小規模水供給システムの持続可能な維持管理に関する統合的研究

文献情報

文献番号
202127012A
報告書区分
総括
研究課題名
小規模水供給システムの持続可能な維持管理に関する統合的研究
課題番号
20LA1005
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
浅見 真理(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 禎彦(京都大学大学院 工学研究科 都市環境工学専攻)
  • 増田 貴則(国立保健医療科学院 統括研究官)
  • 牛島 健(地独)北海道立総合研究機構 建築研究本部北方建築総合研究所)
  • 小熊 久美子(東京大学大学院工学系研究科)
  • 中西 智宏(京都大学大学院工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
8,100,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者増田貴則は、鳥取大学大学院工学研究科社会基盤工学専攻から国立保健医療科学院に異動しました。 研究分担者牛島健は、北海道立総合研究機構北方建築総合研究所の研究主幹となりました。 研究分担者小熊久美子は、東京大学先端科学研究センターから、東京大学大学院工学系研究科に異動しました。

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢化及び人口減少等により、水供給維持が困難となる地域を含む地域において衛生的な水を持続的に供給可能とするための具体的方策を提案することを目的とする。
研究方法
小規模水供給システム等の水道法の適用を受けない「小規模な水道」について、アンケート調査、経営シミュレーション、訪問調査、実地の実験的な検討、住民との連携に関する調査、運営支援体制の検証等を行った。
結果と考察
衛生確保対策を行う全国の地方自治体(都道府県、市、特別区)を対象に「小規模な水道」の実態把握状況や指導体制等についてのアンケート調査を実施した。都道府県条例部分は手上げ方式での移譲のため、同一の都道府県内でも一部の市に対してのみ移譲しており、他の市においては条例対象施設のみ都道府県が事務を行っていること等、小規模な水道に係る権限が細分化され都道府県ごとに非常に複雑な状況であるとの意見が複数寄せられた。
過疎化地域等での小規模水道に焦点を当て、モデル地区での将来の経営シミュレーション等を行うともに今後の最適な給水形態等を評価する一般的な手法の比較検討を行った。
長野県松本市および愛知県豊根村・東栄町・設楽町を対象として、担当行政部局へのヒアリング並びに施設への訪問調査や、水道利用者に対する対面調査を実施した。松本市入山辺地区飲料水供給施設では、地域への人的支援等、愛知県設楽町における未普及地域では、住民の理解により個別井戸の新設が受け入れられており、水供給形態が持続可能な形で成立している好例とみることができ、その要因について考察を行った。小規模水供給施設に設置された膜ろ過装置について、その維持管理費の高さが負担になっている事業体は少なくない。豊根村において、膜ろ過から井戸へ変更することを検討している事例を示した。
小規模水供給施設を調査対象として、原水の微生物リスクを推定したうえで、必要な浄水処理レベルについて考察を行った。さらに、限定的な情報の下で、微生物的な安全性を確保するためのアプローチ方法を提示した。さらに、より精緻なリスク評価を可能とするために、次世代シーケンサー(NGS)を用いて病原細菌を一斉検出することを試みた。対象施設から計22属37種が病原細菌として抽出された。検出された全病原種を対象としたリスク評価を行い、浄水処理に要求される除去・不活化能について考察した。
取水設備は、多孔構造を有する集水管を、沢水や渓流水の流水中に横たえただけのものであることも数多く、この場合、取水口の閉塞が発生し、住民の維持管理上の負担となっている。技術的に適切な設計がなされた施設例を示した。管内環境の改善のため、ろ材や膜孔径を変化させながら濁質除去能を定量的に評価することで小規模水供給システムにおいて望ましい除濁処理について考察した。
小規模水供給システムに適した小型消毒装置の候補として、紫外発光ダイオード(UV-LED)を光源とする流水殺菌装置を検討した。飲料水供給施設(給水18戸50 名未満)での装置実証試験を継続し、長期的な性能を追跡した連続運転に伴う性能の経時的な低下は現在まで認められず、原水を前処理なくUV-LED装置で処理する方式でも微生物制御に有効であることが示された。
給水人口100人以下の水供給システムを利用・管理している集落を対象に、集落役員が点検や清掃などの管理作業に対して感じている負担感や作業負担の重い項目について整理し、実作業量を把握することを目的とした質問紙調査を行った。集落外の団体と連携・協力をして維持管理作業を行っている集落は20%弱にすぎず、施設の維持管理に負担感を抱えていることが把握できた。集落が外部支援を希望する価格帯を把握した。
民間組織や水道事業体等と連携・協働した小規模水供給システム維持管理手法についてケーススタディの蓄積を行い、実際には,市町村経営との中間的な地域自律管理の形や,NPOへの委託を含めた多様な「地域自律管理型モデル」が存在することがわかった。
北海道富良野市では、水道利用組合等による地域自律管理を前提に、地元高校生による運営支援体制の検証を継続した。札幌の大学生や海外の高校生および若者との交流の機会を兼ねて実施した。高校生らの積極的な参加が見られ、参加の様子は地元新聞に取り上げられた。市民の意識啓発とともに高校生のモチベーション向上につながる流れを作ることができた。
結論
アンケート結果や実地調査の結果を元に、技術面で取水技術、ろ過、消毒の有効性と長期的な安定性に関する検討を行うとともに、経営シミュレーションや住民、集落外の団体との連携方策について検討を行った。住民、外部団体との連携や小規模水供給システムに係る集約的な相談体制構築、厚生労働省や地方自治体、研究機関との間で共通する情報の共有化や情報提供体制の確立が重要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2022-10-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-10-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202127012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,100,000円
(2)補助金確定額
8,100,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,003,657円
人件費・謝金 2,484,975円
旅費 443,240円
その他 2,168,137円
間接経費 0円
合計 8,100,009円

備考

備考
必要な物品の購入代金が交付決定額を上回ったため9円自己負担

公開日・更新日

公開日
2022-10-31
更新日
-