新しい診断機器の検診への応用とこれらを用いた診断精度の向上に関する研究

文献情報

文献番号
200823004A
報告書区分
総括
研究課題名
新しい診断機器の検診への応用とこれらを用いた診断精度の向上に関する研究
課題番号
H18-3次がん・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 豊(国立がんセンター中央病院 内視鏡部)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 哲也(獨協医科大学 消化器内視鏡センター)
  • 関口 隆三(栃木県立がんセンター 画像診断部)
  • 杉村 和朗(神戸大学大学院 医学研究科 )
  • 井上 登美夫(横浜市立大学医学部 放射線医学教室)
  • 中山 富雄(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター 調査部疫学課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
52,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
画像強調内視鏡(狭帯域分光内視鏡:NBIおよび自家蛍光内視鏡:AFI)・カプセル内視鏡・超音波・MRI・PET・費用対効果の検討から効率的な検診法の開発を目的とする。
研究方法
①内視鏡:「咽頭・食道表在がん」「早期胃癌」に対する視認性の検討。大腸腫瘍の発見率を前向き試験で検討する。
②カプセル内視鏡:食道用カプセル内視鏡の視認性を検討し、患者満足度アンケート調査を行う。
③超音波検査:ティッシュハーモニック法(THI法)・音速補正機能の診断能について検討する。
④MRI検査: 5施設による大腸がん検出能の検討を行う。また MRI撮影シークエンスの改善を行う。
⑤PET検査:発見がん登録システムの構築と分析およびPETがん検診診断支援システムの開発。またリスク分析としてPET/CTの放射線被ばくを推定する。
⑥マルコフモデルを用いた費用対効果分析モデルを構築する。
結果と考察
①咽頭・食道がんの発見にはNBIが第1選択となる。AFIの視認性の検討から胃癌スクリーニングへの応用の可能性が期待された。NBI大腸内視鏡は、発見困難な表面型病変の検出に有用である。
②小腸用カプセル内視鏡は検査法を工夫することで食道・胃接合部および胃病変の撮影も可能であった。食道用カプセル内視鏡を導入すれば、上部消化管検診への応用が現実化する。
③腹部超音波検診においてTHI法により、癌発見率が有意に向上した。音速補正により、画質の向上が得られた。
④無被曝・低コスト・造影剤投与不要のMRI拡散強調画像で大腸がんに対する優れた成績が得られた。また撮影時間延長を来さない撮影法(TRON法)の基礎技術を確立した。
⑤約1%の検診受診者に癌が発見され、被爆は、PET/CTで13.8mSVであった。CADについては実用化可能なレベルまで感度が向上した。
⑥甲状腺・肺・乳房・大腸の4臓器で既存の方法と比較した結果、大腸がん検診でのみPET検査が費用効果的であった。
結論
①内視鏡検診において画像強調観察の有用性が示された。
②カプセル内視鏡を用いた消化管がん検診が現実化する可能性が示唆された。
③超音波検査にTHI法や音速補正技術などの技術を導入することで、診断精度が向上する。
④拡散強調画像を用いたMRIによるがんスクリーニングは有望である。
⑤PETがん検診(乳・肺・大腸・甲状腺がん)では甲状腺を除き、期待生存年の延長が観察された。

