文献情報
文献番号
202101016A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品・医療機器等の費用対効果評価における公的分析と公的意思決定方法に関する研究
課題番号
21AA2005
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
福田 敬(国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 下妻 晃二郎(学校法人立命館 立命館大学 生命科学部)
- 齋藤 信也(岡山大学大学院保健学研究科看護学分野基礎看護学領域)
- 石田 博(山口大学大学院医学系研究科 医療情報判断学)
- 池田 俊也(国際医療福祉大学 医学部 公衆衛生学)
- 赤沢 学(明治薬科大学 公衆衛生・疫学)
- 田倉 智之(東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学講座)
- 能登 真一(新潟医療福祉大学 医療技術学部)
- 後藤 励(慶應義塾大学 経営管理研究科)
- 白岩 健(国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター)
- 森脇 健介(立命館大学 総合科学技術研究機構)
- 佐藤 大介(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
24,696,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医薬品・医療機器の費用対効果評価については令和元年度から制度的に導入され、新規に承認された品目について評価が進められている。本研究では、費用対効果評価に関する諸課題に対応するために、諸外国を参照するなどして、体制整備や、公的分析プロセスの明確化・標準化、質の確保のための方策等について検討を行う。
研究方法
1)費用対効果評価における公的分析の分析方法の標準化に関する研究
次期制度改正に向けて、費用対効果評価に関する我が国の状況を踏まえながら、分析ガイドラインの改訂作業を実施する。
2) 諸外国の費用対効果評価制度の実態等に関する研究
諸外国における費用対効果評価(医療技術に係る評価を含む。)の最新の状況について、各種の文献調査等を実施する。
3) 公的分析の体制整備、プロセスや質の標準化に関する研究
海外で医療経済評価のプログラム等について検討を行い、我が国における人材育成のあり方について検討を行う。
4)公的分析における標準的ツールおよびデータソースの確立に向けた研究
(a) ナショナルデータベース
費用対効果評価の対象となりうる疾患や健康状態について、レセプトデータを用いた健康状態の定義方法、解析にあたっての統計的手法、得られた結果の妥当性の検討方法、について学術的に妥当な手法を探索する。
(b) QOLデータ
日本における様々な疾患及び状態でのQOL値の調査研究やQOL質問票の開発を実施する。
5) 公的意思決定(総合的評価:アプレイザル)のあり方に関する研究
公的分析を用いた今後の意思決定のあり方として、基礎的な検討を行う。
次期制度改正に向けて、費用対効果評価に関する我が国の状況を踏まえながら、分析ガイドラインの改訂作業を実施する。
2) 諸外国の費用対効果評価制度の実態等に関する研究
諸外国における費用対効果評価(医療技術に係る評価を含む。)の最新の状況について、各種の文献調査等を実施する。
3) 公的分析の体制整備、プロセスや質の標準化に関する研究
海外で医療経済評価のプログラム等について検討を行い、我が国における人材育成のあり方について検討を行う。
4)公的分析における標準的ツールおよびデータソースの確立に向けた研究
(a) ナショナルデータベース
費用対効果評価の対象となりうる疾患や健康状態について、レセプトデータを用いた健康状態の定義方法、解析にあたっての統計的手法、得られた結果の妥当性の検討方法、について学術的に妥当な手法を探索する。
(b) QOLデータ
日本における様々な疾患及び状態でのQOL値の調査研究やQOL質問票の開発を実施する。
5) 公的意思決定(総合的評価:アプレイザル)のあり方に関する研究
公的分析を用いた今後の意思決定のあり方として、基礎的な検討を行う。
結果と考察
1)費用対効果評価における公的分析の分析方法の標準化に関する研究
令和4年度からの制度見直しの議論を踏まえて改訂作業を実施し、「中央社会保険医療協議会における費用対効果評価の分析ガイドライン ver.3」とした。主要な改訂のポイントは、分析対象集団の設定方法、対象集団ごとの患者割合、間接比較を用いた追加的有用性の評価方法、QOL値の収集方法、などである。
2) 諸外国の費用対効果評価制度の実態等に関する研究
