文献情報
文献番号
202109015A
報告書区分
総括
研究課題名
健康日本21(第二次)の総合的評価と次期健康づくり運動に向けた研究
課題番号
19FA2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学 大学院医学系研究科 公衆衛生学分野)
研究分担者(所属機関)
- 相田 潤(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 健康推進歯学分野)
- 岡村 智教(慶應義塾大学 医学部 衛生学公衆衛生学教室)
- 近藤 克則(千葉大学 予防医学センター)
- 近藤 尚己(京都大学 大学院医学研究科 社会疫学分野)
- 田淵 貴大(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター がん対策センター疫学統計部)
- 津下 一代(丹羽 一代)(女子栄養大学 栄養学部)
- 橋本 修二(藤田医科大学 医学部衛生学講座)
- 村上 義孝(東邦大学 医学部医学科社会医学講座医療統計学分野)
- 村山 伸子(新潟県立大学 人間生活学部)
- 西 大輔(東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野)
- 横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
15,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班の目的は以下の3つである。第1に、健康日本21(第二次)の進捗状況を評価し、各指標に関する格差の実状とその要因、各指標の達成・未達成の要因を明らかにすること。第2に、健康寿命の延伸可能性を定量的に示すこと。そのために健康寿命の延伸・短縮に関わる要因や格差の要因を分析し、生活習慣改善などによる健康寿命延伸効果の予測法を構築する。第3に、次期プランのあり方を提言すること。具体的には、次期プランで盛り込むべき健康課題を明らかにし、目標項目と目標値を提案する。以上の目的を達成し、健康日本21(第二次)の最終評価と次期プランの策定を学術面からサポートする。これにより、国民における健康寿命のさらなる延伸と健康格差の縮小に資するものである。
研究方法
健康日本21(第二次)の進捗評価及び各指標の格差要因に関する研究=各種の統計データや研究データを用いて、健康日本21(第二次)の目標指標に関する地域格差・社会格差の要因を分析する。保健事業等実施状況と健康指標・医療費等との関連に関する研究=全国の自治体の保険者努力支援制度の評価点を用いて、健診データや医療費との関連を検討する。健康寿命の延伸可能性に関する研究=各種の統計データやコホート研究データを用いて、健康寿命の延伸・短縮要因(生活習慣・社会経済要因・健診成績等)や延伸可能性を検討する。2019年の健康寿命を計算し、健康日本21(第二次)の目標達成度を評価する。次期国民健康づくり運動策定に向けての提言に関する研究=次期国民健康づくり運動で盛り込むべき目標項目について、目標設定の方法に関する共通認識を得た上で、2034年度を目途とする目標値を提案する。
すべての研究は「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守しており、所属施設の倫理委員会の承認を受けている。
すべての研究は「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守しており、所属施設の倫理委員会の承認を受けている。
結果と考察
健康日本21(第二次)の進捗評価及び各指標の格差要因に関する研究=多数歯欠損の高齢者において、義歯を使用していない者の割合は、等価所得の高い群より低い群で有意に高く、その格差は医療費の自己負担割合が大きい群ほど著しかった。所得の低い群ほど脳卒中・心疾患の有病割合が高く、その格差には高血圧と肥満が強く関わっていた。建造環境(近隣の歩道面積など)や幼少期の逆境体験は、老年期の認知症・うつ発症リスクと有意に関連した。加熱式タバコによる受動喫煙曝露は急速に増加していた。食環境整備マネジメントに関して、栄養素等摂取量の把握は都道府県より政令市等で少なく、都道府県と政令市等ともに食環境整備の目標設定が5−7割であった。成人期におけるインターネット依存は、小児期・思春期に大都市居住していた者で有意に多かった。保健事業等実施状況と健康指標・医療費等との関連に関する研究=重症化予防事業は、平成30年度と比較して令和3年度には取り組み自治体数が増加。比較的早期の段階(平成30年度)では重症化予防点数とデータヘルス計画の策定との関連がみられた。HbA1c高値者の割合やその増加、医療費の状況が重症化予防事業を推進する要因となる可能性が示唆された。健康寿命の延伸可能性に関する研究=血圧・脂質の改善により全国で7万人以上の動脈硬化性疾患の発症が予防できる。循環器リスクが同等レベルでも、都市部の方が非都市よりも健康寿命が長かった。歩行時間が増えた者では健康寿命が延伸した。健康寿命の都道府県格差は、喫煙率・こころの健康などと有意に関連した。健康寿命の最新値(2019年値)を算定し、健康日本21(第二次)の最重要目標「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」が達成されたことを確認した。この結果は、令和3年12月20日の第16回健康日本21(第二次)推進専門委員会で報告され、新聞・テレビなどで広く報道された。次期国民健康づくり運動策定に向けての提言に関する研究=13領域(健康寿命、がん、循環器疾患、糖尿病、こころの健康、高齢者の健康、健康格差の是正、社会環境の整備、栄養・食生活、身体活動・運動、飲酒、喫煙、歯・口腔)について、次期プランで盛り込むべき目標62項目の2034年を目途とする目標値を提案した。ただし、次世代の健康と休養に関する目標はまだ設定されていないので、目標項目はもっと増えることになる。一方、健康日本21(第二次)の目標が53項目であったことを考えると、さらなる絞り込みが必要であると思われる。
結論
本研究課題は当初の計画通り順調に進捗し、3年間の研究計画が概ね達成されたと考えられる。本研究事業での成果は、国際的学術誌に多く掲載されるなど、学術面の価値も高かった。さらに、「次期国民健康づくり運動策定に向けての提言に関する研究」に関する班会議には厚生労働省の行政官も多数出席して議論に参加していただくなど、行政上の価値も十分に高かったと思われる。
公開日・更新日
公開日
2023-03-27
更新日
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