精神保健医療福祉の改革ビジョンの成果に関する研究

文献情報

文献番号
200833006A
報告書区分
総括
研究課題名
精神保健医療福祉の改革ビジョンの成果に関する研究
課題番号
H18-こころ・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
竹島 正(国立精神・神経センター 精神保健研究所 精神保健計画部)
研究分担者(所属機関)
  • 白石 弘巳(東洋大学)
  • 山下 俊幸(京都市こころの健康増進センター)
  • 中澤 誠(財団法人脳神経疾患研究所附属総合南東北病院小児・生涯心臓疾患研究所)
  • 野中 猛(日本福祉大学 社会福祉学部保健福祉学科)
  • 千葉 潜(青南病院)
  • 立森 久照(国立精神・神経センター精神保健研究所 精神保健計画部)
  • 長尾 卓夫(全国精神医療審査会連絡協議会)
  • 須藤浩一郎(土佐病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
33,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「精神保健医療福祉の改革ビジョン」(以下、「改革ビジョン」)のモニタリング調査を行い、「入院中心から地域生活中心へ」という基本的な方策の実現に寄与することを目的とした。
研究方法
①精神保健福祉資料(以下、「630調査」)をもとに「改革ビジョン」初期の精神保健医療福祉のマクロ実態を観察した。平成20 年度630 調査の内容で電子調査票を作成し、一部の精神科病院の試用評価を得た。②診断や入院形態ごとの平均残存率、退院率の調査を行った。③精神科デイ・ケア等を実施している精神科病院および精神科診療所を対象にアンケート調査を行った。④精神医療メディアカンファレンスを実施し、その評価を行った。
結果と考察
①精神科病院の在院患者は一層高齢化していた。「5 年以上」の在院患者は減少しているものの「1 年以上5 年未満」の在院患者数の減少は見られなかった。6 月新入院患者の動態にも期待する方向への変化は見られなかった。社会復帰施設については障害者自立支援法への移行期の反応とも考えられる現象が見られた。受診者数から見れば、精神科診療所が精神科通院医療で果たしている役割は精神科病院と同程度であった。精神科診療所の利用者の詳細を把握する必要があると思われた。21 年度からの本運用に向けて電子調査票の準備を大きく進めることができた。②平均残存率は診断名によって有意に異なっていた。地域に退院した患者の割合と退院率は乖離が大きく、「改革ビジョン」の成果としての地域移行の状況を評価するには、転院や死亡を除いた患者動態の把握が必要であると確認された。③病院の精神科デイ・ケア等では、慢性期患者の再発・再入院予防、生活のしづらさに焦点を当てた支援が行われることが多いのに対し、診療所の精神科デイ・ケア等では、発症後間もない多様な患者への支援にも取り組まれていると考えられた。④精神保健医療福祉従事者とメディア従事者との対話は、国民一般に向けてのメッセージを形成していく上できわめて重要と考えられた。
結論
本研究の成果を第一期(前半5 年間)の評価、第二期(後半5 年間)における施策群の検討に役立てることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2009-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200833006B
報告書区分
総合
研究課題名
精神保健医療福祉の改革ビジョンの成果に関する研究
課題番号
H18-こころ・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
竹島 正(国立精神・神経センター 精神保健研究所 精神保健計画部)
研究分担者(所属機関)
  • 白石 弘巳(東洋大学)
  • 山下 俊幸(京都市こころの健康増進センター)
  • 中澤 誠(財団法人脳神経疾患研究所附属総合南東北病院小児・生涯心臓疾患研究所)
  • 野中 猛(日本福祉大学 社会福祉学部保健福祉学科)
  • 千葉 潜(青南病院)
  • 立森 久照(国立精神・神経センター精神保健研究所 精神保健計画部)
  • 長尾 卓夫(全国精神医療審査会連絡協議会)
  • 須藤浩一郎(土佐病院)
  • 浅野 弘毅(認知症介護研究・研修仙台センター)
  • 樹神 學(こだまホスピタル)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「精神保健医療福祉の改革ビジョン」(以下、「改革ビジョン」)に示された達成目標の進捗状況のモニタリング調査を行い、「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本的な方策の実現に寄与することを目的とした。
研究方法
「改革ビジョン」の3本柱である「国民意識の変革」「精神医療の改革」「地域生活支援の強化」を踏まえた研究体制と内容を組織し、「改革ビジョン」の進捗状況の把握のためのモニタリング調査を行った。
結果と考察