公開日・更新日

公開日
2009-04-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-04-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200823004B
報告書区分
総合
研究課題名
新しい診断機器の検診への応用とこれらを用いた診断精度の向上に関する研究
課題番号
H18-3次がん・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 豊(国立がんセンター中央病院 内視鏡部)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 哲也(独協医科大学病院医療情報センター 教授 (H18.4.1 から H21.3.31))
  • 関口 隆三(栃木県立がんセンター 画像診断部 部長 (H20.4.1 から H21.3.31))
  • 杉村 和朗(神戸大学大学院 医学研究科 生体情報医学講座放射線医学分野教授 (H18.4.1?H21.3.31))
  • 井上登美夫(横浜市立大学大学院医学研究科放射線医学教室教授 (H18.4.1?H21.3.31))
  • 中山 富雄(大阪府立成人病センター調査部課長補佐 (H18.4.1?H21.3.31))
  • 斉藤 大三(国立がんセンター中央病院内視鏡部長 (H18.4.1?H19.3.31)(現:日本橋大三クリニック 院長))
  • 斎藤 豊(国立がんセンター中央病院内視鏡部 医長 (H19.4.1?H21.3.31))
  • 石川 勉(獨協医科大学病院放射線部 教授 (H18.4.1?H20.3.31))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
画像強調内視鏡(狭帯域分光内視鏡:NBI・自家蛍光内視鏡:AFI)・カプセル内視鏡・腹部超音波・MRI・PET・費用対効果の検討から効率的な検診法の開発を目的とする。
研究方法
①画像強調内視鏡:「中・下咽頭」「食道」表在がんの検出率を多施設無作為化比較試験で検討する。胃癌の視認性の検討。大腸腫瘍の発見率を前向き試験で検討する。②カプセル内視鏡:小腸用と食道用カプセル内視鏡の上部消化管への臨床応用の可能性を探る。③超音波:ティッシュハーモニック法(THI法)・造影剤・音速補正について検討。④MRI:拡散強調画像の開発・臨床応用。⑤PET:発見がん登録システムの構築および診断支援システムの開発。⑥マルコフモデルによる費用分析モデルを大腸・肺・乳房・甲状腺がんで構築する。
結果と考察
①320例の解析で、診断精度は咽頭, 食道での白色光62%, 55%に比しNBIで90%, 90%と高く、NBIが第1選択となる可能性が示された。AFI視認性の検討から胃癌スクリーニングへの応用が期待された。NBIは大腸において表面型病変の検出に有用である。②小腸用カプセル内視鏡を用いての食道診断は困難であったが、食道用カプセルは効果的であった。検査法改良で、食道・胃検診への応用の可能性が示された。③THI法を導入することで癌発見率が上昇した。超音波音速補正により画質の向上が得られた。造影剤は高危険群における施設での応用が考慮される。④無被曝・低コスト・造影剤不要のMRI拡散強調画像で大腸がんに対する優れた成績が得られた。撮影時間延長を来さないTRON法の基礎技術を確立した。⑤全国アンケート調査を実施し、1%の受診者に癌が発見され、甲状腺・肺・大腸・乳癌が多く発見されている実態が把握された。読影基準の作成を試み、コンピュータ支援システムを開発した。⑥甲状腺以外の3つのがんでPET検診が既存の方法よりも期待生存年の延長が観察された。またPET費用を個別臓器として4分の1で設定すると、大腸・肺がんにおいてPET検査が推奨された。
結論
①内視鏡検診において画像強調観察の有用性が示された。②カプセル内視鏡の消化管がん検診への応用が現実化する可能性が高い。③腹部超音波においてTHI法・造影剤・音速補正装置検査は有用である。④拡散強調画像を用いたMRIによるがんスクリーニングは有望である。⑤PETがん検診は複数の臓器を一度にスクリーニングでき、経済性を考慮しても今後が期待される。

公開日・更新日

公開日
2009-04-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200823004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
狭帯域分光内視鏡(NBI)の咽頭・食道癌診断に対する有用性が多施設無作為化比較試験により証明された。今まで発見困難であった予後不良の咽頭・食道癌の早期発見が容易になり、機能温存といった患者にメリットのある治療が可能になる。これまで内視鏡診断精度に関する前向きな評価はなされたことが少なく、本研究がエビデンス作成に大きく貢献すると期待される。NBIは表面型大腸腫瘍の発見にも寄与する可能性がPilot試験で示唆され、多施設前向き試験が承認されエントリーが開始されている。
臨床的観点からの成果
第2次対がん総合戦略研究事業で開発されたNBI内視鏡が、第3次対がん総合戦略研究で臨床的有用性が証明され、国内・海外で市販化されるにいたった。カプセル内視鏡は、被検者の苦痛が少なく、検査者の技術が不要のため検診への応用が期待される。小腸用カプセル以外に、食道・大腸用のカプセル内視鏡も欧米で実用化されており消化管における検診への応用とその診断精度の向上を目指すことが本研究の目的である。低侵襲な超音波検査および全身検索可能なPET・MRIについても機器開発を行い検診への応用の可能性が期待された。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
上記各種の新しい診断機器は一般に高価で、健常者を対象とした検診に投入するには経済面での妥当性を検証する必要がある。そこで各種の新しい診断機器の開発で明らかになってくる成績を用い、モデル分析の手法を用いて、検診に投入した場合の効果予測や医療経済学的な問題点を明らかにした。
また画像強調内視鏡の有用性が明らかになれば生検が減り,発見効率の向上および被験者,術者,病理医,コストすべての負担の軽減に連ながる.
その他のインパクト
「第3次対がん10か年総合戦略事業」の一環として第22回国際がん研究シンポジウム(2009年5月18日-20日開催予定)で頭頸部がん・食道がんの最近の進歩をテーマとして取り上げる。当班におけるPETやNBIをはじめとした新しい診断機器の開発・臨床の成果により頭頸部・食道早期がん発見例の増加により頭頸部・食道がんの診療が大きく変貌しつつある。

