人口動態変動および構造変化の見通しとその推計手法に関する総合的研究

文献情報

文献番号
200901020A
報告書区分
総括
研究課題名
人口動態変動および構造変化の見通しとその推計手法に関する総合的研究
課題番号
H20-政策・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
金子 隆一(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 稲葉 寿(東京大学大学院 数理科学研究科)
  • 石井 太(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 佐々井 司(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 岩澤 美帆(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
  • 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
7,706,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国はすでに恒常的人口減少過程に入り、同時に人口高齢化も世界の先頭を切って進んでいる。今後に見込まれる人口動態ならびに人口構造の歴史的変動は、わが国の社会経済基盤を根底から揺るがすものと考えられ、急務となる諸制度の再構築に定量的な指針を与える将来推計人口ならびに少子化、長寿化等に関する人口学的知見の重要性は増大している。こうした中、本研究では将来人口推計手法の先端的技術と人口学をはじめとする周辺科学の知見・技術を総合し、社会経済との連関を考慮しつつ、わが国の人口動態・構造変動のメカニズムの解明、モデル化、推計の精密化を図ることを目的とする。
研究方法
本年度の研究では、まず基礎作業として目的外申請によって取得した人口動態統計データや国連人口推計データなど内外の人口統計データの整備を図った。また並行して、Ⅰ人口動態の数理的解析研究として、(1) 変動環境下における人口再生産力の分析、Ⅱ人口動態の実態分析として(2)出生分析、(3)死亡・寿命分析、(4)国際人口移動分析、Ⅲ人口動態と社会経済変動との関係に関する研究として、(5) 出生意欲を介した出生率と社会経済要因との関係の5分野に関する7テーマの研究を行った。
結果と考察
(1)人口過程の弱エルゴード性に依拠することで、マルサス的成長解の存在が系の長期的挙動を決定することが示され、純再生産率、繁殖価の適切な定義が可能であることがわかった。(2) 2006年以降の合計出生率反転のメカニズム解明に向け、年次変動をテンポ効果と他の期間効果に分離したところ、後者への依存割合が高いことがわかった。また都道府県別の空間誤差モデル分析の結果と合わせ、キャッチアップによる上昇が期待できる側面もあることがわかった。(3)わが国で採用されるリー・カーター・モデルの「年齢シフト」を年齢変換という概念で一般化して数理的性質を明らかにし、わが国の動態に有効な年齢変換を特定した。(4) 国際人口移動の仮定設定の変遷を整理し、その課題について新たな指標化による手法を提言した。(5) 出生意欲指標を媒介して社会経済要因を取り入れた推計方法を試作し、追加予定子ども数と社会経済要因との連関が強いことなどを見出した。
結論
各分野とも理論・手法開発と実証分析の双方について新たな成果が得られ、わが国の人口動態・構造変動のメカニズムや社会経済との連関の理解に資するものとなった。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-