医薬品、医療機器以外の技術の評価について、諸外国の取り組みを整理した。RCTのような比較試験が実施しにくいことなどが課題とされている。また、医療技術においては習熟カーブ(learning curve)の影響や、特に高額な医療機器を用いる技術の場合には、機器の設置に係る費用をどう扱うかも課題とされていた。わが国においても今後このような点を考慮した評価の実施および活用方法の議論が必要と思われる。
3) 公的分析の体制整備、プロセスや質の標準化に関する研究
英国ヨーク大学の教育プログラムについて検討した。また、国内で実施されている医療経済評価の人材育成プログラムについて、教育方法およびその課題等を整理した。
4)公的分析における標準的ツールおよびデータソースの確立に向けた研究
(a) ナショナルデータベース
NDBを用いて疾患別医療費の分析方法を検討するとともに、医薬品・医療機器等の年間売り上げ金額の推定方法を検討した。
(b) QOLデータ
QALYを算出するためのQOL値評価ツールとして、EQ-5D-Y(Youth)を用いてQOL値に換算するためのvalue setを開発した。また、DCE(Discrete Choice Experiment:離散選択実験)を用いた選好調査の結果の医療経済評価における取り扱いについて調べた。英国NICEでは、薬剤の投与形態の違いによる効用の低下をDCEを用いた研究をもとに設定した分析結果を製造販売業者が提出している例があったが、このようなデータの扱いについて課題も提示されていた。
国内で調査が実施され論文として公開されているQOL値のデータベースを更新した。
5) 公的意思決定(総合的評価:アプレイザル)のあり方に関する研究
中医協における費用対効果評価制度においては、増分費用効果比の結果から500万円/QALYを基準値としてそれを超える場合に価格調整を行う仕組みとなっているが、英国のNICEにおいては、QALYの損失量や損失率の程度に応じて基準値を変えるような考え方も議論されている。
令和4年度からの制度見直しの議論を踏まえて改訂作業を実施し、「中央社会保険医療協議会における費用対効果評価の分析ガイドライン ver.3」とした。主要な改訂のポイントは、分析対象集団の設定方法、対象集団ごとの患者割合、間接比較を用いた追加的有用性の評価方法、QOL値の収集方法、などである。
2) 諸外国の費用対効果評価制度の実態等に関する研究
医薬品、医療機器以外の技術の評価について、諸外国の取り組みを整理した。RCTのような比較試験が実施しにくいことなどが課題とされている。また、医療技術においては習熟カーブ(learning curve)の影響や、特に高額な医療機器を用いる技術の場合には、機器の設置に係る費用をどう扱うかも課題とされていた。わが国においても今後このような点を考慮した評価の実施および活用方法の議論が必要と思われる。
3) 公的分析の体制整備、プロセスや質の標準化に関する研究
英国ヨーク大学の教育プログラムについて検討した。また、国内で実施されている医療経済評価の人材育成プログラムについて、教育方法およびその課題等を整理した。
4)公的分析における標準的ツールおよびデータソースの確立に向けた研究
(a) ナショナルデータベース
NDBを用いて疾患別医療費の分析方法を検討するとともに、医薬品・医療機器等の年間売り上げ金額の推定方法を検討した。
(b) QOLデータ
QALYを算出するためのQOL値評価ツールとして、EQ-5D-Y(Youth)を用いてQOL値に換算するためのvalue setを開発した。また、DCE(Discrete Choice Experiment:離散選択実験)を用いた選好調査の結果の医療経済評価における取り扱いについて調べた。英国NICEでは、薬剤の投与形態の違いによる効用の低下をDCEを用いた研究をもとに設定した分析結果を製造販売業者が提出している例があったが、このようなデータの扱いについて課題も提示されていた。
国内で調査が実施され論文として公開されているQOL値のデータベースを更新した。
5) 公的意思決定(総合的評価:アプレイザル)のあり方に関する研究
中医協における費用対効果評価制度においては、増分費用効果比の結果から500万円/QALYを基準値としてそれを超える場合に価格調整を行う仕組みとなっているが、英国のNICEにおいては、QALYの損失量や損失率の程度に応じて基準値を変えるような考え方も議論されている。
結論
医薬品・医療機器の費用対効果評価制度で用いられている分析ガイドラインについて、制度の見直しの方針を踏まえた改定版の作成を行った。またNDBを用いた疾患別費用分析の手順や対象品目の選定のための活用、さらにQOL評価ツールの開発等に取り組み、国内で費用効果分析を実施するための手法を示した。また、意思決定を行う際の基準値の考え方等についても検討を行った。これらを活用することにより、費用対効果評価が適切に実施できるようになると期待される。
公開日・更新日
公開日
2023-03-09
更新日
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