性感染症に関する特定感染症予防指針の推進に関する研究

文献情報

文献番号
200829001A
報告書区分
総括
研究課題名
性感染症に関する特定感染症予防指針の推進に関する研究
課題番号
H18-新興・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小野寺 昭一(東京慈恵会医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 川名 尚(帝京大学溝口病院)
  • 松本哲朗(産業医科大学)
  • 塚本泰司(札幌医科大学)
  • 松田静治(「財」性の健康医学財団)
  • 本田まりこ(東京慈恵会医科大学医学部)
  • 飯沼雅朗(日本医師会)
  • 岡部信彦(国立感染症情報センター)
  • 大日康史(国立感染症情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
20,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1、性器ヘルペス、尖圭コンジローマの新しい診断法を開発する。
2、咽頭の淋菌・クラミジア感染に対する適切な診断法を確立する。
3、地域を限定した性感染症の全数調査を行って定点調査を検証する。
4、若者の性感染症を早期に発見し治療に結びつけるシステムを構築する。
研究方法
1、性器ヘルペスについてはLAMP法の開発を行い臨床検体を用いて検出感度を培養法と比較した。尖圭コンジローマでは抗乳頭腫ウイルスを用いてイムノクロマト法による検出を行った。
2、咽頭の淋菌及びクラミジアの診断のために嗽液を用いて核酸増幅法であるSDA法、TMA法の精度について検討した。
3、地域を限定した性感染症の全数調査として、岩手、茨城、千葉、石川、岐阜、兵庫、徳島の7県で梅毒と定点把握4性感染症の調査を行った。
4、若者を対象としてイベントや学園祭などでクラミジアの無料検査キットを配布した。検査の勧奨は検査コーディネーターを養成して行った。また、性の健康相談を若者を対象としてEメールにより行った。
結果と考察
1、性器ヘルペスの診断法として臨床検体におけるLAMP法と培養法を比較したが、LAMP法は感度、特異度とも優れ、今後の臨床応用が期待された。尖圭コンジローマの診断ではイムノクロマト法は各種抗体を用いて検討したが、現時点では陽性結果が得られなかった。
2、咽頭の淋菌、クラミジア感染に対して生理食塩水による嗽液を用いた診断法の精度が高かった。
3、性感染症定点調査と全数調査との一致の傾向は各地域、疾患で異なっていたが、性器クラミジア感染症で最も一致しており淋菌感染症は最も一致率が低かった。
4、今年度のイベントでのクラミジア陽性率は、男性3.7%、女性6.1%で昨年よりも低かった。検査陽性者の性行動からはコンドームの使用状況の低さが明らかになった。
結論
1、性器ヘルペスの診断法としてLAMP法の臨床応用が期待できる。
2、咽頭の淋菌、クラミジアの診断法として、嗽液を用いたSDA法、TMA法の精度が高い。
3、地域を限定した性感染症の全数調査では、性器クラミジア感染症において定点調査との一致率が高かったが、この調査は今後も継続して行う必要がある。
4、クラミジア自己検査による早期発見、早期治療につなげる具体的な対策の基礎はできたが、さらに若者を医療に結びつけるシステムを構築する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2010-01-12
更新日
-

