建築物の衛生的環境の維持管理に関する研究

文献情報

文献番号
200840007A
報告書区分
総括
研究課題名
建築物の衛生的環境の維持管理に関する研究
課題番号
H18-健危・一般-008
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小畑 美知夫(財団法人 ビル管理教育センター 調査研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 耕一(国立保健医療科学院 建築衛生部)
  • 鎌田 元康(神奈川大学 工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
12,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
①特定建築物以外の建築物の居住環境における維持管理上の問題点の整理と維持管理方法の提言を行う。②管理技術者の実態に関する研究では、管理技術者の実態を整理し、管理技術者の資質向上のための方法や資格の活用等を提案する。③建築物の雑用水・給湯設備における維持管理に関する研究では、維持管理が困難または実態が把握されていない局所式給湯設備や個別空調設備の実態調査を行い、維持管理上のポイントを提案する。
研究方法
①病院や社会福祉施設、小規模建築物など計28施設において空気環境、水質等の実測調査ならびに維持管理状況の調査を実施した。②文献調査により、管理技術者の実態(実数と資格の使用状況等)と今後管理技術者に求められる職務等について検討した。③局所式給湯の水質実態調査を実施するとともに、雑用水設備と給湯設備の維持管理上の留意点をまとめた。個別空調設備では主として内部の微生物生息調査を行い、管理手法について検討した。
結果と考察
①小規模建築物で暖房期の相対湿度が68%、CO2は71%の管理基準超過であった。原因は測定の義務がなく、環境が把握されていないこと、専門の管理技術者がいないことと考える。地下街の環境は概ね良好であった。②平成19年度までに95,632名が管理技術者の資格を取得しており、資格を活用していない者もいることから、活用方法を提案した。建築物の経営形態が多様化され、監督官庁で管理権原者に指導できない等の問題が発生していることが判明した。③局所式給湯の水質は概ね良好であるが、給湯器内で滞留した水の衛生が懸念された。個別空調設備には中央式空調設備のダクト内と同様に、微生物の生息環境となっており、維持管理の重要性が示唆された。
結論
①病院や社会福祉施設、小規模建築物等についても公衆衛生の向上という観点から建築物衛生法に準じた維持管理の必要性を提案する。②管理技術者の資格の重複使用が認められたことから、適正使用のためのシステムの構築が必要である。また、不動産の証券化等により多様化する建築物の経営形態の中で管理権原者を明確にする必要がある。③雑用水・給湯設備管理者が適正な維持管理を行うよう本研究成果を周知する必要があり、個別空調方式の微生物汚染の一方で維持管理が困難という現状が明らかとなった。維持管理にあっては管理担当者のみならず、設計・製造者、施工者も一体となり取り組む必要がある。

公開日・更新日

公開日
2009-05-14
更新日
-

文献情報

文献番号
200840007B
報告書区分
総合
研究課題名
建築物の衛生的環境の維持管理に関する研究
課題番号
H18-健危・一般-008
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小畑 美知夫(財団法人 ビル管理教育センター 調査研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 耕一(国立保健医療科学院 建築衛生部)
  • 鎌田 元康(神奈川大学 工学部 建築学科)
  • 紀谷 文樹(神奈川大学 工学部 建築学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成14年の建築物衛生法政省令の改正により、新たに維持管理義務が課せられた雑用水・給湯設備、個別空調設備の具体的な維持管理手法を示すこと、建築物内で問題となっているアスベストやレジオネラに関する知見を取りまとめること、法対象外の病院や社会福祉施設等の衛生環境を調査し、維持管理手法の提案等を目的に実施した。
研究方法
本研究の目的を達成するために、「法対象外建築物」では衛生環境の実測調査および聞き取り調査等を、「管理技術者」では管理技術者らへのアンケートおよび文献調査等を、「雑用水・給湯設備、個別空調設備」では実態調査およびアンケート、文献調査等を行った。
結果と考察
病院や社会福祉施設では冬期の低湿度と換気量不足によるCO2超過が見られた。また、水利用設備冷却水や給湯からレジオネラ属菌が分離された。建物使用者の健康影響を配慮するためにも総合的な改善策を施すことが重要である。新たに地下空間の衛生環境をfeasibility studyとして調査した。管理技術者へのアンケートから資格重複使用や、資格取得後も有効活用できていない者が多数いることが判明した。建築物経営形態の多様化・複雑化により、建築物権原者と維持管理業務の責任所在の問題が生じており、早急な対応が必要と考える。雑用水・給湯設備では実態調査を実施した結果、水質的な問題は見られなかったが、管理者がシステムを把握していなかった、設置後は維持管理未実施といった状況であった。個別空調設備ではCO2超過や微生物汚染等の問題が明らかになった。また、空調設備が天井裏の狭いスペースに設置されており、点検・管理が困難という問題も判明した。
結論
法対象外建築物でも特定建築物に準じた維持管理が求められており、設備管理の識者である管理技術者の採用など、有効な維持管理体制作りに努める必要があると考える。また、これら建築物を準特定建築物と位置づけ維持管理の導入と、コンサルタント的業務として管理技術者資格の活用を提案する。そのためにも、管理技術者のデータベースの構築と、更なるレベルアップを図る上で管理技術者の再講習等は必要と考える。雑用水・給湯設備、個別空調設備については、今回提案した設計・施工・維持管理上のポイントの活用が望まれる。また、研究者・設計者・製造者らも「設備の維持管理」を踏まえた上で、設計・竣工するべきと考える。