「国民意識の変革」については、メディア従事者を対象にした精神医療メディアカンファレンスを試行し、その評価を行った。「精神医療の改革」については、「改革ビジョン」初期の精神保健医療福祉のマクロ実態の変化のモニタリングを行った。具体的には、診断や入院形態ごとの平均残存率、退院率の調査を行った。精神科急性期治療病床を有する病院と有さない病院の比較および急性期病床の都道府県別の分布状況、各都道府県の精神科デイ・ケアと訪問看護の実施状況と退院に関する指標の関連、精神病床での在院期間が1年以上5年未満の患者の数的状況、精神科医療施設の従業者、および精神科診療所の概況等を明らかにした。また、知的機能の低下した人たち(認知症高齢者、知的障害者等)の入院のあり方についてアンケート調査を行った。精神科デイ・ケア等を実施している精神科病院および精神科診療所を対象に実施状況等のアンケート調査を行った。「地域生活支援の強化」については、自立支援医療(精神通院医療)の支給認定の状況調査等を行った。また、障害者自立支援法施行の影響調査を行った。さらに、若年性認知症の介護支援およびリハビリテーションを提供している場の調査を行った。この他、全体に関係することとして、「改革ビジョン」に示された達成目標の進捗状況のモニタリングの改善のために平成20年度630調査の内容で、全国の精神科病院を対象にしたモニタリング調査に使用する電子調査票を開発した。
結論
本研究の成果を「改革ビジョン」第一期(前半5年間)の評価、第二期(後半5年間)における施策群の検討に役立てることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2009-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-12-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200833006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
全国の精神科病院等を対象にした調査を行い、わが国の精神保健医療福祉の実態を明らかにした。またこのモニタリング調査の電子調査票を精神科病院を対象とした部分について開発し,効率的かつ正確なデータ収集の体制を整備した。さらに診断別の平均残存率・退院率、自立支援医療(精神通院医療)の運用実態、精神保健福祉法入院における認知症・知的障害患者等の同意能力、精神科デイ・ケア等の実施状況の調査を行い、地域精神医療の充実、精神障害者の権利擁護に資する研究成果をまとめた。
臨床的観点からの成果
精神科病院の在院患者の高齢化は一層進んでいた。「5年以上」の長期在院患者数は減少していたが、その予備軍である「1年以上5年未満」の在院患者数は減少していなかった。新入院患者はゆるやかながら短期入院の方向に進んでいた。認知症高齢者、知的障害者等、知的機能の低下した人たちの入院同意について、「自書だけでなく、入院という状況を正しく理解できている」に基づいて判定されるようにする必要があると考えられた。
ガイドライン等の開発
「改革ビジョン」の達成目標の指標である平均残存率および退院率について、各都道府県の「死亡」を除いたもの、および「死亡」・「転院」を除いたものを算出し、単純に「病院を退院した」人の割合と、「社会に復帰した」人の割合には大きな差があることを明らかにすることにより、「改革ビジョン」の後半5年間に用いる達成目標の指標は、退院促進と地域移行の実態をより明確にとらえるよう設定する必要があることを示した。
その他行政的観点からの成果
ホームページを作成・運営し、「改革ビジョン」についての基本的な情報、関連する研究成果、諸外国の情報等を提供した。また研究成果を「目でみる精神保健医療福祉」等の冊子にわかりやすくまとめて情報共有に取り組んだ。さらにメディアカンファレンスの実施と評価を行い、精神保健医療福祉従事者とメディア従事者との対話は、国民一般に向けてのメッセージを形成していく上できわめて重要であることを明らかにした。
その他のインパクト
2008年1月6日から19日にかけて、メルボルン大学精神医学部門臨床学准教授Chee Ng氏を招へいした。同准教授は、報告書“Study Visit On Community Mental Health In Japan(日本の地域精神保健に関する訪問調査)”をまとめた。この日本語訳は日本精神神経学雑誌に掲載されたが、「改革ビジョン」の実現に向けての関係者の意識共有への効果が期待される。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
49件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
16件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
5件
改革ビジョンHP URL http://www.ncnp.go.jp/nimh/keikaku/vision/index.html

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
小山智典,山下俊幸,竹島正
精神障害者通院医療費公費負担制度の判定業務量が判定に及ぼす影響
日社精医誌 , 15 , 218-223  (2007)
原著論文2
長沼洋一,竹島正,立森久照
デイケア・訪問看護を実施している精神科病院の特徴
日本精神科病院協会雑誌 , 26 , 70-76  (2007)
原著論文3
長沼洋一,立森久照,小山明日香,他
精神科病院における精神科デイケア等の実施状況と患者の退院状況との関連
日本社会精神医学会雑誌 , 17 , 3-10  (2008)
原著論文4
小山明日香,小山智典,立森久照,他
各都道府県の1年未満在院患者群の退院に関する指標「平均残存率」に関連する要因の検討
日本社会精神医学会雑誌 , 17 , 159-167  (2008)
原著論文5
長沼洋一, 立森久照, 竹島正
精神科デイ・ケア等実施施設の機能分化の状況
社会精神医学会雑誌 , 18 , 18-23  (2009)
原著論文6
小山明日香,立森久照,河野稔明 他
精神病床長期在院患者の転院・死亡を考慮した退院状況の指標の検討
日本公衆衛生雑誌 , 58 (1) , 40-46  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-