食品を介したダイオキシン類等の人体への影響の把握とその治療法の開発等に関する研究

文献情報

文献番号
202124041A
報告書区分
総括
研究課題名
食品を介したダイオキシン類等の人体への影響の把握とその治療法の開発等に関する研究
課題番号
21KA2003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
辻 学(九州大学 油症ダイオキシン研究診療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 中原 剛士(九州大学病院 皮膚科)
  • 香月 進(福岡県保健環境研究所)
  • 小野塚 大介(京都府立医科大学 医学・医療情報管理学講座)
  • 申 敏哲(シン ミンチョル)(熊本保健科学大学 保健科学部 リハビリテーション学科)
  • 園田 康平(九州大学 大学院医学研究院眼科学分野)
  • 津嶋 秀俊(九州大学病院 整形外科)
  • 鳥巣 剛弘(九州大学病院 消化管内科)
  • 古賀 信幸(中村学園大学 栄養科学部)
  • 月森 清巳(福岡市立こども病院 周産期センター)
  • 辻 博(北九州若杉病院 西日本総合医学研究所)
  • 濱田 直樹(九州大学 大学院医学研究院呼吸器内科学分野)
  • 緒方 英紀(九州大学病院 脳神経内科)
  • 石井 祐次(九州大学 大学院薬学研究院)
  • 室田 浩之(長崎大学 医歯薬総合研究科皮膚病退学分野)
  • 上松 聖典(長崎大学病院 眼科)
  • 川崎 五郎(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科展開医療科学講座口腔腫瘍治療学分野)
  • 戸高 尊(公益財団法人北九州生活科学センター 生体ダイオキシン類分析室)
  • 前田 英史(九州大学 大学院歯学研究院)
  • 友清 淳(九州大学病院 歯内治療科)
  • 貝沼 茂三郎(富山大学 医学部)
  • 冬野 洋子(九州大学病院 油症ダイオキシン研究診療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
193,959,000円
研究者交替、所属機関変更
例)所属機関異動 研究分担者 小野塚大介 国立循環器病研究センター予防医学疫学情報部疫学研究推進室(令和3年4月1日~3年6月1日) → 京都府立医科大学医学・医療情報管理学講座(令和3年6月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
PCB類・ダイオキシン類の生体への影響、生体内動態を把握し、それらの生体への毒性を緩和する治療法を見出すことである。
研究方法
油症検診データベースの集積:健康実態調査、一斉検診の実施、検診結果を集積した患者データベースを更新する。患者の血中のPCDF類の実態調査を行う。死因調査として、油症患者の50年間の追跡調査の結果を解析する。検診を実施し、年次的な推移を検討する。血液検査結果は他覚的統計手法などを用いて統計学的に解析し、経年変化の傾向について調査する。油症2世3世に対して健康調査を行い、ダイオキシン類の次世代への影響を検討する。基礎的研究では、油症の病態における臓器障害、機能障害を細胞実験・動物実験で再現し、その詳細について解析する。
結果と考察
臨床的追跡調査・疫学研究
①令和2年度全国油症検診の受診者の検診結果をデータベースに入力した。
②油症患者の50年間の追跡調査を実施し、死亡リスクを検証した。その結果、男性の油症患者は、女性の油症患者よりも、がんの累積死亡率が有意に高いことが明らかとなった。
③令和2年度の全国油症検診受診者の検診情報の収集と管理を行った。全国油症一斉検診の受診者について血液中のPCDF等(ダイオキシン類)の濃度を継続的に測定した。令和2年度の油症検診で血液中ダイオキシン類濃度を測定した認定患者14名と未認定者66名について結果集計を行った。認定患者の2,3,4,7,8-PeCDFの平均濃度は53 pg/g-fat となり、2,3,7,8-TeCDD毒性等価係数(WHO-2006)を用いて毒性等量(TEQ)に換算した総ダイオキシン類(Total TEQ)の平均濃度は42 pg TEQ/g-fatであった。一方、未認定者の2,3,4,7,8-PeCDF平均濃度は10 pg/g-fat、Total TEQの平均濃度は18 pg TEQ/g-fatであった。
④油症女性患者の閉経年齢と血中ダイオキシン類濃度との関連について検討した。油症女性患者における自然閉経の平均年齢は49.9歳で、わが国における女性の平均閉経年齢と変わらなかった。また、閉経年齢と閉経時の推定血中ダイオキシン(PeCDF)濃度との間には有意な相関は認めなかった。
⑤油症2世3世より健康調査に関する調査票の回収を行い、合計388名(認定2世:16名、未認定2世:306名、3世:66名)からなる観察集団を設定した。

基礎的研究
①油症肺傷害において肺サーファクタントであるSP-Dが保護的役割を担っていることが考察された。
②実験動物を用い、AHRが欠損すると精巣の重量が減量する傾向を明らかとし、その機序を解析した。また、ダイオキシン誘導性蛋白質であるSelenbp1は酸化ストレスを軽減する役割を明らかにした。
③ベンゾピレンでAHRシグナルが活性化すると歯根膜細胞のMMP2、MMP12が増加することが分かった。
④メタゲノム法により全消化管の腸内細菌の分布を網羅的に解析し、十二指腸や空腸にAHRを活性化するインドール化合物の代謝に関わる細菌が豊富であることが分かった。
⑤油症患者の関節症状に関する研究では、AHRに作用するキヌレイン経路で産生されるキヌレニン酸という物質が関節内の軟骨変性を防ぐ働きがある可能性が示唆された。
⑥油症患者の血液細胞を分析したところ、油症患者においてCD3陽性細胞の低下が認められ、CD3陽性細胞の低下に2,3,4,7,8-PeCDFの慢性的影響が示唆された。
結論
ダイオキシン類の慢性影響、生体内動態、毒性機構、次世代への影響について、疫学・臨床医学・基礎医学の観点から多面的に明らかになりつつある。これらの結果を踏まえて、将来的に、油症の症状を緩和する新しい治療薬の発見・開発につなげたいと考えている。

公開日・更新日

公開日
2022-09-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-09-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202124041Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
219,713,000円
(2)補助金確定額
219,713,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 94,005,437円
人件費・謝金 43,921,159円
旅費 373,780円
その他 55,719,815円
間接経費 25,754,000円
合計 219,774,191円

備考

備考
支出金額219,774,191円に以下を含む。
利息 167円
自己資金 61,024円

公開日・更新日

公開日
2023-09-06
更新日
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