小児科医から自治体 へ情報共有を促進する効果があると考えられた。
要保護児童などに関する情報共有システムの存在は救急担当医には十分に周知されていなかったが、救急外来における要保護児童などに関する情報の需要は明らかであった。
乳児院や母子生活支援施設等が多機能化の1つとして妊娠葛藤相談を実施し、その中で特定妊婦支援プログラムを実施できれば、各都道府県に福祉領域を起点とした特定妊婦の把握・連携・支援が増え、これまで把握できなかったケースに繋げられる。また、各施設のこれまでの経験や関連機関との連携をもとに「気づき・把握する」にとどまらず、その後の「つなぎ・支援する」を一体的に実施することも可能になると考えられた。
得られた結果から少子化問題を鑑みると,青少年期からの子どもと触れ合う経験提供,地域とのつながり育成,女児への父親の育児かかわりの有効性が示唆された。
特定妊婦など心理社会的リスクを持つ妊産婦を対象とした児童虐待予防のための介入により、統計学的な有意差は得られなかったものの、外傷報告件数が減少傾向となることが示唆された。
結論
今後は,現場の保健師の意見をさらに取り入れつつ、アセスメントシートの利用について均てん化を行っていくことが望まれる。
地域の産科医・精神科医・行政との連携を推進するため、定期的に関係者の会議を各地域で行っていくことが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2023-08-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-08-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202207006B
報告書区分
総合
研究課題名
特定妊婦に対する支援の均てん化に向けたアセスメントツール及び多職種連携地域支援プログラムの開発と社会実装についての研究
課題番号
20DA1009
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
立花 良之(国立研究開発法人国立成育医療研究センター こころの診療部乳幼児メンタルヘルス診療科)
研究分担者(所属機関)
  • 小泉 典章(公立大学法人長野大学)
  • 山崎 嘉久(あいち小児保健医療総合センター 保健センター)
  • 杉浦 至郎(あいち小児保健医療総合センター 保健センター保健室)
  • 鈴木 俊治(日本医科大学 医学部 女性生殖発達病態学)
  • 赤尾 さく美(一般社団法人ベアホープ)
  • 上鹿渡 和宏(早稲田大学 人間科学学術院)
  • 松田 妙子(NPO法人子育てひろば全国連絡協議会)
  • 水本 深喜(松蔭大学 コミュニケーション文化学部)
  • 多門 裕貴(清川遠寿病院 精神科)
  • 相良 洋子(公益社団法人日本産婦人科医会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、自治体における特定妊婦に対する支援の現状を把握し、その結果をもとに福祉・保健・医療が共通で活用することができるアセスメントツール及び支援プログラムを作成し、特定妊婦に対する支援を均てん化することを目的とした。
研究方法
令和2年度は特定妊婦のケアの中でメンタルヘルスケアに留意し、自殺念慮があるなど強い精神的不調のある妊産婦に対するケアを行うことで産婦自殺や母子心中を防止する地域母子保健システムについての介入プログラムを作成し、その効果を検証した。令和3年度は特定妊婦に対する支援のためのアセスメントシートを作成し、自治体での実装のためのプロトコールを作成した。令和4年度にこの特定妊婦支援のアセスメントシートについての実証研究を行った。保健師に対して、系統的心理社会的アセスメントとそれに基づくプラニングの地域介入プログラムを実施し実証研究を行った。
小児科医と自治体間の情報共有の実際と課題に関して包括的な評価を行った。
わが国で積極的に社会的ハイリスク妊婦の支援を行っている市区町村のアセスメントツールを参考として、特定妊婦の主な要因についての特性についてレビューを行った。
本邦での児童虐待予防プログラムの作成・提案のために、特定妊婦など心理社会的リスクを持つ妊産婦を対象とした児童虐待予防のための介入研究のシステマティック・レビューを行い、エビデンス総体を示す資料を作成した。
結果と考察
特定妊婦への介入プログラムでは産後3〜4か月地域全体の母親の自殺念慮の改善し、産婦自殺予防対策の有効性が明らかとなった。また、産後3〜4か月の地域全体の母親のメンタルヘルスを向上させる効果に加え、その効果は産後7〜8か月まで持続する効果も示された。保健師が、系統的な心理社会的アセスメントとそれにもとづいて、社会資源の導入のプラニングを効果的に立てられるようになったことが示唆された。
小児科医と自治体の情報共有は重要であり、重篤な事象の発生を予防できる可能性があると考えられた。
問題となるのは、社会から完全に孤立し、出産まで姿を見せない母親であると考えられた。
結論
自治体から小児科医への情報共有は、公的機関に問い合わせが行いにくい休日夜間の救急外来などでその需要は高く、「要保護児童等に関する情報共有システム」をどの様に利用するか検討が望ましいと考えられた。小児科医から自治体への情報共有は新規開発されたアプリケーションによるフラグシステムを導入した場合に円滑に行うことができることが実証された。
特定妊婦に対する多職種連携地域支援プログラムの社会実装をより広く着実に進めることで、妊婦の自殺や0歳児の虐待死亡をゼロにしなければならない。把握や支援が難しい特定妊婦を対象とする支援プログラムをどのような場、または状況で実施すべきか、特定の地域だけではなく全ての地域で実施するための方法について検討することである。特定妊婦への早期アプローチの手順の確立が最も求められている。現時点で最も手当てが遅れていると思われる妊娠届未提出の妊婦のニーズに焦点を当てた体制づくりとそこでのプログラム開発・実施が必要とされていると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2023-08-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-08-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202207006C

収支報告書

文献番号
202207006Z