公開日・更新日

公開日
2009-05-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200840007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
法対象外建築物でも特定建築物に準じた維持管理が求められており、設備管理の識者である管理技術者の採用など、有効な維持管理体制作りに努める必要があると考える。
雑用水・給湯設備、個別空調設備における設計・施工・維持管理上のポイントを取りまとめた。研究者・設計者・製造者らも「設備の維持管理」を踏まえた上で、設計・竣工するべきと考える。
臨床的観点からの成果
水利用設備ごとにレジオネラ属菌防止対策に関する国内外の知見を取りまとめた。個別空調システム内の微生物汚染について実測調査を行い、微生物の生息を確認し、清掃等維持管理の必要性を提案した。
ガイドライン等の開発
レジオネラ症防止指針第3版((財)ビル管理教育センター,2009)
その他行政的観点からの成果
公衆衛生の向上という観点から、現在の特定建築物の対象となる用途の見直し(医療施設、社会福祉施設、集合住宅)や延べ床面積の拡大(3,000㎡未満)などを今後検討する際の基礎データとして重要なものである。
建築物環境衛生管理技術者の資格の重複使用が認められたことから、適正使用のためのシステムの構築が必要である。また、不動産の証券化等により多様化する建築物の経営形態の中で管理権原者を明確にする必要がある。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
6件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
16件
日本臨床環境医学学会、空気清浄とコンタミネーションコントロール研究大会、空気調和衛生工学会、日本衛生学会、室内環境学会、エアロゾル学会、日本建築学会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Furuhata,K.,Kato,Y.,Goto,K.etal.
Isolation and identification of Methylobacterium species from the tap water in hospitals in Japan and their antibiotic susceptibility.
Microbiol.Immunol. , 50 , 11-17  (2006)
原著論文2
Furuhata,K.,Kato,Y.,Goto,K.etal.
Identification of yellow-pigmented bacteria isolated from hospital tap water in Japan and their chlorine resistance.
Biocontrol Science , 12 , 39-46  (2007)
原著論文3
Furuhata,K.,Goto,K.,Kato,Y.etal.
Characteristics of a pink-pigmented bacterium isolated from biofilm in a cooling tower in Tokyo, Japan
Microbiol.Immunol. , 51 , 637-641  (2007)
原著論文4
Furuhata,K.,Kato,Y.,Goto,K.etal.
Identification of pink-pigmented bacteria isolated from environmental water samples and their biofilm formation abilities.
Biocontrol Science , 13 , 33-39  (2008)
原著論文5
Furuhata,K.,Miyamoto,H.,Goto,K.etal.
Roseomonas stagni sp. nov., isolated from pond water in Japan.
J.Gen.Appl.Microbiol , 54 , 167-171  (2008)
原著論文6
Inoue,H.,Takama,T.,Agawa,Y.etal.
Evaluation of Duopath Legionella Kit for the Rapid Identification of Legionella Strains Isolated from Water Samples.
Biocontrol Science , 12 , 155-158  (2007)
原著論文7
鍵直樹・柳宇・池田耕一他
病院施設における室内環境の衛生管理に関する研究第1報-空気環境法定測定に準じた実態調査
空気調和・衛生工学会論文集 , 137  (2008)
原著論文8
柳宇・鍵直樹・池田耕一他
病院施設における室内環境の衛生管理に関する研究第2報-外来待合室内浮遊微生物汚染の実態と対策方法
空気調和・衛生工学会論文集 , 141  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-11-24
更新日
-