発表件数

原著論文(和文)
98件
原著論文(英文等)
50件
その他論文(和文)
20件
その他論文(英文等)
26件
学会発表(国内学会)
180件
学会発表(国際学会等)
48件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
出願日:2006年11月11日, 出願番号:特願2006-306066, 発明の名称: 扁平上皮癌危険群による簡易判定方法と装置およびそのための13Cアセトアルデヒド分別用チューブ
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Saito Y, Takisawa H, Suzuki H, et al.
Endoscopic Submucosal Dissection of Recurrent or Residual Superficial Esophageal Cancer after Chemoradiotherapy.
Gastrointest Endosc , 67 (2) , 355-359  (2008)
原著論文2
Saito Y, Uraoka T, Matsuda T, et al.
Endoscopic treatment of large superficial colorectal tumors: A cases series of 200 endoscopic submucosal dissections (with video).
Gastrointest Endosc , 66 (5) , 966-973  (2007)
原著論文3
Kakugawa Y, Saito Y, et al.
Cautionary Note on Using Rectosigmoid Biopsies to Diagnose Graft-Versus-Host Disease: Necessity of Ruling Out Cytomegalovirus Colitis.
Am J Gastroenterol. , 103 , 2959-2960  (2008)
原著論文4
Uraoka T, Saito Y, et al.
Detectability of colorectal neoplastic lesions using a narrow-band imaging system: A pilot study.
The Journal of Gastroenterology and Hepatology. , 23 (12) , 1810-1815  (2008)
原著論文5
Nonaka S, Saito Y.
Endoscopic diagnosis of pharyngeal carcinoma by NBI.
Endoscopy. , 40 (4) , 347-351  (2008)
原著論文6
Emura F, Saito Y, et al.
Narrow-band imaging optical chromocolonoscopy: Advantages and limitations.
World J Gastroenterol. , 14 (31) , 4867-4872  (2008)
原著論文7
Taylor SA, Saito Y, et al.
CT colonography: computer-aided detection of morphologically flat T1 colonic carcinoma.
Eur Radiol. , 18 (8) , 1666-1673  (2008)
原著論文8
Matsuda T, Saito Y, et al.
Does Autofluorescence Imaging Videoendoscopy System Improve the Colonoscopic Polyp Detection Rate?-A Pilot Study.
Am J Gastroenterol. , 103 , 1926-1932  (2008)
原著論文9
Matsuda T, Saito Y, et al.
Efficacy of the invasive/non-invasive pattern by magnifying estimate the depth of invasion of early colorectal neoplasms.
Am J Gastroenterol. , 103 (11) , 2700-2706  (2008)
原著論文10
Emura F, Saito Y, Taniguchi M, et al.
Further validation of magnifying chromocolonoscopy to differentiate colorectal neoplastic polyps in a health screening center.
J Gastroenterol Hepatol. , 22 (11) , 1722-1727  (2007)
原著論文11
Kobayashi N, Saito Y, Sano Y, et al.
Determining the treatment strategy for colorectal neoplastic lesions: endoscopic assessment or the non-lifting sign for diagnosing invasion depth?
Endoscopy. , 39 (8) , 701-705  (2007)
原著論文12
Lambert R, Saito H, Saito Y.
High-resolution endoscopy and early gastrointestinal cancer...dawn in the East.
Endoscopy. , 39 (3) , 232-237  (2007)
原著論文13
Nakamura T, Terano A
Capsule endoscopy: past, present, and future.
J Gastroenterol , 43 , 93-99  (2008)
原著論文14
Morita E, Tanaka T, Nakamura T, et al.
Correlations between video capsule endoscopic findings and clinical activity in Crohn's disease.
Digestive Endoscopy , 18 , 263-268  (2006)
原著論文15
Kitajima K, Kaji Y, Sugimura K. et al.
High b-value diffusion-weighted imaging in normal and malignant peripheral zone tissue of the prostate: effect of signal-to-noise ratio.
Magn Reson Med Sci. , 7 (2) , 93-99  (2008)
原著論文16
Toyoda Y, Nakayama T, Kusunoki Y, et al.
Sensitivity and specificity of lung cancer screening using chest low-dose computed tomography.
Br J Cancer , 98 (10) , 1602-1607  (2008)
原著論文17
Sone S, Nakayama T, Honda T, et al.
Long-term follow-up study of a population-based 1996-98 mass screening programme for lung cancer using mobile low-dose spiralcomputed tomography. 
Lung Cancer , 58 , 329-341  (2007)
原著論文18
Minamimoto R, Senda M, Inoue T, et al.
Performance profile of FDG-PET and PET/CT for cancer screening on the basis of a Japanese Nationwide Survey
Ann Nucl Med , 21 , 481-498  (2007)
原著論文19
Haruhisa Suzuki, Takuji Gotoda, Daizo Saito, et al.
Detection of early gastric cancer: misunderstanding the role of mass screening.
Gastric Cancer , 9 , 315-319  (2006)
原著論文20
関口隆三、他、
超音波造影剤sonazoidを用いた肝転移巣検索の有用性
臨床放射線 , 53 (5) , 641-647  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-09-30
更新日
-