文献情報
文献番号
202101008A
報告書区分
総括
研究課題名
入院医療の評価のためのDPCデータの活用及びデータベースの活用に関する研究
課題番号
20AA2005
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
伏見 清秀(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医療政策情報学)
研究分担者(所属機関)
- 石川 ベンジャミン光一(学校法人 国際医療福祉大学 大学院医学研究科 赤坂心理・医療福祉マネジメント学部 医療マネジメント学科)
- 今中 雄一(京都大学 医学研究科)
- 阿南 誠(独立行政法人国立病院機構九州医療センター医療情報管理センター)
- 康永 秀生(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学)
- 藤森 研司(東北大学 大学院医学系研究科 公共健康医学講座医療管理学分野)
- 池田 俊也(国際医療福祉大学 医学部 公衆衛生学)
- 松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
- 堀口 裕正(独立行政法人国立病院機構 本部 総合研究センター 診療情報分析部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
20,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
DPCを活用した医療政策を検討するにあたり、DPC対象病院で使用する診断群分類点数表の見直しだけでなく、今後は回復期や慢性期を含む入院医療全体の評価への活用も求められる。
本研究では3つの目的を設定する。
① 適切な診断群分類作成のための研究
② DPCデータの連結解析や第三者提供に関する研究
③ DPCデータを活用した入院医療の評価に関する研究
本研究では3つの目的を設定する。
① 適切な診断群分類作成のための研究
② DPCデータの連結解析や第三者提供に関する研究
③ DPCデータを活用した入院医療の評価に関する研究
研究方法
①診断群分類点数表においては、CCPマトリックスやICD-11への改訂の検証のほか、分類に活用されていない定義テーブルの項目や複雑化した個別分類の見直し、医療資源を最も投入した病名の選択方法や、同様の診療内容となる複数の診断群分類についての適切な評価方法など対応が必要な課題について検証し、具体的な対応手法を検討した。
②令和2年度、令和3年度それぞれにおいて発生する個別の課題に対応しつつ、集計表以外のデータの提供に向けた必要な対応を検討した。
③令和2年度においては、診療報酬改定前のデータを用いて課題の抽出を中心に行い、令和3年度は前年度の検討を踏まえたより具体的な検討を行う。さらに、DPCデータを用いた臨床疫学的研究や入院データ、外来データを用いた入院医療の評価を行った。また、質評価指標(QI)等の医療の質に関する国内外の状況を整理し、DPCデータによって評価可能な内容について提案を行った。回復期、慢性期の分野において現行のDPCデータで評価可能な入院医療の質、具体的には医療資源投入量の差異やデータ入力内容の質、医療内容についての評価を行った。
②令和2年度、令和3年度それぞれにおいて発生する個別の課題に対応しつつ、集計表以外のデータの提供に向けた必要な対応を検討した。
③令和2年度においては、診療報酬改定前のデータを用いて課題の抽出を中心に行い、令和3年度は前年度の検討を踏まえたより具体的な検討を行う。さらに、DPCデータを用いた臨床疫学的研究や入院データ、外来データを用いた入院医療の評価を行った。また、質評価指標(QI)等の医療の質に関する国内外の状況を整理し、DPCデータによって評価可能な内容について提案を行った。回復期、慢性期の分野において現行のDPCデータで評価可能な入院医療の質、具体的には医療資源投入量の差異やデータ入力内容の質、医療内容についての評価を行った。
結果と考察
昨年度までの研究に引き続き、パブリック・クラウドサービスを利用して研究班ホームページを作成し、1332病院から6年間で延べ4404万人の暗号化したDPC調査データファイルを安全かつ効率的にデータベース化して研究を進めた。
①適切な診断群分類作成のための研究
医療資源投入量が平均から外れた病院が認められる慢性期、ケア・ミックス型病院におけるDPC/PDPSコーディングテキストのあり方について検討するとともに、分析用データセットの再作成を行い、令和3年度分のデータについて半年分を先行して作成し、COVID-19関連の研究環境を整備した。
②DPCデータの第三者提供に関する研究
