最低所得保障制度の再構成

文献情報

文献番号
200901023A
報告書区分
総括
研究課題名
最低所得保障制度の再構成
課題番号
H20-政策・一般-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
岩村 正彦(東京大学 大学院法学政治学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 中野 妙子(名古屋大学大学院法学研究科)
  • 関根 由紀(神戸大学大学院法学研究科)
  • 渡邊 絹子(東海大学法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
4,606,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、市場経済の下でのセーフティネットたる最低所得保障制度について、公的年金、失業保険・失業扶助、公的扶助、障害者福祉、母子福祉等の諸制度を横断的に取り上げ、最低賃金制度および就労インセンティブとの関係にも着目しつつ、受給者の範囲、支給要件、給付水準、財源および各制度の相互関係等について比較法的研究を行い、それをもとに、今後の法制度設計・政策の方向性を模索・検討することを目指している。
研究方法
主要国(フランス、ドイツ、スウェーデン、アメリカ合衆国等)の社会保障制度全体、障害者福祉制度、母子福祉制度や自立支援・就労支援施策、最低賃金制度等について、国内外の文献・資料の収集・検討し、各国の最低所得保障制度および関連する諸制度・諸施策の背景事情、制度概要および特徴や問題点を分析し、その成果とわが国の最低所得等保障制度および関連する諸制度との比較する。
結果と考察
今回研究対象とした国々では、金銭給付の受給と就労支援プログラムへの参加や求職活動、就労等とを連結・連携させたり、最低賃金制度との連携等を図ることによって就労インセンティブを持たせる仕組みを導入する等の形で、受給者の自立を促す工夫を行っている。また、フランス、アメリカ、イギリスでは、給付付き税額控除の制度が導入され、低所得世帯に対して所得補助を行っている。ただ、フランスのように、近年新しい制度に切替え、従前よりも就労インセンティブを持たせる設計にしたものの、まだその具体的成果が明確でないところや、ドイツのように、給付の硬直性等の問題が指摘され、さらには違憲判決がでたために制度の見直しが迫られているところもある。わが国でも、第2のセーフティネットに関する議論が示すように、就労インセンティブと生活に必要な所得保障との関係をどう整理するかということがどの国でも問題となっている。しかし、わが国ではこの問題はまだ議論途上にある。
結論
フランスのようにそれまで制度を持たなかった国でも給付付き税額控除の仕組みが導入されるなど、各国で工夫が進んでいる。ただ、就労インセンティブをより持たせようとしている新しいフランス制度も、その成果は現時点では必ずしも明確ではない。ドイツも政策の転換を行ったのは最近であるが、まだ制度の安定期に入ったとはいえないようである。給付付き税額控除は、その水準の設定についての基本的考え方は各国で必ずしも同じではなく、また社会保障の観点から見たとき、それをどう評価するかという点もなお検討の必要がある。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
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