文献情報

文献番号
200829001B
報告書区分
総合
研究課題名
性感染症に関する特定感染症予防指針の推進に関する研究
課題番号
H18-新興・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小野寺 昭一(東京慈恵会医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 川名 尚(帝京大学溝口病院産婦人科)
  • 松本哲朗(産業医科大学)
  • 塚本泰司(札幌医科大学)
  • 松田静冶(「財」性の健康医学財団)
  • 本田まりこ(東京慈恵会医科大学医学部)
  • 飯沼雅朗(日本医師会)
  • 岡部信彦(国立感染症情報センター)
  • 大日康史(国立感染症情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1、性器ヘルペス、尖圭コンジローマの新しい診断法を開発する。
2、淋菌の薬剤感受性サーベイランスを行うと同時に、咽頭の淋菌及びクラミジア感染に対する診断法,咽頭の淋菌感染の治療法を確立する。
3、地域を限定した性感染症の全数調査を行って定点調査を検証し適切な定点設計の提言を行う。
4、若者の性感染症を早期に発見し治療に結びつけるシステムを構築し、若者への性感染症予防の普及・啓発を行う。
研究方法
1、性器ヘルペスについてはLAMP法の開発を行い臨床検体について検出感度を培養法と比較した。尖圭コンジローマでは抗乳頭腫ウイルスを用いイムノクロマト法による検出を行った。
2、淋菌の薬剤感受性サーベイランスを首都圏と九州地区で行った。STDクリニック、耳鼻咽喉科外来患者を対象に咽頭の淋菌・クラミジアの診断を嗽液及び咽頭スワブを検体として核酸増幅法で行い精度を比較した。
3、地域を限定した性感染症の全数調査を4ー7モデル県で行い、定点調査を検証した。
4、若者が集まるイベントなどでクラミジアの自己検査を行って無症候感染者の実態を把握した。同時に検査コーディネーターを養成し、若者の性行動調査を行った。
結果と考察
1、性器ヘルペスの診断法としてLAMP法は培養法と同等の感度・特異度を有しており今後の臨床応用が期待される。尖圭コンジローマではイムノクロマト法による検出は現在は可能になっていないが、すでにLAMP法での精度は確認しており、臨床応用が可能である。
2、無症候の咽頭の淋菌・クラミジア感染に対し、嗽液を用いたSDA法、TMA法の感度・特異度は咽頭スワブを検体とした場合と同等であった。
3、性感染症の全数調査と発生動向調査の一致の傾向は、性器クラミジア感染症で最も高く、性器クヘルペス、尖圭コンジローマと続き、淋菌感染症は最も一致率が低かった。
4、無症候の性器クラミジアの陽性率は平均で男性5%、女性6%であった。陽性者は陰性者と比べてコンドームの使用目的が避妊に優位であった。
結論
1、性器ヘルペス、コンジローマの診断法としてLAMP法の有用性が高い。
2、咽頭の淋菌・クラミジアの診断法として嗽液を用いたSDA法、TMA法の臨床応用が可能である。また、咽頭の淋菌感染に対する治療法としてCTRX1.0gの単回投与が優れている。
3、性感染症の定点調査を検証するために、地域限定の全数調査を継続して行う必要がある。また、定点の設定のための基準を明確にする必要がある。
4、若者に対する性感染症対策として、検査から受診まで行政がNGOや医療機関と円滑に連携する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2010-01-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-12-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200829001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1、性器ヘルペス、尖圭コンジローマの迅速かつ簡便な診断法としてLAMP法の開発を行い、臨床応用が可能と思われた。
2、薬剤耐性淋菌のサーベイランスを行うと同時に、無症候の淋菌の咽頭感染に対する診断法として、うがい液を検体とし、SDA法、TMA法による診断法を開発した。また、淋菌の咽頭感染に対する抗菌薬として、セフトリアキソンの有効性を明らかにした。

臨床的観点からの成果
1、性感染症の発生動向調査を検証するために、性感染症全数調査を4-7モデル県で行った結果、発生動向調査と全数調査の一致の傾向は、患者数の多い性器クラミジア感染症で最も高く、性器ヘルペス、尖圭コンジローマと続き、淋菌感染症の一致率が最も低かった。ただ、この傾向は地域によって異なっていた。また、定点の設定も地域によってバラツキが大きいことが分かった。
2、若者における無症候の性器クラミジアの陽性率は平均で男性5%、女性6%であり、この陽性率には大きな変化がなかった。
ガイドライン等の開発
薬剤耐性淋菌のサーベイランスの結果は日本性感染症学会誌、「性感染症 診断・治療ガイドライン」に反映され、淋菌感染症に対するファーストラインの治療としてセフトリアキソンの投与が推奨された。
その他行政的観点からの成果
若者の性感染症を早期に発見し、治療に結びつけるシステムの構築のための試みとして、若者が集まるイベントや学園祭などを利用し、郵送による性器クラミジア感染症の自己検査を行って無症候感染者の実態把握を行った。また、若者への性感染症予防の普及・啓発のため、検査コーディネーターを養成しピアエデュケーションを行った。
その他のインパクト
1、日本性感染症学会第20回学術大会において、会長講演として、「わが国における性感染症の現状と問題点ー厚生労働科学研究を通じて見えてきたもの」を発表した。
2、日本性感染症学会第21回学術大会において、シンポジウム1、「STDサーベイランスを考えるーサーベイランスから実態をどこまで把握できるかー」のなかで、研究班における性感染症サーベイランスを取り上げた。

発表件数

原著論文(和文)
26件
原著論文(英文等)
9件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
31件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
検査コーディネーターになるあなたに「虎の巻」を作成し、全国の保健所に配布した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
小野寺昭一
我が国における性感染症の現状と将来
日本臨床 , 67 (1) , 5-15  (2009)
原著論文2
小野寺昭一
若年者の現状 性感染症の実態調査結果
小児科診療 , 71 (8) , 1265-1270  (2008)
原著論文3
小野寺昭一
わが国における性感染症の現状と問題点-厚生労働科学研究を通じて見えてきたもの-
日本性感染症学会誌 , 19 (1) , 16-30  (2008)
原著論文4
小野寺昭一、多田有希
若者を性感染症から守る 性感染症の発生動向と最近のトピックス
公衆衛生 , 72 (6) , 451-455  (2008)
原著論文5
白井千香、小野寺昭一
若年者における無症候性器クラミジア感染症の実態把握と蔓延防止システムについて
日本性感染症学会誌 , 17 (1) , 28-34  (2006)
原著論文6
白井千香、中瀬克己、小野寺昭一
性感染症に関する「特定感染症予防指針」に基づく取り組み状況の検討-全国の自治体,保健所を対象としたアンケート調査-
日本性感染症学会誌 , 17 (1) , 58-64  (2006)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
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