DPC制度の適正運用とDPC データ活用促進のためのセミナーを病院関係者および地方行政担当者向けに計2回のセミナー実施し、述べ300人程度の受講者があった。DPCデータ分析の普及、啓発のために、詳細な薬効分類等を含むレセプト電算コードマスター、手術コードマスター等の分析用マスターを整備し、配布した。
③DPCデータを活用した入院医療の評価に関する研究
ICU入室時のSOFAスコアを分析し、SOFAスコアの改善度と滞在日数には一定の関係がみられたものの、我が国のICUの利用の多様性を認め、SOFAスコアを利用したICUの評価の必要性が示唆された。救急車による搬送による入院についてDPCコードの出現頻度を分析した結果、妊娠高血圧症性関連疾患切迫早産、くも膜下出血、急性心筋梗塞といった死亡をはじめとする重大な予後につながりうる傷病で全国的に搬送時間も長く、また地域差が大きく、救急医療アクセスの課題が示唆された。DPCデータを活用した医療の質と効率性・医療費の評価では、DPCデータを利用し、医療の質や効率性を可視化するため、DPCデータ個票を活用して分析を行い、COVID-19感染症の影響、若年がん患者医療費、術前睡眠剤の影響、抗菌薬の使用状況を分析した。DPCデータを用いた臨床疫学研究では、原著英文等多数報告した。COVID-19パンデミック早期においては予防可能な入院の増加は認められず、日本のプライマリ・ケアが高次医療機関の負担を増やさず対応出来たことを示唆した。COVID-19の感染者数、入院患者数、死亡者数、医療資源の使用量のいずれにおいても、2回の緊急事態宣言による政策的・非医学的な介入と減少トレンドには統計学的に有意に関連していたことから、我が国のCOVID‐19パンデミック初期において、政策的介入によるCOVID-19抑制が有効であったことが示唆された。大腸がんステージ1での早期検出の分析から、パンデミック下においても確保すべき大腸がん検診受診率は、特に脆弱となる70歳以上において、検診率38%(TSRE)、精検率85%と示唆された。
①適切な診断群分類作成のための研究
医療資源投入量が平均から外れた病院が認められる慢性期、ケア・ミックス型病院におけるDPC/PDPSコーディングテキストのあり方について検討するとともに、分析用データセットの再作成を行い、令和3年度分のデータについて半年分を先行して作成し、COVID-19関連の研究環境を整備した。
②DPCデータの第三者提供に関する研究
DPC制度の適正運用とDPC データ活用促進のためのセミナーを病院関係者および地方行政担当者向けに計2回のセミナー実施し、述べ300人程度の受講者があった。DPCデータ分析の普及、啓発のために、詳細な薬効分類等を含むレセプト電算コードマスター、手術コードマスター等の分析用マスターを整備し、配布した。
③DPCデータを活用した入院医療の評価に関する研究
ICU入室時のSOFAスコアを分析し、SOFAスコアの改善度と滞在日数には一定の関係がみられたものの、我が国のICUの利用の多様性を認め、SOFAスコアを利用したICUの評価の必要性が示唆された。救急車による搬送による入院についてDPCコードの出現頻度を分析した結果、妊娠高血圧症性関連疾患切迫早産、くも膜下出血、急性心筋梗塞といった死亡をはじめとする重大な予後につながりうる傷病で全国的に搬送時間も長く、また地域差が大きく、救急医療アクセスの課題が示唆された。DPCデータを活用した医療の質と効率性・医療費の評価では、DPCデータを利用し、医療の質や効率性を可視化するため、DPCデータ個票を活用して分析を行い、COVID-19感染症の影響、若年がん患者医療費、術前睡眠剤の影響、抗菌薬の使用状況を分析した。DPCデータを用いた臨床疫学研究では、原著英文等多数報告した。COVID-19パンデミック早期においては予防可能な入院の増加は認められず、日本のプライマリ・ケアが高次医療機関の負担を増やさず対応出来たことを示唆した。COVID-19の感染者数、入院患者数、死亡者数、医療資源の使用量のいずれにおいても、2回の緊急事態宣言による政策的・非医学的な介入と減少トレンドには統計学的に有意に関連していたことから、我が国のCOVID‐19パンデミック初期において、政策的介入によるCOVID-19抑制が有効であったことが示唆された。大腸がんステージ1での早期検出の分析から、パンデミック下においても確保すべき大腸がん検診受診率は、特に脆弱となる70歳以上において、検診率38%(TSRE)、精検率85%と示唆された。
結論
本研究は、DPC診断群分類の今後の維持・整備手法を明らかとし、令和4年度以降の改定手法の基盤を提供するとともに、DPC包括評価の妥当性の確保につながる分析と考えられた。また、DPCデータを用いた医療の質評価手法を開発するとともに臨床疫学研究の手法も示し、我が国の医療の質の向上、臨床疫学の発展に寄与することが期待された。
公開日・更新日
公開日
2023-03-09
更新日
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